23…頼まれたくない頼み事。
230件以上のお気に入りありがとうございまする……あははっ…寝てないと思考回路って変になるんですね…あはは…あははは…(白目)
少しだけ肌寒くなった季節でも衣替えが始まらないこの学校。気温変化に順応しなさすぎだろって言っても学校が決めたことだから口出しはできない。
それでも皆楽しそうに友達と話してるのであまり気にはしていなくて――私だけか、そうですよね。友達があまりにも少ないと暇なのよね。だからどうでもいいことに気づいちゃうのよね…あははっ…はは…ぼっち辛い。
「うぅ…主人公ちゃんは順調に輪を広げてますなぁ…」
自分よりコミュニケーションが高い主人公ちゃんを遠目で見ていれば、視線に気づいたのか手を振ってくれる。
あぁ、なんて優しい子…とか思いつつ手を振り返せば主人公ちゃんは私のところへ来てくれた。ほんとは自分から行かなきゃいけないのに…駄目な私。
主人公ちゃんは私を気遣ってかグループからわざわざ抜け出してきて話しかけてくれる。たしかにグループだと入りづらくて苦手なんだよね。穏やかなグループとかそういうところはぐいぐいいけるんだけど。
「渚ちゃん、どうしたの?疲れたそうな顔しちゃって…」
「それがさぁ…休日ぶち壊されちゃったんだよね」
「えぇ!?どういうことなの??」
「実は、変な奴が私の休日を邪魔しに来て、無茶振りばっかで疲れたんだよね…うぎぎぎぎ…」
「そうなんだぁ…それってもしかして錬城君だったり?」
「違うよ!寧ろ昶は私を邪魔するより強い人と喧嘩する方を選ぶよ」
「そっか!そうだね!」
そう言って面白そうに笑う主人公ちゃんに錬城ってそういう目で見られてるんだなぁって思い出す。結局主人公ちゃんは誰ルートなんだろう…?ちょっと記憶が曖昧だからルート次第で焦っちゃうんだけど。どのルートでもいいんだけどね。某ゲームなんか主人公と相手以外抹殺エンドなんていうのもあるし。それはちょっと、ね。私まだ生きていたいタイプなんで。
「でねー…「鈴攫さん、お取込み中ちょっといいかしら?」…玲花先生?」
主人公ちゃんに席を空けることを伝えると教室から出る。
このパターンからしてきっとまたアレのことなんだろう。玲花先生言いにくそうな顔してるし。
「応接室に渡せばいいんですか?その資料」
「ごめんなさいね…こんなこと本当は頼みたくないんだけど…」
「仕方がないですよ、先生は忙しい身ですから」
「いや、今日は出張はなくて…」
「?」
玲花先生は耳を貸すように手招きしてくる。素直に従えば、先生は少しだけ躊躇して耳元で呟いた。
「頼まれたのよ、玄條君に」
「えぇ!??」
支えきれない爆弾に困惑していれば先生は苦笑いしているがそれどころじゃない!謝りにいかないと…とか思ってたけど少し日にちが経っちゃって、今がチャンスなんだけど凄く行きづらい。謝るのは早めに謝らないと重いよね…凄く重いよ。今そんな感じだよ。
「そういう訳だから…お願いできる?」
「えぇ…。あの、いつもは先生が書類を応接室に運んでいたんですか?」
「あぁ。それは…週によって変わるらしいって鷹沼先生が言ってたわ」
「鷹沼先生も?」
「えぇ」
へぇ…マセおっさんも書類とか配ったりするんだ…。あの人なら他人に押し付けそうな雰囲気だけど。
先生と別れ、頼まれた書類にため息をつくと机の中にしまいこむ。
いっそこのまま見なかったことにしたいけど、玲花先生の好感度が下がるのは嫌なことで。
主人公ちゃんが私を心配するが聞く耳さえ持てなくて引きつった笑いしか出てこなかった。
◆
嫌なものをずっと放っておいても意味がない。
そう思って最短ルートで応接室に向かって来たはずだ。
なのに何故私の胃はこんなにも苦しめるのだろうか。女の子日より痛くて正直この扉を開くのに精々するぐらいだ。別に応接室の扉が重いわけじゃない、応接室に居る人物に拒絶反応してるだけ。
