第二十七章 霊媒師 繋がり-14
~~~~朋がいて友がいて・俺視点~~~~
「えぇぇ!? 真さん、背中から触手を生やしちゃったの!? ウ、ウソでしょ? 修行を始めてまだ1年も経ってないじゃない、それなのにそんなコト……いくら瀬山さんの指導とはいえ……さすがに、それは、で、出来ないよねぇ? それか、生やした触手って10センチくらいのちっこいの? ……そうだよねぇ? そうでしょう? てかお願い! そうだと言って!」
んぷぷっ!
エイミーが動揺してる。
真さんの急成長に相当焦りを感じてる。
ま、無理もねぇわな。
藤田真、享年70才。
林業一筋55年の頑固ジジィは、生きていた頃、霊力の ”レの字” もなくて、死んでから黄泉に逝き、そこから気合いで霊力つけて、今じゃそこらの霊媒師よりもスキルが高ぇ。
そらぁ焦るわな。
つか、正直言って俺もかなり焦っているが。
『かーーーーーーっ! なに言ってやがる! 10センチだぁ? そんなよ、ミミズみてぇなちっこいのを背中に生やしてなんになるっつーんだよ! 10倍だ、100メートルはあったな』
オイ爺さん、100メートルは話盛りすぎだろ。
それに計算間違ってるし。
ありゃあせいぜい、その半分の50メートルが良いトコだ。
ま、今回は黙っておいてやる。
なんてったって、それを聞いて焦るエイミーが面白れぇからなっ!
「ひゃ……100メートル(ゴクリ……)」
『おうよ! 言っておくが最低100メートルだ。一番長ぇのは500メートルくれぇあったかな、いやもっとだったか』
ブフォッ!
ねぇわ!
さすがに500メートルはねぇわ!
盛るにしたって限度があんだろ!
ウソクセェ事この上ねぇ、さすがのエイミーも騙され…………
「えぇぇぇぇ!? そんなにぃぃぃぃ!? 真さん、スゴイよ! スゴすぎて嫉妬を越えてリスペクト! ガチリスペクト! よぉし! 僕も負けてられないぞー!」
…………ちまった。
ウソだろ?
エイミー、この先もしも……誰かにヘンなモンを売りつけられそうになったらよ、必ず俺に電話しろ。
買う前に必ずだ、いいな。
……
…………
親父と朋が2人だけで話をする(セコンドに大福)、そう言って部屋を出てからかれこれ3時間だ。
一体、……どんな話をしてるんだろな。
朋はチョコチョコ、俺らをコッソリ視ていたようだが、親父にしたら約30年振りの再会だ。
嬉しいだろうな……親父にとって朋はすべてだ。
一緒にいられた時間は短く、あっという間に逝っちまったが、それでも親父は朋だけを愛し続けたんだ。
親父のグッズやポスターは、必ずと言って良いほど片手にリンゴを持っている。
その理由はやっぱり朋で、現役当時のリングネームが "バッドアップル” だったから……と、朋にリンゴを剥いてやると嬉しそうに頬張って、その顔が可愛くて仕方がなかったんだと。
昔はよ、親父のそういうノロケを聞くたび ”言ってろよ!” と思ってた。
照れもしねぇでよくもまぁ、息子相手にそんなコトが言えるもんだと、笑いながら呆れてたんだ。
けどよ____
「昨日はありがとうございました。みんなが傍にいてくれて、どんなに心強かったか……本当に本当にありがと」
そう言って深々頭を下げるユリ。
相手は俺の式達で、龍呼とそれから壱号弐号参号だ。
壱号達は部屋の中だが、龍呼は霊体がデケェから壁をすり抜け顔だけ室内、首から後ろは部屋の外に投げだしている(昨日の晩もこのスタイル)。
壁一面にイカツイ龍の顔がドーン! とあるってぇのに俺の嫁は動じねぇ。
ユリ曰く、”田舎には青大将がいっぱいいたから蛇さんには慣れてるの”……らしいがよ、初めてそれを聞いた時は、俺も式達も腹を抱えて笑っちまった。
龍呼のデカさは青大将の比じゃねぇだろうよ。
『なに、ユリは我らの大事な娘。守るのは当然で礼などいらぬ』←龍呼
ガゴ!
ガコガコガコガコ! ←壱号達のオーバーアクション
なんだよなんだよ、おまえらすっかりユリの保護者になっちまって。
スッゲェ大事にしてるじゃねぇか。
ユリは昨日の礼だと言って、龍呼にはバナナと日本酒、壱号達には納豆、豆腐、茹でたササミを前に並べて、
「本当にありがと、……さぁ! どうぞどうぞ召し上がれ!」
ニコー!
とまぁ、天使みてぇな尊い笑顔で言ったんだ。
あぁぁぁぁぁぁぁぁ……クッソーーーー!
スッゲェ可愛い! スッゲェ愛しい! なんだこりゃあ!
美人だわ優しいわメシは美味いわ、ユリの笑顔を見るだけで、なんつーの?
こう、ぐわーーーーっと幸せな気持ちになるんだ。
まったくなぁ。
親父のノロケに呆れてたのに人のコトは言えねぇや。
今となっては親父の気持ちがよく分かる。
愛しい気持ちがダバダバ溢れて、そりゃあ口にも出ちまうわ。
……
…………
「えぇ!? チェーンソーで斬ったモノを取り込めるって! そんなコトも出来ちゃうの!? ぐぬぬぬ……」
大きな声に振り向けば、エイミーがリアルにハンカチ噛んでるトコで、それに対して真さんは得意満面。
『あぁん? そんなモンは朝飯前だ。いやいやカンタンですよ。なんだったら教えてあげましょうかぁ? 岡村クン』
んぷっ! ”岡村クン” だってよ!
でもって大威張りだな!
”是非ぃぃ!” と答えるエイミーは、真さんの後ろに回って肩なんぞを揉みだした。
ははっ!
エイミーと真さん、最初の頃は性格が違いすぎてお互いギクシャクしてたってのに、なんだかんだすっかり仲良くなっちまった。
深夜のリビング。
生者も死者も、それから式も、みんなして笑ってる。
真さんとエイミー、ユリと式達。
親父の部屋では朋も猫も、きっとおそらく笑ってる。
なんかよ、……不思議だよな。
親父と朋はともかくとして、数年前までユリも、真さんも、エイミーも、それぞれ別の場所にいて、互いの顔すら知らなくて……なのによ、巡り巡って出会って繋がり、今は家族で友人だ。
ユリのいない人生なんざ、今の俺には考えらんねぇ。
真さんは頼れる義祖父、もう二度と会えねぇとモンだと思っていた朋、母親とも会えたんだ。
霊力を持たねぇ親父が朋に会えたのは、2人が再会できたのは、快くセコンド入りした大福のおかげ。
その大福と会えたのはエイミーのおかげでよ、……そうだ、そもそもはエイミーがウチの会社に入社した事から始まったんだ。
あの頃、えらく霊力の強ぇ新人が入った、くらいの認識だった。
新人連れて、現場に入ってOJT。
アパートに縛られた貴子さんを救った事で今があるんだ。
____社長! 車止めてください!!
____社長! 先代! 今、すれ違った歩行者2人見ました!?
OJTの帰り道。
道を歩く真さんとユリを見て、その顔があまりにも貴子さんにそっくりで、それで、エイミーは俺に車を止めるように言った。
アレがなかったらユリと俺は結婚してねぇ。
出会ってさえもいなかっただろう。
本当によ、人ってよ、どこでどう繋がるか分からねぇな。
その繋がりが、人生そのものを変えちまう事もあるんだから不思議だよ。




