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霊媒師募集  作者: たまこ
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第二十六章 霊媒師 誠と真-13

やだ……! 

気持ち悪いよ……!

来ないで、これ以上近づかないで……!

なんでいるのよ、どうしているのよ、会いたくなかった、二度と顔を見たくなかった……!

マコちゃん助けて、お義父さん助けて、……爺ちゃん……!


頭の中は拒絶の言葉で溢れているのに、声がぜんぜん出てくれなくて、だから、マコちゃんが近くにいるのに ”助けて” と叫べない。

突然こんな所に現れて……おかしいよ……だってここ、女子トイレだよ……!?

父親このひとがなんで中に入ってくるの……!


手のひらに汗を掻く、ううん、手のひらだけじゃない、おでこも、背中も、頭にも、冷たい汗が噴き出してくる。

耳鳴りがし始めて、視界が霞んでよく見えない。

ああ、お願い、声が出ないの、……だから誰か、誰でもいいからトイレの中に誰かがくれば、この人を見て騒いでくれるかもしれない、……お願い……誰か来て……!


遠慮もなしに私の顔を覗き込む、近い距離が吐き気を催す、目が合ったら本当に吐いてしまいそうで、私は固く目を閉じた。

閉じたまま、少しでも離れたくって後ずさろうとしてみたけれど、すぐ後ろには洗面台が、おしりにぶつかり逃げる事もままならない。


____ユリィ、そんなに震えてどうしたんだぁ?

お父さんに会えたのが、そんなに嬉しいのかぁ?

お父さん、おまえを探して探して……ずぅっと探していたんだよ。昔のアパートにも行ってみたがいなかった……お父さん、おまえに会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて……血眼になって探したんだ、


なに……? 

なんでそんなに同じ事を繰り返すの……?

変だよ、異常さを強く感じる、……ああ、それは昔もそうだった、話が通じない、暴力ばかりだった。

あの頃……辛かった、やっと離れられたのに……私は会いたくなかったよ。

優しいママに酷い事ばかりして、……挙句の果てには命まで奪ってしまった、……大嫌い、大っ嫌い……!


____探しても見つからなくて、半分、諦めかけたんだ。でも……ひひh……偶然ミツケタ、……見たんだよ。俺が街を彷徨ってる時、犬を連れたシワクチャババァが人混みに突っ立って写真を撮ってた。邪魔なババァだ、怒鳴ってやれと近づいてったらカメラの先、……そこに、そこに……ユリちゃぁぁぁん……おまえがいたんだよぉぉぉぉ! すぐに分かった。最後に見たのは11年前、ユリはまだ7才だった。それでもすぐに分かったのは……おまえ、貴子の若い頃にそっくりだ…………顔も、身体も、匂いも……イイ女に成長したなぁぁ、……お父さん、おまえにふるいつきたくなるよ、


なにを……言ってるの……?

気持ち悪い事を言わないで……、

言葉も言い方も、その両方が粘着質で気持ち悪いよ、


駄目……吐きそう、……胃液が上がる、目の奥がズキズキ痛んで眩暈もしてきた。

それだけじゃない。

”見つけたのは偶然” と言っていたけど、そうか……私、勝手に写真を撮られてたんだ。

酷いです、撮った人が誰なのかは知らないけれど、そのせいで父親このひとに見つかった。

私を殴り、ママを殺した犯罪者、……恐怖で震えが止まらない。


____偶然ミツケタあの日から、ずぅ……っと見てた、1日中、何日も何日もずぅぅ……っとユリを見てたんだ。おまえ、結婚したんだなぁ……しかも、相手の男は社長じゃないか、家もデカくて立派だし、……金、唸る程持ってるんだろう? ビールもロクに買えなかった俺とは大違いだ。なぁ、ユリ……ふひひひひ……あの男、どうやってたぶらかしたんだ? あぁ? 猫撫で声を出したのか? それとも、売女ばいたのように媚びたのか? ……殺人犯の娘のクセに。11年前、貴子がくたばって、俺が刑務所《ム所》に入れられて、その後おまえはどうしたんだよ。施設にでも入ったのか? 育ちの悪い小娘が大した逆転劇だ。しかしなぁ……ふひひひ…立派な家のお坊ちゃんもチョロイもんだ。若い女にコロッと騙されたんだからよ、


……!!

俯く私に言いたい放題、すぐ傍でかすれた声が降ってくる。

怖いよ、ものすごく怖い……だけど、だけど……マコちゃんをバカにしないで……!

マコちゃんは社長だけど、自分のお給料はギリギリまで抑えてる。

その分、現場のみんなに上乗せしてるの。

”チョロイ” とか ”騙された” とか、そういうのも失礼だ。

2人の気持ちが本物だから、お互いが大好きだから、だから、この先の長い人生、生きてる間もその後も、一緒にいようと決めたんだもの。

何も知らないクセに、想像だけでマコちゃんをバカにしないで……!



「勝手な事を言わないでよ、」


本当は怖くて怖くてたまらない。

私を見つけて、それからずっと見ていたなんて、聞いただけで吐いちゃいそう。

一体どこにいたんだろう?

私はそれに気づきもせずに、マコちゃんも気づいてなくて、なのに……毎日毎日見られてたんだ。

女子トイレにまで来る事も……こんなの……異常だ……嫌……関わりたくない。


でも、……でも、それ以上にさっきの言葉が許せないよ。

大事な大事なマコちゃんを、バカにしたのが許せない。

だから、……それは違うと、それだけは言いたくて、腹立たしさを勇気に変えて、顔を上げて、涙を拭いて、前を……見た、その時。


「私は、わたs…………え……? ……なに……? ……! ……これ……、ぁぁ……まさか……あぁ、でも…………やっぱり……、」


気づいてしまった、

そう言う事だったんだ、


さっきは突然女子トイレに現れたから、パニックで、まともに頭が働かなくて、怖くて、驚いて、涙がこみ上げ視界が歪んで分からなかった。

今なら分かる、今なら視えるの、…………陽炎のような揺らめきが。



____ユリ、……ユリ、どうしたんだよ、

そんなに俺をジッと視て、ユリ、……ユリ、ユリ、ユリ、ユリ____


『ユリ、大丈夫か? 顔が真っ青だ。……だがその顔、ようやく気づいたようだな、……そうだ、……俺は……死んでいる』


そう言って、ニヤァと……笑ったんだ。







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