第二十七章 霊媒師 繋がり-9
親父の声が聞こえたすぐ後____
バッッッッッ!!!!!
____みんな一斉に朋に注目した。
『…………な、なんだよ、』
視られた朋は汗を垂らして硬直状態。
でもって片膝ついてるのはよ、もしかして、親父に会わずに逃げるつもりじゃねぇだろな、……させるかよ!
ザッ……!!!
おんなじコトを考えたのか。
俺だけじゃなく真さんとエイミーも、朋から目線を外す事なく立ち上がる。
エイミーなんて両五指絡めて霊力を発動、なにをする気か知らねぇがスゲェ気合いを感じるわ。
そのエイミーは朋を視ながらニヤリと笑い……そして言ったんだ。
「……朋さん、どこへ行こうと言うんです? ここは現世。せっかく朋さんのオウチにいてさ、たった今、大和さんが帰ってきたの。まさか、このまま会わずに帰ろうなんて思ってないよね? 会いたいんでしょう? 会いたいに決まってるよねぇ? だって言ってたじゃん。”大和のコトが今でも大好きーーー!” って。ココで会わずにいつ会うの! 逃げようったってそうはいかない! どこに逃げようと僕が捕まえちゃうからねッ! 前みたいにミノムシにしちゃうんだからッ!」
んぁ?
”ミノムシ” ってなんのコトだよ。
分かんねぇけど朋がビクゥッとなっているから、余程の大技に違ぇねぇ。
ネーミングがちょっとショボイがエイミー、おまえマジで頼もしくなったな!
その横では、真さんが諭すみてぇな顔をして、それでやっぱり言ったんだ。
『朋美よ、……岡村の言う通りだ。おまえさん、旦那が好きで仕方がねぇと、会うたんびに言ってるじゃねぇか。あんなに良い男は他にいねぇってよ。俺も大和を気に入ってる。心根が真っすぐで家族を大事にするからな。大和は言ってた。”私は今でも妻を愛しています” と。なぁ、会ってやれよ』
朋は小さくなっていた。
”チョット待て” だの ”ココロの準備” だのハッキリしねくて片膝はついたまま。
隣のユリはオロオロしつつも ”お義母さん、頑張って……!” とエールを送り、目を真っ赤にさせている。
そんなユリの頭を撫ぜて、モジモジグズグズしている朋、……なんだがよ、こんな朋を初めて視たわ。
俺は、……朋がレスラーだった現役を知らねぇ。
試合を見たのはネットの中の古い映像、派手な衣装と派手な化粧で怒声をあげて暴れてた。
どの試合も鬼の強さで、試合の途中で相手の方がビビっちまってた。
子供心に誇らしく思ったもんさ。
俺の母ちゃんマジ強ぇ! ってな。
なのになんだこのザマは。
顔を真っ赤にアワアワしてよ、声も小さくゴニョゴニョ言って、ビビりまくりじゃねぇか。
仕方がねぇ、ここはひとつ気合いを入れるか。
黙ったまんま、俺は朋に近づいた。
朋はなにかを察したのか、ササッと立って俺を視る。
目線を合わせて頷いて、肩に手をやり後ろを向かせ、女にしたらかなりデッケェ背中によ、バシッ!! と一発張り手を入れた。
「「キャーーーーー!!」」←ユリとエイミー
『うっは!』←真さん
『うなぁぁぁぁ!?』←大福
けっこう力を込めたのに、朋は声のひとつも上げねぇで、振り返って俺を視た。
「どうだ、気合い入ったか? 気持ちは分からんでもねぇよ。でもな、朋だって親父に会いてぇだろ? ココで退いたら後から絶対後悔する。なぁ朋、これは試合とおんなじだ。ビビっちまって戦う前から逃げるのか? そんなのらしくねぇよ。俺は過去の朋の試合は全部見た。朋は恰好良かったよ。相手がどんなに強くても、外国のデケェヤツにも決して退かねぇ。全力で突っ込んでいったよな、」
朋は黙って聞いていた、…………が、俺は途中で気がついた。
目が変わったんだ、さっきと違え。
これは戦う女の目だ。
『…………チッ、ナマイキ言いやがって。でもまぁ……そうだな。アタシはビビってた。ずっと大和にウソついて、今更どんな顔で会ったら良いか分からなかった。でもよ、会いてぇと想う気持ちは本物なんだ。……試合か、……うん。そう思えば怖くねぇ! ダァッシャッ!! 気合い入ったーーーー!! 大和に会ってくる! ウソついてゴメンナサイって言ってくる! 大福ゥ!! セコンドに入ってくれッ!!』
『うなっ!!』
朋は両手で自分の顔をバシバシ叩き、大福を横に従え前を向く。
ドアの向こうに足音が近づいて、その足音に耳を澄ませて気合いを入れた。




