第二十七章 霊媒師 繋がり-13
アタシの話を大和は黙って聞いていた。
視つめる瞳にアタシの顔が映り込む、……僅かにそれが歪んでる。
「朋ちゃんのウソは……私の為だったんだね」
瞬き一つで大和の目尻に涙が滲んだ。
今度はそれをアタシが拭う、さわれないけど指でそっと丁寧に。
「……私を縛りたくなかったの?」
『うん』
「私に好きな人が出来れば良いと思ったの?」
『……うん』
「私が再婚すれば良いと思ったの?」
『…………うん、』
ぜんぶ肯定した。
だって……ウソではないもの。
「……ふぅん、」
大和がアタシをジッと視る、少しだけ口を尖らせ不満そうに。
な、なんだよ、なんでそんな顔をするんだよ。
やっぱり怒ったのかな、そうなのかな。
『や、大和?』
なんだか気持ちが焦ってしまって、アタシは霊体をモゾモゾ動かし、今よりもっと大和に近づく。
大和は……そんなアタシにキスをしてから、まるで……幼い頃の誠になにかを言い聞かせるよに、ゆっくり優しく言ったんだ。
「朋ちゃんの気持ちはすごく嬉しい。アナタはいつだって私に優しくしてくれる。……でもね、私を想うあまりに、朋ちゃんが泣いてしまったら意味がないんだよ」
『か、考えすぎだ、べつに泣いてなんかいないよ、アタシは本当にそう思って、だっていつかは大和に会える、だからぜんぜん悲しくなんかなかったし、』
アタシ……カッコ悪い!
しどろもどろで言い訳してさ、泣きながら ”泣いてない” と言ったって、説得力がぜんぜんないよ。
「ああ……ごめん、ごめんね、違うんだ。私の為を想ってくれたのに ”意味がない” なんて乱暴な言い方だったね。今のは私が悪かった。……あのね、どう言ったら伝わるかな…………そうだ、ねぇ朋ちゃん。朋ちゃんこそ、この14年間で私以外に心惹かれる人は現れなかったの? 付き合いたいなぁとか、この人となら再婚したいなぁとか、」
え……?
どういう意味……?
なにを言われたのか、理解するのに時間がかかった。
やっと意味を呑み込んで、途端、冷静ではいられなくって、アタシは声を荒げてしまった。
『な……!? なに言ってんだよ! そんなヤツ現れる訳ないじゃん! 大和以上に良い男なんてこの世にもあの世にも存在しない! アタシは大和しか好きじゃない、大和にしかさわられたくない! 初めて会った時からずっとそう思ってるのに、そんなの……いるはずない……ヒドイよ……なんでそんなコト言うの? アタシは……! アタシは………………あ、』
大和がなにを言わんとしたか、時間差でやっと分かった……そか、そういうコトか、そういう事なの? アタシと同じ気持ちなの?
戸惑うアタシを遠慮もなしに大和が笑う。
肩を震わせ目尻に涙を滲ませて、アタシを視ながら笑ってるんだ。
「笑ってごめんね、でも……伝わったかな。あのね、私も同じなの。朋ちゃん以上に良い女なんてどこにもいない。私は朋ちゃんしか好きになれない、朋ちゃんしかふれたくない。アナタが生まれ変わろうがなんだろうが、私はね、朋美しか愛せないんだよ」
『………………』
「今まで……淋しくなかったと言えばウソになる。毎日毎日朋美が恋しかった。でもね、だからって他の女性と付き合う気にはならなかった。だって朋美じゃないからね。それに朋美は言ったじゃないか。私にプロポーズをしてくれた時、泣きながら、一生懸命想いを伝えてくれただろう?」
____つ、付き合ってくれなきゃ、結婚してくれなきゃ、
有刺鉄線デスマッチに出てやるっ!
傷だらけになって、ボロボロになっちゃうんだから!
そ、それがイヤならずっとアタシと一緒にいて!
アタシだけを見て!
アタシだけを愛して!
そのかわり、アタシも大和だけを見る!
大和だけ愛する!
一生、ううん、死んでも気持ちは変わらない!____
思い出してしまった、……あの時アタシは必死だった。
大和が好きで好きで好きすぎて、どうしても一緒になりたかった。
なりふりなんか構っていられないほどに。
大和はアタシに何度も何度もキスをして、それが終わるとオデコをつけてこう言った。
「あの日初めて朋美が泣いたのを見たんだ。リングに上がれば強いのに、子供みたいにしゃくりあげて心配になる程だった。それまでは妹のような存在だったのに……いきなりだった、あの瞬間、ストンと恋に落ちてしまった。泣き顔が愛しくて、笑えばもっと愛しくて……そうなったら最後、とことん朋美に惹かれていった。それは今でも変わらない、……いや、変わりたくても変われないんだ。だからね、朋美以外の誰かといるより、朋美の愛を大事に持って1人でいる方が幸せなんだよ」
ダメだ……そんなコトを言われたら、もう、……もう、
「朋ちゃんは泣き虫だ。今までも……1人で泣いていたんだろう? ごめんね、気づいてやれなくてごめんね。もう無理をしなくていいからね。私が愛してるのは朋ちゃんだけだ。ねぇ、これからまた、大福ちゃんにお願いをして2人で会おう。くっついてキスをして、たくさん話をするんだよ」
そう言った大和は、たぶん、笑顔を向けていたんだと思う。
はっきりとは分からない、……だって、一生分の涙が溢れてしまって、視界がぼやけてしまったから。
大和、愛してる。
すごくすごく愛してる。
今夜、逢えて本当に……良かった。




