第二十七章 霊媒師 繋がり-8
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「「「『『みんな一緒にいただきまっす!』』」」」←生者も死者も
『うななななな!』←猫又も
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「「お二人も召し上がれ!」」←ユリとエイミー
「朋、真さん! さぁ、食え!」←俺
母屋のリビング。
テーブルいっぱい御馳走が並んでる。
豚肉じゃがにサバの塩焼き、イカ納豆にエビチリ餃子。
豚の角煮に切り干し大根、グリーンサラダに浅漬けも。
味噌汁は豆腐となめこと長ネギだ。
ヤベェ!
どれもこれも大好物だ!
『うわぁぁぁ! スッゲェ美味そう! これ、ぜんぶユリちゃんが作ったのか? こんなにたくさん大変だっただろう! ありがとな! あとさあとさ、アタシ、エビチリ餃子が大好きなんだ! 作ってくれて嬉しいよ! もしかして……好物を知ってたのか? でもアタシそんなの話してないよなぁ、』
ちゃっかりユリの隣に座る、朋の顔が溶けきってる。
つーか、今思い出したわ。
確かに朋はエビチリ餃子が好きだったよな(ただのエビチリじゃダメでよ、餃子にするのが好きだった)。
俺、そんな話ユリにしたか? ……してねぇよなぁ。
だってよ、今の今まで忘れてたしよ。
聞かれたユリはほっぺを赤く、だけどなんだか嬉しそうに言ったんだ。
「えへへ~、お義母さんの好きなモノ、私いっぱい知ってます。エビチリ餃子でしょう? お豆腐でしょう? 納豆でしょう? それからリンゴも!」
『えぇぇぇぇぇぇ!(デレデレデレ)』
ぜんぶ当てられ、朋は目をまん丸にした。
嬉しそうに『なんで知ってるんだよぉぉ!』とまぁ、ユリにベタベタくっつきだして、……オイオイ、マジで近ぇな。
ユリのコト、食っちまいそな勢いだ。
「なんで知ってるかというと……ふふふ。実は、ぜーんぶお義父さんから聞いたんです! お義父さん、よく私にお義母さんの話をしてくれるから」
『え……? 大和が……アタシの話をユリちゃんに? アイツが……そうか……そうだったのか……』
「はい!」
ははっ!
朋のヤツ、顔を真っ赤にしちまった。
効いてる効いてる!
ユリの素直で優しい言葉と、それから親父の話を聞いて、ノックアウトを喰らっちまったわ。
……
…………
こんな感じで始まった。
帰りの遅い親父はいねぇが、それ以外はみんなで揃って楽しい晩飯。
俺とユリとエイミーと(生者)、朋と猫と真さん(死者)。
たらふく食べて大いに喋ろう、……つーか、聞きてぇコトが山盛りだから、そこんとこヨロシクな!
『ユリィィィィィィ! 俺の好物も覚えていてくれたんだなぁぁぁ! 爺ちゃん、豚の角煮が大好きだぁぁぁ!』
真さんは口をモグモグさせながら、目から涙をダァッと流して ”美味い美味い” と言っている。
孫命のその姿、ハッキリ言って暑苦しぃコトこの上ねぇ。
でもまぁ、気持ちは分かる。
ユリが作る豚の角煮は箸を入れるとフワッとほどけ、味が芯まで沁みてるからな。
「うわぁ! ホントだぁ……この角煮、口の中でとけちゃう……(ムグムグ……)噛む必要ぜんぜんないよ、んまぁい……」
俺の対面。
口をムグムグ角煮を頬張るエイミーは、幸せそうにため息ついて目を閉じている。
「エイミー、そんなに美味いか? そーだろそーだろ! ユリのメシはマジで絶品だからよ、よく噛んでいっぱい食え! おかわりもあるからな!」
「わぉ、やったぁ! 遠慮なくいただきます! どれもこれも美味しすぎ! ユリちゃん、あとでレシピを教えてね。あと、大福用のゴハンもアリガト! 味付けなしの茹でササミ、お姫の大好物だよ!」
『うっなーーーん!』
ははっ!
どいつもこいつもモリモリ食ってる。
かく言う俺もバクバク食ってる。
エイミー、いつもより食ってるじゃねぇか。
おまえは食が細くて心配だった(俺から見てだが)、もっと食え食え!
