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霊媒師募集  作者: たまこ
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第二十六章 霊媒師 誠と真-7


【お連れ様のお呼び出しを致します。

東京都O市からお越しの清水ユリさま、

東京都O市からお越しの清水ユリさま、

お連れ様が二階アクセサリー売り場でお待ちでございます。

至急アクセサリー売り場へお越し下さいませ】


テンパる俺を見るに見かねたのはアクセサリー売り場の店員だ。

トイレの中を見てきてくれてユリがいないと分かった時、


「お客様、まずは店内放送をかけてみましょう。もしかしたら奥様も旦那様をお探しになっているかもしれません」


そう言って、テキパキと依頼をかけてくれたんだ。

言われてみれば可能性がゼロって訳じゃねぇ。

俺がアクセサリーを見ている間にユリが出てきて、いなくなったと思ってよ、探し回ってるかもしれねぇんだ。

だが不安は拭えねぇ。

なぜなら……


プルルルル……プルルルル……プルルルル……


「クソッ! 出ねぇ!」


ユリのスマホに何度かけても出ねぇしよ、向こうからもかかってこねぇ。

こんなのおかしいだろ、何があったんだよ……!


店内放送から10分経過。

だがユリは戻らない。

こうなりゃ仕方がねぇ……霊視みるか。

本当は、夫婦であっても勝手に覗くなんざしちゃいけねぇ。

けどよ、今は非常事態だろ。

ユリが消えて、さっきからずっと警鐘が鳴ってんだ。

胃の中のモノが全部出そうなくらいによ。



アクセサリー屋の店員に、”妻が戻って来たら俺に電話する事と此処を動くなと伝えてください” そう頼み込み売り場をあとにした。

向かった先は男子トイレだ。

都内のデパートはどこに行っても人がいる。

人前で霊視をすればメンドウな事になりかねねぇが、男子トイレ(ここ)なら人目は気にならねぇ。


個室に入って鍵を閉めるのと同時。

左手の人差し指と中指を、めり込むくらいに額に押し付けた。

俺は印は得意じゃねぇから、霊視に印は使わねぇ。

頭の中で何を視たいか強く念じて霊力ちからを発動させるんだ。

仕事の依頼の失せ物探しと訳が違って、依頼者からの情報だけの、見た事もない物を探すんじゃねぇからな。

良く知る顔の大事なユリを探し出す、難易度は低いはずだ。

すぐに視付けられるだろう。

まったく心配かけやがって……視付けたらすぐに走って迎えに行こう。

大丈夫、怒ったりはしないから。



……

…………

………………


「ああ! クソッ!」


苛立ちが抑えきれず悪態が口から洩れた。

そりゃあ洩れるだろ、……クソッ! クソッ!

だってよ、視えてこねぇ!

何度霊視をかました所でブロックされる。

映像が浮かびそうで浮かばない、ブロックノイズが視界一面広がって、どうにもこうにも視えねぇんだ……!

なんでだ……なんでだよ……! 


………………あ……

もしかして……アレか……?

……思い出した……ずっと前に俺が教えたんだ……!



____ユリ、”ウォールの印” ってのを教えてやる、

____これはな、第三者から霊視をされねぇように、

____視えねぇ壁を構築してブロックする印だ、

____ミューズがなぁ……ヤメロっつってんのに覗く事があるからよ、

____だからユリも覚えとけ、

____なに、ダイジョブだ、出来るよ、

____あの弥生ですら結べる簡単な印だからな、



去年の春に。

ユリが俺に想いを伝えてくれた時、ミューズとエイミーは2人して俺らを覗いた。

それをユリが恥ずかしがって、だから俺が教えたんだ。

ユリはある程度の霊力ちからを持ってる。

印さえ間違えなければ構築出来る。


あれからずっとなのか、それとも今日がたまたまなのか、ユリは自分自身にウォールの印を結んでるんだろう。

だから弾かれる、だから視えてこねぇんだ。


全身から汗が噴き出した。

ユリが姿を消して焦ったが、奥の手で霊視をすれば視つけられると思ってた。

だがその手が使えねぇとなると……


「……警察に捜索願いを出すか、」


だが……すぐには動いてくれないだろうな。

いなくなって1時間も経ってねぇんだ。

行った所で鼻で笑われるに決まってる。

だからってこのままには出来ねぇ。

警鐘はどんどん音がデカクなり、嫌な予感が膨れ上がる。


俺はもう一度、ダメ元でユリに電話をかけてみた。


プルルルル……プルルルル……プルルルル……

プルルルル……プルルルル……プルルルル……


やっぱり出ねぇ……!


叩くように電話を切って、直後、叩くように画面をタップし電話をかけた。

今度はユリじゃねぇ。

かけた相手は、


プルルルル……プルルルル……プルルルル……プルル、(ピッ)


____もしもし、誠か?


まだ都内にいるはずの親父にだった。



「親父、そっちにユリから連絡ねぇか?」


事情を話す手間も惜しくていきなり聞いた。


____いや、特にはないが……どうした、ユリちゃんに何かあったのか?


ああ……そっちにも連絡は入ってねぇのか……もしかしたらと思ったのによ……クソッ……! 

ユリは一体どこに行っちまったんだ……!


