第二十七章 霊媒師 繋がり-3
そんなコトなぞ知らねぇだろう真さんの先生自慢が始まった。
『先生の霊力は研ぎ澄まされてる、言ってみりゃあ霊能の職人だ。先生に出来ねぇ事はねぇ。だからと言ってお高くとまるコトもしねぇ。愛妻家で夫婦仲も良くってよ。そういう所も最高だ。修行中はダンナを俺がとっちまうから、その間奥方は、貴子と婆さんと茶を飲んでる。今じゃすっかり家族ぐるみの付き合いだ』
あーあー、嬉しそうによ。
まったくもってお気楽な爺さんだ。
なんも分かっちゃねぇな。
瀬山さんに教えてもらう、それがどんなにスゲェ事かを。
「で? 真さんはこれからどうすんだ? 田所の事がケリついて、もう修行はやめるのか?」
気になって聞いてみた。
本来の目的は果たしたからよ、いつやめたって良いんだ。
霊媒師の俺からしたら勿体ねぇと思うけど、真さんはどうなんだ?
『あぁ? 誰がやめるっつったよ。俺はやめねぇ! これから先、万が一家族に何かがあったらよ、俺のこの手で守りてぇんだ。だから続ける。先生が ”もう来るな” って100回くれぇ言うまではな』
フンッ! と鼻を大きく鳴らし大威張りな真さんは、もしも来るなと言われてもそこから100回粘るんか。
ははっ!
この霊らしいや。
しかしヤベェな……この調子で修行を積んだら、俺より手練れになっちまう。
負けねぇように頑張らねぇと。
よし! これからは社長もどんどん現場に出よう。
鈍らねぇように、錆びねぇようによ!
それはそうと____
「なぁ、真さんのスキルって他に何があるんだ? チェーンソーでぶった切ったモンを自分の中に取り込めるって言ったけど、さっき ”これが俺のスキルの一つだ” って言ってたから他にもあるんだろ? そもそも、真さんはなんで現世に来たんだよ。俺らに用事があったのか? それにしちゃあタイミングが絶妙だった。あとよ、どうやって来たのかも気になってたんだ。俺は口寄せしてねぇのに」
田所の事が終わった今、聞きてぇコトが山ほどある。
たくさん聞いたがオカシナ質問じゃねぇはずだし、俺としても気楽に聞いた。
なのによ、なんか知らんが真さんの歯切れが悪い。
『スキルは色々だ。これを話すと長くなるからそのうちな。なんで現世来たかはよ、田所がくたばってユリに付きまとってるって聞いてな。それで心配で来たんだわ(モゴモゴ)』
「ん? 真さんはユリの事知ってたのか? 現世の事なのに、一体誰に聞いたんだよ」
ユリの事を知っていたのは俺と弥生だけだ。
でもよ、真さんと弥生は面識がねぇからよ、弥生ルートは考えられん。
『誰にって……そらアレだ。知り合いっつーかなんつーか、……とにかくソッチ方面だ(モゴモゴ)』
あぁ?
”ソッチ方面” ってドッチ方面だよ。
意味が分かんねぇ。
ハッキリしねぇな、どうも様子がおかしい。
歯切れも悪いし、目も泳いでいる。
いつもの真さんらしくねぇ、………………ハッ!
まさかと思うが、不正行為を働いたんじゃあるまいな……?
ジジィ曰く、黄泉の国の住人は特別な権限持ちでもねぇ限り、現世を覗き視る事は出来ねぇと言っていた。
理由は色々あるらしいがよ、1番の理由はトラブル防止だ。
どうトラブルになるのかは……聞いたけど忘れちまったが、黄泉の国のイチ住人が気軽に視れるモノじゃねぇんだ。
なのに、真さんはユリのピンチを知っていた。
それってよ、つまりよ、どうやったかは知らねぇけどよ、孫可愛さに不正を働き現世を覗いたってコトじゃねぇのか?
孫命の真さんならやりかねねぇよ。
いや、この霊ならヨユーでやるな。
これはあくまで俺の想像、だがおそらく合っている。
だがなぁ、不正行為で情報を得たとして、どうやって現世に来たんだ?
誰に口寄せされたんだ?
…………あ、もしかして。
「真さん、とりあえずはユリの前だ。どうやって現世の事情を知ったのか。これは一旦横に置く、」
武士の情けだ。
大事な大事な孫の前で、不正行為を追求するほど野暮じゃねぇよ。
『あぁ? おまえナニ言ってんだ? まぁ、横に置いてくれんのは助かるけどよ』
はっ!
下手なごまかし方だ、まぁいいが。
「真さんがどうやって現世に来たのか。それも分かった。ジジィに口寄せしてもらったんだろ」
俺らが共通で知ってる顔と言ったらジジィとエイミーしかいねぇ。
だが、エイミーはまだ口寄せが出来ねぇからよ。
となると……残るは1人、ジジィしかいねんだわ。
ここんトコ、俺とジジィはすれ違ってばっかだから数週間は会ってねぇ。
故に、ユリの話は知らねぇと思っていたが、ジジィなら弥生ルートが成立する。
大方、弥生から聞いたんだろう。
視よ!