真さん、泣いて食ってと忙しそうだ、幸せそうな顔しやがって。
朋、さっきからユリにひっつき離れやしねぇ。
良い子だろ? 可愛いだろ? 俺の自慢の嫁さんだ。
それからしばらくモリモリモグモグゲラゲラと、あーでもねーこーでもねーとお喋りに花が咲く。
さっき、エイミーと大福が、メシが出来たと俺らを呼びに来た時よ。
道場の入り口扉で、なんで小声でコソコソしてたか聞いたんだ。
そしたらコイツら、俺が泣いてるかもと思ったんだと。
14年振り親子の再会、二度と会えねぇと思っていたのが会えたから、号泣で間違いなしと踏んでたらしい。
んで、
一番びっくりしたのは朋とエイミーと大福の件だ。
なんでおまえら俺を差し置き知り合いなんだ。
いつの間に、……つーかエイミー、朋が転生してねぇコトを知ってたのかよ。
聞けば、去年の初夏に知り合ったという。
ジジィと瀬山さんが先生となり、エイミーは修行を受けにW県に行ったんだ。
どんな修行をしてきたのか、それは後から聞いたがよ、朋に ”アタシの事は内緒にしてくれ!” と言われたからと俺に話をしなかった……らしい。
そうだったのか、……真さんといい、エイミーといい、朋との約束律儀に守っていたんだな。
なんだよ、そういう理由じゃ文句なんか言えねぇや。
『でよ、ユリはすげぇんだ! 中学生の頃な、書いた作文が市で表彰されたんだよ! 文才ってやつだ! 美人で気立てが良くてメシも美味いし裁縫もお手の物だしよぉ、俺の自慢の孫だ!』
真さんがゴキゲンだ。
ユリのメシをみんなで食って楽しくなって、孫自慢が始まった、……が、当の孫は大汗掻いて慌ててる。
「ちょっと! 爺ちゃんやめてよぉぉぉ! あ、あの、違うんです! 作文コンクールと言っても参加者は5人しかいなかったから、全員表彰されたんです! ”よく書けました賞” とか ”頑張りました賞” とかそーゆーのなの!」
それを聞いた隣の朋はグィッとユリに近づくと、
『ナニ言ってんだよ! どんなんだって賞は賞、大したモンだ! 誠はそーゆーの、1コも貰ったコトがねぇからな! まったくよ、誠みてぇなバカ息子にこんな良い子が来てくれたなんて奇跡としか言いようがねぇや。いいか誠! おまえはこの先ずっーーーとユリちゃん大事にしろ! なにがあっても妻を守るんだぞ!』
ユリを褒め、最後はビシッと俺を指さし真面目な顔でそう言った。
だから俺も、
「んな当たり前のコト言うなって。ユリは俺の宝だ。世界で1番大事でよ、世界で1番愛しい女だ。大事にするのは当たり前だろうが」
朋に負けずに真面目に答えた。
すると、
「キャーーーーーーーー!」←盛り上がるエイミー
『うなーーーーーーーー!』←盛り上がる大福
人と猫が手を取り合ってのお祭り騒ぎだ。
そんなこんなでたらふく食っての大騒ぎ。
話が尽きねぇ。
真さんの修行の話の絡みから瀬山さんの話題となって、そこから繋がりエイミーの修行の話に着地した。
修行はハードでラスボス級の悪霊相手に四苦八苦。
だがラスボスの手下であった悪霊達が謀反を起こし、エイミーとタッグを組んでなんとか滅したその後。
ジジィコンビに(持丸&瀬山)呼ばれて現世にやってきたのが朋だった……とまぁ、取っ散らかった事情を聞いた。
つーか、なんだってそんな所に朋が呼ばれたんだ?
確かに朋は元レスラー。
腕っぷしは強ぇと思うが、ラスボス戦が終わった後じゃあ加勢にならねぇ。
当然、俺はその疑問をぶつけてみたんだ。
そしたらよ、
『ああ、それな。アタシ、黄泉の国で仕事してるって言っただろ? その関係だ。なんの仕事をしてるかって? あのな、特殊部隊だ。いろんな星を回ってさ、悪霊共を滅してる。まぁ、平たく言えば誠の仕事と一緒だよ。で、あの時現世にモッチー達に呼ばれたのは、特殊部隊にピッタリな人材が27名いるから引き取ってよ! って言われてな』
朋はサラッとこう言ったんだ。
特殊部隊?
いろんな星の悪霊共を滅してる……?
それってよ…………あぁ! 思い出したっ!
前にジジィに聞いヤツだ。
この宇宙には地球以外にもたくさんの生命体が存在する。
色んな星にはそれぞれ色んな生者がいてるが、星の数だけ悪霊もいるんだ。
各星の悪霊共は各星の霊力を持つ者が滅するのが通常。
それすなわち、俺達みてぇな霊媒師が他の星にもいるんだろう。
だがよ、他の星の霊媒師でも手に負えねぇような、もしくは霊媒師にうまく隠れて悪事を重ね続けるような……そんな悪霊共を滅して回るのが黄泉の国の特殊部隊なんだと言っていた。
で、その黄泉の国の特殊部隊にウチの母ちゃんが属してるって言うのかよ。
ああ、だからか……
____黄泉の国でその……なんだ、一応仕事をしててな
____その絡みで田所の事を知ったんだ
____アイツ最悪だ
____善良な5人の霊を犠牲にした
____あんなの野放しには出来ねぇ
特殊部隊の立場から田所の悪事を知って、それで、真さんと一緒に現世にやってきたんだ。
らしいっちゃあらしいわ。
単純思考で曲がった事が好きじゃなく、腕っぷしも強ぇしよ。
俺がガキの頃、散々言われた。
勉強なんかテキトーで良い、
悪い事をしたら素直に謝れ、
自分より弱いヤツには手を出すな、
誰かが困っていたら迷わず助けろ____ってよ。
朋は口だけの女じゃねぇや。
しつけぇくらいに俺に言い続けてきた事。
それを今でも死して尚、自分で実行し続けてるのか……ははっ!
マジでらしいわ。
「あのね、朋さんはすごいんだよ! なんてったって特殊部隊、”バッドアップル” の隊長さんなんだから!」
ポォッと顔を紅潮させて、エイミーが声を大にそう言った。
なんだよ、朋は隊長なんか。
スゲェじゃん!
でも無理はするな、……おまえになんかあったらよ、俺も泣くけど親父はきっともっと泣く。
だから、無理だけはしてくれるな。
でもって隊名な。
”バッドアップル”、それ朋の昔のリングネームじゃねぇか。
朋の仕事の話になって、さらにワーワー盛り上がる。
ガヤガヤワイワイ大騒ぎの中____
ガチャ、
ゴソゴソゴソ……
「ただいまぁ、」
玄関から疲れた声が聞こえてきた。
親父が……帰ってきた!