____……こと、大丈……か? 事情をはなセ、〇※✕▽%$……!


背中の汗が冷たくなった。

ガラにもなく手が震え、受話の向こうの親父の声が頭の中で響いてる、

ハウリングがあまりに酷くて内容が入ってこねぇ、音としか認識しねぇ、

ユリになにかあったらどうしたら良いんだ、ユリが怖い思いをしてたら、ユリが辛い思いをしてたら……考えると居ても立っても居られねぇ、今すぐユリを助けに行きてぇ……!

俺ならどんな目に遭おうとも、俺は俺でなんとか出来る、

だがユリは……あんなに小さな身体でよ、あんなに力もなくってよ、……俺は……俺は……!


____……と……こと……まこ……、誠ォッ!! しっかりしろッ!!


パニックになりかけた俺を引き戻したのは親父だった。

当てたままの受話の向こう、耳を抉る大声は ”音” を ”言葉” に戻してくれた。


わりい、俺テンパッてたわ。あのな、ユリがいなくなった。親父と別れた後、俺とユリは街をブラブラ歩いてよ、途中でトイレに寄ろうと思って〇〇デパートに行ったんだ。俺はトイレの前でユリを待ってた。だが待ってる間に少しだけその場から離れちまって、それで、戻った時にはトイレから消えちまってた。デパートでは呼び出しの放送をしてもらったが戻って来ねぇ。俺から電話もかけてみたけど全く出ねぇし、ユリからもかかってこねぇ。どこに行ったか分からねぇんだ」


手短に説明したが霊視の事は伏せておいた。

ややこしくなりそうだし、手掛かりすら掴めなかったんだ。

時間を割いてまで今話す事じゃないだろう。


____そうか……心配だな。あの子は周りに気を遣う子だ。何も言わずにいなくなるとは考えにくい、


「ああ、俺もそう思う」


____……まさかと思うが、ユリちゃんと喧嘩なんぞしてないだろうな?

お前は身体が大きいから怖がらせたんじゃないのか?


「喧嘩なんかしねぇよ。ユリといて腹が立つ事なんか1つもねぇからな。たとえあったとしても絶対に怒ったりしねぇ」


____そうだよな、……なにか、なんでも良いから心当りはないのか? ユリちゃんが行きそうな所とか、今はデパートにいるんだろう? 好きなブランドを見にいってしまったとか、


「そんなものがあればとっくに迎えに行ってるさ。ユリはブランドには興味がねぇ。服を買いに行くにも1人じゃ行けねぇ。俺と行くか会社の女と一緒に行く、1人でフラフラ行くなんてありえねぇ。…………なぁ、こんな事を考えたくはねぇんだけどよ、…………なにか事件に巻き込まれたんじゃねぇよな、……違うとは思うがよ、……こう、心臓がざわざわするんだ。頭の中で警鐘が鳴り響いてる。……だから早く見つけてぇんだ」


____警鐘か、……おまえは昔から勘は鋭かったからな、……大丈夫だとは思うが……用心に越した事はない。誠、警察に捜索願いを出してみるか、


「……俺もそれは考えた。だがいなくなってから1時間も経ってねぇ。今言っても鼻で笑われてまともに取り合ってくれねぇだろ。そのくせやたらと時間がかかりそうだし。だったら、テメェの足で探した方が早いんじゃねぇかと思ったんだ」


____いや、笑われようが大袈裟と言われようが、大事な家族がいなくなったんだ。いなくなって約1時間、世間一般では短い時間と思われるかもしれないが、ユリちゃんの性格上、連絡も無しにあり得ない。だから行ってこい。近くの交番で構わないから、見かけたら連絡が欲しいと、それだけだって構わないから、


「……ああ、そうだな。笑われようが何だろうが、ユリの事を分かってるのは俺達だ。届けておけばそれだけ早く見つかるかもしれねぇ。今こうしている間だって連絡がねぇんだ。やっぱりおかしいよな。じゃあ俺行ってくるわ。でよ、親父は先に街を探しててくれ。届けが終わったら合流するから」


____分かった。ユリちゃんの最後の足取りは〇〇デパートだと言ったよな? そこを中心に範囲を広げて探してみる。


「頼む。なるべく早く合流するからよ。人の多い都会の街を親父1人で探すのは難儀だからな」


____ん? 誠、誰が1人で探すと言った。


「………………は? なに言ってんだ? 捜索願いはこれから出すんだし、出した所で警察は、すぐに動いちゃくれねぇよ。俺が行くまで親父1人だろうが、」 



何を言ってるんだ……、訝しく思いながらそう聞いた。

だが親父は怯む事なくこう言ったんだ。



____いや、……私がさっきお前達と別れた後、これからどこに行くのか言ったよな、それを覚えているか? 私は今、知り合いの格闘ジムにいるんだ。ここには選手にトレーナー、練習生にマネージャーとギャラリーと、ざっと数えただけで数十人はいる。それだけじゃない、此処の他、東京23区にどれだけの格闘ジムがあるか知っているか? 誠の予想の3倍はあると思っていい。私はこれから23区、全てのジムに声を掛ける。すべての人間を招集する。その全員が集まれば、人足にんそくは限りなく千の単位に近づくだろう。私は1人で探さない、屈強な友人達と、都会の中を隅から隅まで一緒に探す! 大事な娘を絶対に探しだすッ!



耳を抉る大きな声が、俺の頭を揺さぶった。

マジか……ユリ1人に千に近い格闘家が動き出す。

これなら見つかるかもしれねぇ……!






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