22…休日は透明人間によって衰退されました。
休日の癒しはこれ以上にない幸せで。こういう時こそ出かけたり羽を伸ばしたりしたいんだよね。それに自分の部屋って癒しがあるから、有意義に過ごせるんだけど…。
「つまんねェ、次」
こんないい日に限ってフラグが立つのぉおおおおおおおおおおおお!?
学生にとっては当たり前の休日で。でも当たり前じゃなくて。久々に与えられた休日に私は嬉しくて仕方がなかった…最初は。
まぁ。慣れてしまうと当たり前のように思っちゃって駄目なんだけどね。あはは…んでも休日なにしようかなぁ。パソコンでドラマCD試曲しようかなぁ。うはっ!そういえば今話題のCDが公式ホームページでアップロードされてるじゃん!!確か第一弾は爽やか系男子だっけ?あの声が独特っていうか…あ、ヤンデレになったら美味しいかも。
「よっし!今日は聴きまくるぞ!!!」
「ナニ聴きいたらそんな顔なんの?キメェ顔。」
やっぱダミーヘッドよね…あのリップ音とか吐息とかが直で聴いてるような気がして美味しいんだよね。
試曲だから肝心なところで終わっちゃうのがヤだけど、しょうがないよね。試曲だし。
んにしてもさっき罵倒染みた言葉が聞こえたのは気のせいだよね。乙女になに言っちゃってんの空気読めよ、とか思っちゃったじゃん。
「聞こえねェの?ボイスドラマに興奮してるそこの…「あぁもう言わなくて結構です!!!」」
そんなこと言わないでよ!こっちだってニヤけたくてニヤけてんじゃないもの!声優さんと脚本家が悪いのよ!!これは強いられているのよ!
せっかくの休日がフラグに粉々にされる始末。しかも、禁断の休日を知られてしまい穴が入りたい状態。その相手がまさかコイツだとは…。
私しかいない部屋に聞こえる掠れた声。怒ってる私と正反対に喜ぶ彼の声。もう精神科連れていきたい。この子の精神可笑しい…あ、声だけじゃダメじゃん。
「…なんで此処にいるんですか…」
「暇だったから」
「暇なら来ないで下さいよっ!」
声だけしか聞こえないけど真顔で言ってそうだな。
「ふぅん?なるほど…、男の声に癒されたり興奮するためには俺が居ると邪魔だもんなァ」
「え、ちょ…後者違うから!興奮しないからっ!」
「さっきまで嬉しそうに涎垂らしてたキメェ奴に言われたくねェわ」
「だからこれは違うんだってばぁあああああ!!!」
否定すれば否定するほど、悪化していく言葉。否定しないとまたいじられちゃうし、だからといって否定するとだんだん苦しくなる心情。この人のことあんまり否定できないんだよね。正論だし…だが認めん。
「…あ。今日も声だけ?」
「なに?知りてェの?」
「いや…いいや」
ちょっと興味あるけど、コイツのことだからきっとなにかする気だ。パソコンのデータでお気に入りフォルダを見られるのは勘弁してほしいし。
私が一歩下がると彼は黙り込む。いつもケラケラ笑うクセに何故そこは笑わない。え…怖いんですけど。ちょっとホラー映画並に怖くなってきたんだけど。
不安になって腕をさすっていると冷たい感触が脳を刺激した。吃驚して後ろを振り返っても私以外誰も居なくて。それが怖くて。そう思うのと同時に太腿裏側から誰かが触ってるような感覚に陥ってしまう。
その冷たさと感触に身震いすれば声が上ずり、頬に熱が上がっていくのを感じた。
「くくっ…どうだ?透明人間に触られて変な声出してる淫乱女さんよォ?」
「っだ、だれがっ!!変態に言われたくないっつーの!!」
「ノリに乗れねェ奴が悪い。つか、変態とは聞き捨てならねェーな…ヤなら嫌がりゃいいだろ」
「いきなりだったから出来なかったのよ!」
「あっそ。ま、もし下心満載の女だったら屋上に吊るして蝋燭で紐が燃えて切れるまで見届けてやろうと思っただけさ…良かったな」
嬉しそうに言う彼の対処法がえげつい。屋上に吊るすだけならいいけど殺す気かコイツ。しかも紐が切れるまで待たないといけないとか…全力で抜け出すわ。もし燃えきれたらそのまま急落下で命落としちゃうじゃない。危ない、危ない…もしマセおっさんが居たら下心入ってましたよ。よかった死ななくて。あんな残酷な死に方は嫌よ。
「そ、そうなんだ…」
「あー暇だからなんかしてよ」
「え」
そして冒頭に戻るんだけど…ほんと何様なんですか?俺様?そんな人このゲームいたっけ??居ても錬城と同じ扱いされるだけだよ。
というわけで今彼が満足してもらうように頑張ってます。っても、必要最低限の物しかないのでパソコンでドラマなどを見せてるんだけどやっぱ無理でした。いや分かってるんだけどね、こういうタイプこそドラマで泣いちゃったりハマったりしてたら面白いんだけどね!やっぱそう簡単にはいかないね!え?なんで焦ってるか??あはは…だって。
「つまんないことばっかだと…校内中に黒歴史流しちゃうけど、イイのかなァ?」
「ひぃいいいい!!!」
黒歴史が多すぎてどこを流すのか分からないぃいいいいいい!!どこ?もしかして高校生の頃ボイスドラマを聴きながら勉強してたらイヤホンコードが抜かれちゃって危ないセリフがクラス中に聴かれちゃったりした時?それとも…って自分から暴露してどうする!?ほら、また笑ってるし!!!
