第二十七章 霊媒師 繋がり-5
思考が止まる、どうして良いか分からねぇ。
目の前には朋がいる、いるはずのねぇ母親が立っているんだ。
「……なんで、……なんで朋がいるんだよ」
なんとか声を絞り出す……が、最後の方はかすれちまった。
とにかく頭が追い付かねぇ。
「マコちゃん、あのね、爺ちゃんを現世に連れてきてくれたのはお義母さんだったの」
不意にユリがそう言った。
朋が?
真さんを?
口寄せ無しで黄泉から現世に来たと言うのか?
ユリに続いて真さんも言う。
『田所の事を教えてくれたのも朋美だ』
それも朋が?
どうやって知ったんだ?
現世を視るには黄泉の中でも特別な、権限持ちに限ると聞いてる。
それを朋が持っている?
なんで?
生きてた頃はヒールのレスラー、俺を生んで引退したあと専業主婦になったんだ。
そんなモンある訳ねぇよ。
そもそもなんでいるんだよ、……って、クソッ!
思考がループだ、振り出しに戻っちまった。
…………意味が分からねぇ、
だって、だってよ…………!
前を視れば、朋は今にも泣きそうだ。
ミューズみてぇに眉間を寄せて、弥生みてぇに口をギュッ結んでよ。
突っつけば声を上げて泣き出しそうな、そんな顔をしてるんだ。
俺は靴を脱ぎ散らかして、畳の上をドカドカ歩いて朋の前まで行ったんだ。
近くで視てやる、顔は朋にそっくりだけどニセモノかも分からねぇ。
「…………(ジーーーーーーーーーー)」
背丈は……朋と同じだ。
俺は195センチ。
朋は、女にしてはデカイ方で182センチだ。
目線を合わせたこの感じは朋と合致だ。
「マ、マコちゃん! なにしてるの? な、なんでお義母さんを睨むのぉ!?」
後ろでユリが慌ててる。
真さんの笑う声がユリに重なる。
「ユリ、安心しろ。これは睨んでるんじゃねぇ、確認してるだけだ。ユリにも話したろ? 朋は、……俺の母親は随分前に生まれ変わった。なのにココにいるのはおかしいだろ。…………で? アンタは本物の朋なのか?」
ユリに答えて朋(?)に聞く……と。
『………………ブハッ!!』
朋(?)がいきなり吹き出した。
「なにがおかしい。なにか変な事言ったか?」
ちょっと腹立つ。
さっきまで泣き出しそうにしてたのに、今は一転、下品な顔して笑ってるんだ(俺と同じ顔だがよ)。
『いやぁ、悪い悪い! 誠も大人になったと思ってさ。アンタはガキの頃、お菓子をくれりゃあ疑うコトなく誰彼かまわず着いてったのに』
「なっ!! なに言ってやがる! そんなコトしねぇよ!」
『あぁ? 誠こそナニ言ってんだ。都合の悪いコトは忘れちまったか? アタシはずっと誠の傍にいたけどさ、でも、アタシは死者で生者に干渉出来ねぇじゃんか。バカな息子が無邪気に誰かに着いてくたびにどんだけハラハラしたコトか。今思い出しても背中が冷えるっつの』
ガハハと笑って片眉上げて、至近距離で俺を視る。
後ろでは「その話もっと聞きたい!」弾むみてぇなユリの声。
そんなユリに気を良くしたのか、朋(?)の舌が高速で回り出す。
『そうか! 聞きたいか! まだまだあるぞォ! 誠はな5才までオネショをしてた! 6才でクラスの子から告白されて、でも誠はバカだからその意味が分からなくてよ! 分からねぇなら聞けば良いのに、とりあえず笑っとけと女の子を指さしながらゲラゲラやって速攻で嫌われてた! あとな、あとな、中1で初めてデートをした時はな、出かける前に口から血が出るほど歯磨きしt』
「オイ待てヤメロ! ダマレェェェェェェ!!!」
ブン!
ブン!
ブーーーーーン!
俺は叫び、秒の速さでソウルアーマーを装着した。
朋(?)が語る俺の恥部、前半はギリセーフだが後半はモロアウト。
ユリが聞いたらむくれちまう、俺の嫁は世界一のヤキモチやきだ。
聞かせる訳にはいかねんだわ!!
両手を前に、朋(?)の口を塞ごうとした。
ケガだけはさせねぇように、力加減に気を付けながら、…………だがしかし。
『甘ぇよ、』
笑いを含んだ声がした次の瞬間。
ドシャーーーーッ!!
天と地が引っくり返った。
「……イテ……」
なにが……起きた……?
俺……なんで倒れてるんだ……?
畳の上に背中をつけて、訳も分からず視上げると____
『アタシが女だからって加減したな? そんなモンいらねぇわ。母ちゃん、まだまだ息子に負けねぇからよ』
………………あぁ、マジか。
この顔、この表情、この言い方。
それと、あの一瞬で俺を軽々投げたコイツは……ホンモノの朋だわ。
朋は俺の手を取り引っ張り上げた。
俺はマジマジ顔を視て……で、聞いたんだ。
「…………生まれ変わったんじゃねぇのかよ、」
それに対し、
『あぁ、それな。うん、それそれ。実はな、アタシが生まれ変わったってのは…………ウソだ! 悪い!』
朋はゲラゲラ笑って即答したんだ。