自分の体は素直だ。嫌だと思うと胃を苦しめ、好きなものはすぐ反応して音を出す。飄々とした態度でいても腹の虫が鳴れば皆から笑い者にされるのは当然のことだろう。私の気持ちを知らないで鳴らすんだから。
ぐっと堪えて目の前で冷たい表情で見下ろしてくる男に思わず眉を顰めた。
あぁ、痩せ我慢はよくないかな。今すぐ叫び声でも上げてコイツから離れたい。イケメンにコイツ呼ばわりなんかしちゃいけないんだけどね。
そもそも眉間に皺寄せて話す冷たい人なんかに心奪われる乙女なんているのだろうか。そんな姿にキュンってきちゃうのはマゾかサドのどっちかだろう。悩む時の鋭い目つきやため息に萌えるっていう人もいるらしいし。どちらかというと私は、仕事とかに疲れて無防備な格好で寝る方が萌えますけどね。ネクタイ解くのもありだし、脱ごうとしたけど寝落ちしちゃった姿とかも…って今はそんな妄想はどうでもいい。
「あぁ、どうも」
書類を玄條に手渡せば書類を見通してくれる。
頼まれた事はやったはず。なんせ玲花先生は「書類を渡してきてほしい」と頼んだんだ。だから私がこれ以上いる必要なんて無に等しい――いや、あるか。
「あの…この間はすみませんでした。身勝手な事を言っちゃって…」
冷たい瞳が書類から私に移る。
目をなるべく合わせたくなくて、顔を俯いちゃう私に少しの沈黙が流れると、彼の苦笑じみた笑いが聞こえた。
気になって顔を上げれば視界が暗くなって紙が私を襲った。
「へぶっ!…ちょ、なにするんですか!?」
「別になんでもないですよ。蝿が君の顔にとまってたので叩いたまでですし」
色々ツッコミどころがあるがあえてスル―した方がいいだろう。
したら負けだ。きっと罠に違いない。
玄條は書類を机に置いて、応接するときに使うソファに座りこむ。
学校の景気がいいからか備品も少し上等なものを使うみたいで。今、玄條が座ってるソファも質がいいものだ。
ブランド品に疎い私でも分かる品を学校で使うなんてどれだけいいんだか…ちょっとはこっちにお金を支給して欲しいぐらいだ。
学校の資金に文句を心の中で漏らしていれば、レーダー反応したのか玄條の表情が怖くなった。読心術でもあるんだろうか、この男は。だとしたら凄いと思うよ色んな意味で。
「いつまでそこで突っ立てるのですか?それじゃあお話が出来ないじゃないですか」
「え、ぁ…す、座りますっ!!」
呆れた口調で私を見る玄條にすぐさまソファに座り込む。もし座らなかったら明らかに不自然だし、相手も不快な思いをするだろう。
現に私は苦手意識を玄條に持っているからこそ相手に気づかれたくはない。出来ればフラグを立てないままの関係がいいのだ。それにこの男は主人公ちゃんの攻略対象でもある。なるべく危険は避けたい。
…ん?攻略対象?なんで人物に攻略対象など決めつけるんだ。そうだと決まったわけないじゃないか。イベント時に出てくる人物かもしれない。じゃあ何故私は、この人物を攻略対象だと肯定したんだろう。
自分の中にある違和感を疑問に思っていれば玄條に名前を呼ばれた。どうやら話をしてたみたいで、全然聞いてませんでした。だからその顔止めてくだいってば怖いから。
「だから…、この間の件については申し訳ありません。自分も感情的になってしまい君を傷つてしまいました、すみません。と言ったんです」
「え」
嘘…だろ?普通に貶す人が素直に謝るなんて…まさかまさかとは思っていたが。本当にそのまさかだ。
しかも本人は改めて口にするのが恥ずかしいのか視線ずらしてるし。さりげなく口元に手を当てるあたり可愛く見えてしまうのは可笑しいのだろうか。
プライドが高そうだから謝ることはまずないとは思ってたし、謝るなら他人に言われて謝りそうな気がしたからなぁ。なんだか衝撃的だ。
「っいえいえ!玄條さんは謝らなくていいんですよ!謝る理由なんてないんだし、逆に謝られると困るというか…」
玄條は学校の為に怒ったわけだ。それなのに謝る必要なんてあるのか?
