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霊媒師募集  作者: たまこ
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第二十六章 霊媒師 誠と真-10


1月下旬、第四月曜日。


件の土曜日から2日が過ぎた。

あの日、神社でユリを抱きしめて、そのユリは嫌がる素振りを見せるどころか、俺の腕にしがみついて泣き出したんだ____



____訳が分からねぇ。

どうしたんだよ、俺に不満があるんじゃねぇのか?

聞いてはみたが、ユリはひたすら泣くばっかりで答えてくれねぇ。

嗚咽の合間に ”ごめんなさい、ごめんなさい” と、そればっかりを繰り返す。

ユリ、落ち着け。

言っておくが俺はちっとも怒ってねぇ、もちろん親父もだ。

ただ、スゲェ心配だったんだ。

分かるだろう?

ユリは大事な嫁さんで、世界で一番愛しい女だ。

昼間に突然消えちまって、生きた心地がしなかった。

何があったんだよ、何か事情があるんだろう?

話してくれ、何があっても俺がユリを守るから。

俺を信じて話してくれ。


そう言うと、ユリはますます泣き出した。

両手で何度も目を擦り、しゃくりあげ、肩を揺らし、顔を上げて俺を見て、それから、…………ユリ? どうした、どこを……見てるんだ?

俺を見ていた目線の先がわずかに逸れて、何か……別のモノを見ている。

目を見開いて怯えたような顔をして、ジッと、俺の後ろを見てるんだ。

警鐘が大音量で鳴り響く。

瞬間、俺はユリを背中に隠して拳を構えて振り返る、と、そこにはイカツイガタイの人影が、群をなしてこちらに向かって来る所だった。


…………ああ、そういう事か。

ユリはコイツら(・・・・)に驚いちまったのか。

どいつもこいつも真冬の夜に半袖だし、ドデカイ身体をしてるのが、ザッと数えて20人は下らない。

無理もねぇや。


「誠さん!」


ブンブンブン!!


バンザイポーズで両手を振るのは折田聡だ。

さっき親父に電話をすると、神社から出て行ったのが戻ってきたんだ。

しかもこんな、暑苦しいオマケ連れで。


「お待たせしました、大和さんに連絡してきましたよ! ユリさんを探してた他の奴らも、それぞれのジム経由で無事保護したと連絡済みです! で、コイツらはこの辺りを探してた仲間達なんだけど……えへへ、みんな誠さんの奥さんにご挨拶したいって集まってきちゃったんです。もしご迷惑でなかったら挨拶させてもらって良いですか?」


是非!!!


聡の後に野太い声が重なった。

人見知りのユリは目を白黒させて、それでもちゃんと挨拶をしてくれたんだ。





PM4:02____



「ふぅん、そんな事があったんだ……や、でもさ、ユリちゃんが無事に見つかって本当に良かったよ」


自席の上にドカッと座って足を組み、俺の話を聞いた弥生が大きく安堵の息を吐く。

夕方のおくりび事務所、ここにいるのは俺と弥生の2人だけ。

ユリは駅まで、文房具だかお茶だかを買いに行くとだいぶ前に出かけて行った。

そのユリと入れ違いに、現場を終えた弥生が出社。

来て早々、俺の様子がおかしいのに気がついた。

曰く、「付き合い長いからな。誠の頭のテカリ具合でなんとなく分かるんだ」って。

マジか……そんなんで分かるのかよ。



「参ったよ。結局ユリは、いなくなった理由をいまだに教えてくれねぇんだ。ユリを連れて親父が待ってたジムに行って、そん時も泣いてあやまるばっかりで要領が掴めなかった。……はぁぁ。こういう時、どうしたら良いんだろうな。ユリをよ、問い詰めたりしたくねぇんだ。いつもなら俺になんでも話してくれる。楽しそうに笑ってよ、こんな事があった、こんな風に思った、……ってよ。なのに理由を話さないのは、余程の事情があるんだよ。……俺には話せねぇのかなぁ、」


クソ……情けねぇ。

愚痴なんかを言ったってミリも解決しねぇのに。

こんな所で弥生相手に愚痴ってよ。


「余程の事情か……んー、どうなんだろうな。まぁ、話を聞いた感じじゃあ……あるんだろうな。でなきゃウォールの印なんか結ばない。誠に霊視されないようにしたって事だろ? 内緒にしたい何かがあるんだよ、…………」


ウンウンと頷きながら、意味ありげな余韻を残す弥生。

な、なんだよ、なんかスゲェ気になる言い方だな……!


