11…犬猿の仲
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昼前のチャイムが鳴り終えると同時に崩れかける私の体。ため息と共に出て行く疲労感がどうしようもない。あまり身体を動かす事が無かったからか疲れや痛みが襲ってきては痺れる感覚。成長期の高校生達が羨ましいものだ。
次の授業までにはなんとか間に合ったものの、まともに授業が受けいれるはずもなく、かくいう主人公は息一つ乱さないまま授業を受けている姿は目を疑うものだった。
確か校内を一周ぐらいはした筈なんだけど…恐ろしいぞ主人公。
「あ。食堂に行かないと…」
時計を見れば食堂の扉が開く時間だ。寮内には平日以外に昼食があるので、食堂を利用しなければならないのだ。しかし人数の問題で定食の数が決まっていてある程度の人数でしか食べられない。あとはパンやおにぎりなど軽食系なので早めに行かないといけないのである。
特に体力を使い果たした私には軽食は辛い、こういう時はがっつり食べたいものだ。
鉛のように重い体をゆっくりと起き上がらせ、重い足取りで食堂へ向かっていると騒がしい声が聞こえてきた。一体なんだ、と思い返しながら扉を開けば聞き慣れた声が聞こえた。
「だーかーらー!A定食は俺のだから!!!」
少し声が高い少年のような声に目立つ髪色。制服を多少弄っていて、耳元には不釣り合いなピアス――間違いない昴君だ。
あぁ、昴君可愛いよ。おでこ出してくれないかなぁ…ピン留めで額を出すのもいいし、髪留めでぴょんと出る髪もいいなぁ。このくせ毛具合がなんとも言えないんだよね、こういう子に女装させたいと思う私は重症ですか?
昴君は少し怒っているのか耳が赤くなっていてよく見るともう一人存在感が大きい人がいた。その人は赤髪で短髪で切れ目な目元には威厳や威圧があって…ん?あの人って…
「昶…君?」
「あ゛?…鈴攫じゃねェか」
ポケットに手を入れる錬城は少しイラついているのか目が怖く感じてしまうが気のせいだろう。
にしてもこの二人が一緒に居るなんて意外な組み合わせだ。錬城ってあんまり人を寄せ付けないイメージが強いし。というか仲良かったんだ。
「ナギじゃん、どーしたの?」
疲れた顔を見て心配してるのか私の所まで来て顔色を窺う昴君に胸キュンしていると、錬城は頭を掻きながらため息をついていた。昴君に心配させると女子からの痛い視線を受けてしまうので、大丈夫と嘘をつけば少し納得いかないのか眉を顰めているんだけど、その顔が可愛すぎてデコピンしたい。
おでこの痛みをおさえている姿とかイイと思うの。元気っ子って可愛いからイイよね。アホの子も可愛いよ。愛でるべきよ。
「ナギ…本当に大丈夫?」
「大丈夫、問題ないよ」
「う…うん」
爽やかスマイルで昴君に告げればそれ以上食いつかなかった。もしかしてまた聞こえたのかな。
昴君に何があったのか状況を聞き出せば、どうやら学食のA定食を二人で争っていたとか。今日のメニューのA定食は男子が好みそうながっつりメニューで肉丼かチャーハンにピーマンの肉詰めなど肉が多くて野菜が少ない洋食系。逆にB定食は和食系で生姜焼きに梅ご飯や胡麻あえなど健康的なメニューだ。確かにこの二人が争うのも無理はない。昴君は意外だけど。
そして、数少ない定食で昴君と錬城が頼んだところ最後の一つしか来なくて誰のA定食かで揉めている…と。
なにこれ可愛い…じゃなくて!早めに解決させないと周りに迷惑だ。もう掛けてるかもしれないけど。
「俺のA定食だ。チビは黙っておにぎりでも食べてろ」
「はぁ!?チビじゃねぇーし、成長期なんだよ!!」
「昴君つっこむところはそこなの?」