この推理、この洞察力(想像力とも言う)!
と威張りかけたが、真さんは秒でそれを否定した。
『いや違う。持丸さんじゃねぇよ』
「おぅあ!? ち、違えのか?」
『うん』
「ア、アレ……外したか……? じゃ、じゃあ! 誰に口寄せしてもらったんだよ!」
『それはよぉ、(モゴモゴモゴ……口が貝)』
真さんは途中で黙ってソワソワしだす。
待てど暮らせど誰かは言わねぇ(イライライラモヤモヤモヤ……)。
「ダーーーーーッ! ハッキリしねぇなッ! 気になんじゃねぇかー!」
イライラモヤモヤしちまって、俺はそこらのガキンチョみてぇに床を叩いて癇癪起こした。
ユリ曰く、”マコちゃんと爺ちゃんはよく似てるの♪”、らしいがよ。
なるほどな、真さんも俺と同じに床を叩いて癇癪起こした。
『だーかーらーーーーーッ!! 察しろ! 言えねぇんだよ! 内緒なんだよ! 口止めされてんだよ!』
「誰に!?」
『誰にだぁ? オイ! おまえは”内緒” の意味を知らねぇのか? 言えるかボケェ!!』
「ぐぬぬ……じゃあ! 俺が今から質問すっから、”そうだ” か ”違え” で答えろ! それなら良いか!?」
『良かねぇよ!!』
ははっ!
ごもっとも、俺もそう思う。
ナイショなのに、そら良かねぇわ。
でも、勢いつけて聞いたらよ、ウッカリと答えるかもとカマをかけたが……ダメだった、引っかからねぇ。
んで。
絶対言わねぇぞ!
と、そんな顔して警戒中の真さん……んー、こりゃダメだ。
口、どうやっても割りそうにねぇわ。
その口を真一文字に結んでいたが、真さんはふとそれを解き、なんともまぁ、情けねぇ顔でこんなコトを言ったんだ。
『悪いな……本当はよ、ユリと誠に隠し事なぞしたくねぇんだ。でもよ、内緒にするって約束したら破る訳にはいかねぇだろ。分かってくれ』
「あーもー分かったよ、そんな顔すんな! そこまで言われちゃもう聞かねぇよ。ま、約束じゃあ仕方がねぇや。でもよ、なんで内緒なんだ? 別に悪いコトしてるワケじゃねぇだろうよ。ユリのピンチを知らせてくれて、真さんを口寄せまでしてくれるなんてよ」
誰だか知らねぇけど良い人だよな。
でもよ、……なんつーか、藤田家と清水家の事情通すぎやしねぇか?
なんでそんなに知ってんだよ、どこから情報仕入れたんだよ、チョット怖ぇよ。
『とりあえず、何日かは現世にいれるからよ。明日にでも猫に来てもらおう。大和とも話をしてぇからな』
追求を免れて、真さんはホッとしたのかユルイ顔でそう言った。
聞いたユリは目を輝かせ、
「爺ちゃんまだ現世にいてくれるの!? やったぁ! 嬉しい! ねぇねぇ、ゴハンなに食べたい? 明日、爺ちゃんの食べたい物を作るよ!」
と張り切った。
ユリはニコニコ笑ってる、真さんもニッコニコ。
そんな2人をみていると、なんだかスゲェ幸せだ。
家族が笑うと、それだけでこんなにも嬉しいものか。
この時、リビングの中は柔らかな空気で満ち溢れていた。
田所の事ですら、遠い過去の出来事みてぇな感じでよ。
みんなしてホワンとユルユルしてたんだ。
このユルさが真さんの油断を誘ったんだと思う。
俺が何の気なしに言ったコト、
「何日かは現世にいれるって言ったよな。帰りは例の人に送り返してもらうのか? なんだったら俺が送るよ。だから何日とは言わねぇで、もっとゆっくりしてけば良いやな」
これに対して答えたのが、
『ありがとよ、でも大丈夫だ。そのヒトも現世でゆっくりするつもりだって言ってたし、どうせ帰る場所は同じなんだからよ。一緒に帰った方が世話ねぇや』
コレだった。
ん……?
どうせ帰る場所は同じ?
|一緒に帰った方が世話ねぇ《・・・・・・・・・・・・》?
んんん……?
その言い方、おかしかねぇか?
真さんは現世から口寄せされたんじゃねぇのかよ。
それじゃあまるで、黄泉の国から一緒に現世にやって来て、現世からまた、一緒に黄泉に帰るみてぇじゃねぇか。
例の人は生者じゃねぇのか?
もしかして……その人も死者なのか?