玄條も感情的になったのはなったけどそれは学校の為でもあるし、一人が感情的になれば相手も感情的になるのは当たり前のことだ。
だから玄條は謝らなくていいのに。何故謝るのだろう。
「謝るのに理由なんて必要あるのですか?僕は自分にも非があると思ったから謝ったのです。それなのに理由が必要なのですか?」
「ぃ、いえ」
「ではこの件についてはここまでにしましょう。いいですね?」
「…、はい」
とんだやられもんだ。もうなにも言えないじゃないか。
謝ってもらっただけでも私としては嬉しいのに、それ以上のことを望むような言い方されてしまっては口に出すことが出来ない。
しかも自分から謝ったんだ、彼は。人に言われて仕方なく謝るのではなく、自分が悪いと思って謝った。それは私の想像を斜め上に超えていた答えで吃驚するほど。
目の前に座ってる本人は嬉しそうに柔らかな笑みを浮かべている。
眉間に皺を寄せて冷たい言葉を言う彼が、今は目元を緩ませて穏やかな表情をしていて…あまりの変様っぷりに拍子抜けしてしまった。
もしこんな表情を知らないひとに見せたら発狂でもするのだろうか。黄色い歓声でも起こりそうなこの表情。きっと第三者視点ならそういう反応でもしていたんだと思う。でも目の前で、そんな表情されるとどういう反応を返せばいいのか分からなくなってしまうもんで。
惚けてる私の思考はぐちゃぐちゃで混乱していることが分かった。
「もう玲花先生は君に伝えたと思うけど、僕は君にある頼み事がしたくて先生から通じて君を此処に来るように頼んだのです」
「え、なんでそれを…」
「もう終わったことだけど、君は此処に行きづらいんじゃないかと思いましてね。それに玲花先生は賢い人だからあえて君に伝えるでしょうしね。現にあなたは気になって此処に来たんじゃないんですか?
僕の頼み事に」
黒縁眼鏡から覗く冷たい瞳が目を細め、口元が不敵に笑う。
見透かされた言葉にぐうの音も出ないが悔しい。
私は謝りに来た、それだけ…ではない。謝るなら別に自分から応接室に向かえばいい事だし、玲花先生も最初の言葉とは随分引き下がった言葉だった。断る権利はあった。他の人に任せることも可能だった。その可能性を打ち破ったのが今の言葉だ。
玄條は私に頼んだんだ。誰でもない、私に。最初はただの口実で謝るだの喧嘩するだのだろうと思っていたが違和感を感じた。――本当にそれだけなのかと。
謝るのに一々先生に伝える必要があるのだろうか。そんな手間の掛かることを玄條はするか?いいやきっとしないはずだ。それなら自分から頼まず、私が自分から来るまで気長に待つだろう。
だから気になった、その頼み事に。そこまでして私を頼む彼に。
そもそも私に拒否権なんてなかったんだ、此処に来てしまったんだから。
此処に来るということは頼み事を受け入れたようなものだ。
あぁ、ダメじゃん私。
良く言うじゃん、『好奇心は猫をも殺す』ってさ
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