「ぇあ、その…黒歴史ってどの部分です…カ?」
「どの部分でもイイけど?あぁ。でも…さっきアンタが喘いでたところをスピーカーで編集して長時間流すだけさ…パソコンには映像も、な。嬉しいだろ?」
コイツ爽やかに言ってるけど鬼畜すぎるぞ。
そんなの聴かれたら気付かれなくても公開処刑でしょうが!きっと錬城辺りは特定されそうだなぁ…マセおっさんにも聴かれたら保健室行けなくなるわ。しかもスピーカーがついてるところで流すと思うから寮も入るか。うわぁ…昴君にもかぁ…。コイツが見えないせいか私が一人でナニやらかしてんの状態だよね…。性悪すぎるわ!
「止めてください、お願いしますぅうううううう!」
「ん?もっとやって欲しい??はぁ…アンタって貪欲だな」
「違うわっ!!!」
「そんなにやって欲しいなら、休日パソコンの前でキメェ顔しながら聴いてるアンタの映像をばら撒いてやろうか?」
「それはもう色々誤解が生みそうで怖い!!!」
しかも撮ってたのね!!これじゃあクラスメイトから偏見な目で見られそうだから!!明日から学校にいけなくなるから!
「いや、か?」
「えぇ!嫌ですよっ!」
「止めて欲しいなら、三回まわってワンしろ」
「誰がするかぁぁああああ!」
なんで屈辱的なことをしなくちゃいけないの!?犬扱いですか、そうですか。
だからって人を犬扱いしちゃいけないんですよ、私まだ人間として生きていたいプライドがありますから。尻尾振って喜ぶ犬になりたくありませんから。
「んじゃバラす」
「趣旨変わってませんっ!?」
「そうしねェとつまんねーんだよ。察しろ」
「分かりたくないわよ!!!!」
もう罰ゲームでもなんでもない自己満足じゃん。いや、罰ゲームもそうかもしれないけど。
とりあえずコイツを早く帰らせたいとか思ったら無理やりやらせてくるからもう逃げたい。プライド捨ててやればいいんだけど、これだけは譲りませんっ!まだ私人間ですからぁあああああああああああああああ!!!
どんだけ見たいんだよコイツ。
・
「あ゛ー楽しかった」
満足そうに言う彼に私はツッコミする気力もなく、早く帰ってくれいないかと思うばかりで。
無理やりさせようと脅したり、したらしたらで笑うし罵倒を浴びせるわななんだで…精神的にも肉体的にもつかれたわけで。正直限界だった。とりあえず早く寝たい。このストレスを解消したかった。
「よかった…です、ね」
「あぁ。んじゃ今日はここまでにしといてやるよ――またな」
「は、はい…え?」
声が消えて自由の身になったと思ったら違和感を感じた。
結局、彼はただ私を玩具にして遊んでただけでそれ以外には興味なかったんだろう。…そのことじゃない。もっと別。
え?じゃあどこに違和感があるのさ。だってさっき「今日はここまでにしといてやるよ」って…違う、その次。
「またな」だっけ?…あれ?終わり、なんだよね…今日は。え…?あ、えええええええええええええええええ!?