「オイ、ユリが内緒にしたい事ってなんだよ、知ってるなら教えてくれよ! なぁ、なぁなぁ、なぁって!」


藁にもすがる思いとはこの事だ。

弥生も一応女の端くれ、コイツの意見はなにかヒントになるかもしれねぇ!


「ばっ! 誠、落ち着け! アタシは何かあるんだろうなって思っただけだ! それが何かは分からねぇよ! つーかテンパリすぎ! どこぞの小僧じゃねぇんだからよ、これくらいでオタオタすんな!」


「な゛っ!? オタオタなんかしてねぇわ! ただチョットスゲェどうしようもなく心配なだけだわ!」


「なんだそりゃ! ちっとも ”チョット” じゃねぇよ! オイ、大丈夫か? マジで少し落ち着けよ、な? つーかさー……おまえ、ほんっっっっとーにユリちゃんのコトが好きなんだな。前の彼女の時はこんなんならなかったじゃん。昔の彼女、アタシは2人知ってるけど、その時は、」


毎度の事だが話が脱線しかけてる。

昔の女、今その話必要か? 必要ねぇよ。

それより俺はユリの事が心配なんだ。

ユリの事情が知りてぇが、問い詰めて怖い思いをさせたくねぇ。

だからって話してくれるの待ってる余裕はねぇんだよ。

だってよ、なんだかやけに胸がザワつくんだ。


「前の彼女ら、ユリちゃんとは正反対だよなぁ。2人とも、スッゲェ気ぃ強かったし。一回さ、現場の帰りにアタシと誠でご飯を食べてた時にさ、彼女に見つかっちゃったの覚えてるか? あん時、彼女が誤解して、アタシに掴みかかってきたじゃんか。ありゃマジびっくりしたわ」


ああ、そんな事もあったな。

でもよ、その話は今いらねぇよ。

俺はユリの話をだなぁ、……と、軌道修正をかけようとした時、


ガチャリ……、


事務所のドアが静かに開き、そこにユリが立っていた。

買い物を済ませてきたのか、ハート模様の布のバックがパンパンだ、…………ん? どうしたんだ? なんか、ヘンな顔してるな。

口はへの字で顎にはウメボシ、明らかにむくれてる。

もしかして……さっきの、……弥生の話を聞いていたのか……?

………………だとすると、ものすごくヤベェ。

ユリは意外とやきもち焼きだ、そう、たとえ過去の話でも。


心臓がドキドキしだして、ユリじゃねぇけど手に汗掻いて、焦る俺とは真逆を行ってる、弥生がはしゃいでこう言った。


「あー! ユリちゃん! おかえり、待ってた! 駅まで買い物に行ってたんだって? アタシさ、現場が終わって直帰の予定だったんだけど、時間も早かったし勢いで来ちゃったんだ! ユリちゃんにも会いたかったし! なのにさぁ、来てみたらユリちゃんいないし、いるのは誠だけだろう? 帰ろうかと思ったけど、誠に捕まっちゃったんだ。なんかオタオタしちゃってさ、愚痴を聞かされてたんだよ」


「オ、オイ! 弥生! なに言ってんだよ! オタオタなんてしてねぇって言っただろうが!」


手に汗どころの騒ぎじゃねぇ、背中も頭も汗が一気に噴き出した。

つーかよ、いきなりバラすか!?

