04…オレンジ頭は番犬
ここの世界はスルースキルが高い。
私の事など気にもせず授業を進める先生や教室に着く前にすれ違った人にも不審に思わないまま私に挨拶を交わす。おかしいぞ、この世界は。
私はとりあえず淡々と進めて行く先生から置いていかれないように教材とノートを取り出すと、肘を指先で軽く叩かれた。
「大丈夫なのか?授業受けて」
「ぇあ、うん。ちょっと意識失ってただけだし」
「ぷっ…それ大丈夫じゃねぇーじゃん」
軽く笑う男の子に苦笑いすると、男の子は私に飴玉をくれた。可愛い紙に包まれた飴玉を手の中でしまい、感謝すると彼は笑ってブイサインを送ってくれた。
オレンジ色が目立つ髪にぴょんと跳ねているくせ毛。一見可愛い男の子に見えるが耳朶に飾られている銀色の牙は不釣り合いなピアス。そのギャップが番犬のように見えてしまい仕方がない。
そもそも彼は私に優しく接しているが、肝心な自分はここに来たばかりなので話のペースを合わせるのが難しいというのに不審に思われていないのが素晴らしいと私は自分を褒めたたえる。まさかまさか、恋愛対象の人と会話ができるなんて嬉しくて息が詰まる。
私は胸を踊らせながら黒板へと目を向き――固まってしまった。…あれ?ん?可笑しくないか?
ノートを広げ、筆を動かそうとした手は違和感に震えた。皆を見れば、気にしてはいないようでノートに書き込んでいた。
ちらりと隣を見やれば、男の子はノートの端っこに麒麟の落書きが見えた。リアルでは無いが、可愛らしい顔が私の萌力エナジーを上げさせた。あぁもう!可愛いったらありゃしない。
いやいや、そうじゃなくて
「ね、ねぇ!今何月何日か分かる?」
「あはは…ちゃんと黒板見た?今日は3月31日だけど。なんかあった?」
ええ。大ありですとも。
――ゲーム本編より前の時間帯に。
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