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12…ヒトリ目



 「昴君…お願い!ノート見せてくれない!?」




 教室に入ってすぐに部活へ行こうとする昴君に声を掛け、逃げられないように目の前で願う私。

主人公ちゃんのおかげで授業がままならなくてノートが落書きと変化したので、提出日の手前までにはノートを仕上げなければならない。しかし私には攻略対象にしか頭がなく、あまり他の女子との交友関係を持っていない。主人公ちゃんに頼めば良い話なのだがその主人公ちゃんがいなければ意味がない。それに、彼女以外となるとあの錬城はサボり魔にしか見えないので昴君しか頼れる人はいないのだ。

それも有難い事に、私は昴君の『幼馴染』という特権を持っているので彼はきっと断らない筈だ。優しいしね。

そこを踏んで彼に付け込む私はなんて下衆なんだろう。でもしょうがないよね!単位は大事だもん!




「もーしょうがねぇーなぁ…ナギってば。」




 眉を下げて落胆する彼に少し萌えていれば、鞄からノートを数冊私に手渡す。

ペラペラと中身を見れば綺麗な字列が並んでいて、分かりやすいようにまとめている。これは先生も赤ペン先生並みに花丸をつけるものだ。凄いなぁ…私も見習ないと。




「でも…どうして?ナギならノート書き忘れる事なんてなかったのに」




「あははっ…ちょっとね」




冷や汗半分で濁している私は自分でも呆れるほど嘘が付くのが下手だ。特に昴君となると尚更。

なんていうんだろう、真っ直ぐな目で見られると困るんだよね。なんか罪悪感くるし。嘘つくのが馬鹿みたいに思っちゃって。でも昴君は下手な嘘にも騙されるんだけどね。




「ふぅん。そっか…あ、一応プリントの答えも渡しとくな。ナギには必要ないかもしれねぇーけど」




「ありがとう!助かるよ」




 あーなんて優しいんだろう!しかも手際速いし!こーいう子が後輩に欲しいなぁ…まだ新社会人だけど。

 さっさと寮に帰ろうと扉に手を掛ければ、自分の影が暗くなって誰かが後ろに居る事が把握できる。

 視界ギリギリに映りこむ手、薄いバター色の肌で覆いかぶさるように道を塞ぐ彼。顔を上にあげれば、揺れる髪と真っ直ぐな瞳。逃げ出そうと足を動かそうとするも扉を閉められては意味がなくて。目を細める彼にとくんと脈打つ。




「ぁ…」




「ねぇ、ナギ。ナギはさ…独りじゃだめなんだよ」




「え?」




「…がいなきゃ…」




「なに?聞こえな…「なんでもないよ」」




 そう言われた頃には彼に抱きしめられ、ノートが床に散乱するのを茫然と見ていれば昴君の匂いが鼻を擽った。

 昴君の腕の力がまた強くなるとぴったりとくっついてしまい、昴君の息遣いが耳元ではっきりと聞こえてしまう。

 気恥しいと感じれば顔に熱が上がっていて、それに気づいた昴君はくすりと笑った。




「…恥ずかしい?」




「当たり前です!恥ずかしいに決まって…」




 私を玩具(おもちゃ)みたいに遊ぶ昴君に怒ろうと後ろを向くと――本人は悪戯な笑みを浮かばせていた。




「ふぅん?恥ずかしいんだ?」




「なっ!!!」




 なにこのあざとい()は。計ってやったのか、小悪魔だったんですか貴方は。

 ニンマリと笑う昴君にこれ以上悪戯されないように手で顔を覆えば、ぱっと腕を離す。どうやらこれがしたかったみたいで、思わずキュンとした自分に腹が立つ。




騙された。子犬に。




「あははっごめんごめん、遊び過ぎたよ。」




「昴君ってそういう人なんだね、酷い…」




「えぇ!?ごめんね!ほんっとごめん!!だから泣かないで!」




 ちょっとだけ泣く真似をする私に本気にする昴君。…君は天使かなにかか。

 私の嘘に気付くと昴君は、腑に落ちないのか困った顔を見せると、なにか思い出したのか話を変え始めた。




「そういえばナギとアキってどういう仲なの?」




 恐らく昴君の言う「アキ」とは錬城の事だろう。

 やっぱり名前は勝手に改名するんだね。そこが可愛いところなんだけど、「アキ」ってなると可愛く思えちゃうよ喧嘩好きなのにね。




「んーどういう仲って言われてもなぁ…」




 改めて錬城との関係を考えるとなんともいえないとしか言えない。

会って早々名前で呼ばれて、お肉を半分分けてもらえたり…という友達のようなものみたいな関係だ。

といっても私がキュンとしてるだけなんで、錬城が私の事をどう思っているのかはわかないが。




「友達…かなぁ?」




「そっか。友達…ね」




「あ、でも!昴君は違うよ。昴君には色々助けてもらってるし…」




「じゃあさ、ナギにとって…俺は――なに?」




 はっと気付いたときには遅かった。それは自分の首を絞めていることだと。

 でも、ここで言わなければきっと昴君は私を逃がす気など無いのだろう。




「えっと…その…」




だって昴君の目は真剣そのものだから。



















【コメント返し】

>>焚五十鈴様


 ご指導して頂き誠にありがとうございます。

そんなに気に留めてはいませんので大丈夫ですよ。こちらこそ、初心者なのでご指摘して頂けると有難い限りです。


誤字の方はある程度直しましたが…

また誤字があるようであれば、お手数掛けますがもう少し詳しく説明して頂けると嬉しいです。


視点に関しては一人称視点なんですが。個人的に細かい動作、表情を書きたいがために混乱させてしまい申し訳ありません。

(と言っても…読者様に伝わったかどうか分かりかねますが…(汗))

ですが、ここまで読んで感想を送って下さり誠に有難うございます。次回も頑張りますので見て下さい。

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