人の事は言えねぇが、デリカシーの欠片もない女だな!

デリケートな話だろ!

こういうの、普通大人は言わねぇよ!

案の定、ユリは眉を寄せている、怒ってはなそうだけど怪訝な顔だ。

そして弥生は止まらねぇ。


「よく言うわ。ユリちゃんが心配で心配で仕方ねぇクセによ。なぁユリちゃん、誠はさっき言ってたよ。ユリちゃんのコトが ”ただチョットスゲェどうしようもなく心配なだけだわ!” って。これのどこが ”チョット” だよって思うよな。オタついちゃってテンパッて、ユリちゃんが何か悩んでるんじゃないか、何か隠してるんじゃないか、それが気になってしょうがないんだ。でも、無理に問い詰めたりはしたくないって言ってた」


あーもーなんだよ、全部言ってんじゃねぇか、つーか俺、スッゲェカッコわりいじゃねぇか。

弥生の話にユリは驚き、チラチラ俺盗み見る、口がポカンと開いている。


「マ、マコちゃんがそんな事を……?」


戸惑いながらユリが小さくそう聞いた。

弥生はウンウン頷きながら、してやったりな顔をする(なんでだよ)。


「うん、言ってた。誠はユリちゃんにベタ惚れだからな。コイツ、身体がデカイだろ? だから余計に気を遣うんだ。気にはなるけど問い詰めて怖がらせたらどうしようって。普段はデリカシーのデの字もないクセに笑っちゃうよな。ま、それだけユリちゃんが大事なんだろうけど。とは言っても、ユリちゃんにしたら少しウザイだろ。朝から晩まで家でも会社でも一緒でさ、デカイから傍にいると圧迫感があるだろうし、年がら年中筋トレばっかしてるしさ。アタシにさえ、ユリがユリがってうるさいんだ。当のユリちゃんにはもっとまとわりつくだろうし。あー大変そーだ。ユリちゃん、無理しなくて良いからな。いい機会だ、ウザかったら ”おまいウザイんだよぉ!” って言ってやんな!」


え……そ、そうなのか?

俺、ウザイのか……?

家でも会社でも一緒ったって、それはしょうがねぇだろ。

一緒に住んでんだし、同じ会社で働いてるし……そ、そういや通勤の行きと帰りも一緒だな。

ユリには負担だったのか……?

頭の中で不安が渦巻き汗が冷たくなってきて、今度はチラチラ、俺がユリを盗み見て、そのうち1回、目が合ったそのすぐ後。

ユリが慌てて言ったんだ。


「や、弥生さん! チガウよ、そんな事ないです! うっとおしいなんて1度も思った事ないです! ベタ惚れなのは私の方、マコちゃんが大好きだもの。朝から晩まで家でも会社でも、ずっとずっと一緒にいたい。私、マコちゃんと一緒にいると今でもドキドキしちゃうんです。だって……すごく優しくてすごく恰好良いから、……無理なんてしてません、……逆に、私の方がしつこいって思われてるかも……」


ユリ……顔が真っ赤じゃねぇか。

弥生はまたもやしてやったりな顔をして、ユリの頭を撫ぜながら……


「そーかそーか! そりゃ悪かった! アタシの勘違いだったんだな。じゃあさ、ユリちゃんは誠の事はちっともウザくないんだな?」


「はい!」


「うんうん、良い返事。ユリちゃんは誠のコトが大好きなんだな?」


「はい!」


「あーもーホントに良い返事! 可愛い! さいこー! じゃあさ、ユリちゃんが何に悩んで何を隠しているのか、そういうのも話せるよな?」


「はい! ……あ、」


ユリは弥生に乗せられて、勢い余って ”はい!” と返事を三連発。

弥生はゲラゲラ笑った後に、


「ユリちゃん、アタシと約束したかんな。誠にぜんぶ話してやれよ!」


そう言ってコレで3度目、してやったりな顔をした。

弥生……良い仕事するじゃねぇか……!!






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