錬城のペースにのまれてるい昴君に鼻で笑う錬城。もうどっちが子供なのか分からなくなってきた。
そうしている間にB定食が減りつつあり、私の生命が危うくなってきた。B定食取ってきてから会話に入ろうかな。いや、もう入ってるから出来ないかな。
「いいから諦めろ、チビ」
「ヤダね!育ち盛りなんだから沢山食べなきゃ駄目なんだよ!!」
「しらねェよ」
「なっ!?」
「昴君」
突っ掛かりそうな彼を呼びとめると、少し気に入らないのかへの字に口を曲げると私を見る。そんな彼に「B定食の生姜焼きを分けてあげる」という提案をしてみると頭を唸らせながら考え始めた。まず、その前にB定食がなきゃ駄目なんだけど…なんとかなるだろう。
「んー…ナギが良いなら別に良いけど…イイの?」
「いいよ。じゃあ私B定食取って来ますから、席だけとっといてね」
「りょーかい!」
そう伝えると嬉しそうに席を取りに行く昴君とA定食を取りながらついてくる錬城。もしかして一緒に食べたいのかな?なんて思いながらB定食を注文してるとまた二人の喧嘩の声が聞こえた。
◆
「はい、昴君」
できたてほやほやのB定食を手渡すと昴君からの笑顔が送られ、思わず鼻を押さえた。そんな私をしってか知らずか真ん中に座らせようとする錬城と昴君に貧血になりながらも座る私。
これこそ逆ハーの得だよね。こんなお得ありませんから。私主人公じゃないですけど。
主人公は新しい友達が出来たみたいで今回はその人たちと食べるらしく嬉しそうに教室を出てった時は天使に見えた。そんな主人公がヤンデレになったりヤンデレに好かれるのは気が引けるが、ヤンデレも可愛いから問題ないよね!
「にしても案外力持ちなんだな、鈴攫って」
意外な目で肉丼を食べる錬城に思わず目を逸らす。
いやー女子力の欠片もない所に突かれるのはちょっとね。学生時代でファミリーレストランでバイトをしていたから余計な力が付いちゃったんですよ。レストランとか自給良い方だし。
苦笑しながら否定すれば昴君は怪しそうに見ている。確かに定食二人前を普通の女子が持つのは嫌だよね。女の子っておしとやかな方が男ウケしそうだし。
「別にいんじゃねェの。スゲーと思うぜ、そういうの」
錬城がテーブルに肘を置きながら言うセリフに振り向けば少し笑ってるように見えて顔が赤くなってしまった。
褒められるのはあまり慣れていないからか、こういう言葉には弱い自分がいて恥ずかしい。お世辞とかそういうのは大丈夫なんだけど…そんな顔で言われたら嬉しいし、恥ずかしい。あぁ、もうなんなのよ。
「あ、ナギ顔があかーい!」
「…うるさい」
赤くなっている頬を指で突いてくる昴君を無視しながら定食に手をつけていれば、空になったお皿にお肉が入って来た。昴君の定食を見れば私があげた生姜焼きを食べていて、昴君じゃないことが分かる。また前を向けばお肉が増えていた。
ふと、左隣を見れば錬城君がどんどんお肉を私のお皿に追加していた張本人で。目が合えばそっぽを向いてお肉が盛ってあるお皿を箸で指した。
「食えよ。」
「え、でも…」
「肉ねぇーんだろ?やる」
そう言って錬城は空になった器を片づけに行ってしまう。どうやら拒否権などないらしい。
少し強引な押し付けに焦りながらも内心私は嬉しかった。現にお腹が減っていたというのもあるし、スタミナが付くものが欲しかったからだ。それを言ったら昴君に失礼だけど。
貰ったお肉を一口、口にすると弾力のある噛みごたえと肉汁に頬が緩んだ。
「おいしい」
もう彼には聞こえない距離かもしれないけど伝わればいいな。
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ヨカッタネ。




