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第41報 8人分の報酬

 白い指が裂け目を広げる。

 空間が頁のようにめくれ、その裏側から人の形をした何かが滑り出てきた。


 全身が、何枚もの白い紙を重ねて作られている。

 顔に当たる部分には、目も鼻も口もない。

 何も描かれていない空白だけがある。


 腕は細長く、指先は膝よりも下まで垂れていた。

 身体の内側から、絶えず頁をめくる音が聞こえてくる。


「大丈夫だ。たぶんな」

「どうかしてる〜」


 白い人型は襲ってこない。

 空白の顔を、こちらへ向けている。


 これが本体なのか。

 それとも、本体がこの場へ差し込んだ一部分なのか。

 そこまではわからない。


 ただ、暗殺者たちの死の記憶に混ざっていた白い指と同じものだった。


「お前が、これをやったのか?」


 返事はない。


 白い人型が長い指を持ち上げる。

 指先が俺の額へ向けられた。


「超絶さん!」

「待て」

「ワン!」

「犬じゃない」


 指先が額へ触れた。


 大量の何かが、頭の中へ流れ込んでくる。


 言葉ではない。


 白い紙。

 そこに書かれた暗殺計画。

 6つの黒い人影。

 剣を持つ女。

 死体を背負う男。


 並べられる8つの役。

 空白のまま残された最後の頁。


 暗殺者が現れる。

 剣士が倒れる。

 死体清掃員が死ぬ。

 剣士が死ぬ。


 最後の頁が埋まる。

 本が閉じられる。


 暗闇の向こうから、大きな拍手が響いた。


「……そういうことか」


 頭痛がする。

 吐き気もある。


 だが、以前とは違う。

 意味のわからない情報に、ただ脳を削られているだけではなかった。


 流れ込んでくる像が何を示しているのか。

 なぜか、少しずつ理解できる。


「え」


 ネムハが目を丸くした。


「超絶さん、未象と会話してるんですか?」

「会話というほど親切なものじゃない。一方的に頭へ流し込まれている」

「いますよね、そういう人。かくいうあたしもそうですけど」

「自覚があるのか」


 この未象は、今回の暗殺計画を見つけた。

 それを、完成していない演目として拾い上げた。


 6人の暗殺者。

 ネムハ。

 俺。


 8人を役者として配置し、書かれていた結末へ至るまで、何度も上演を繰り返した。


 善悪は関係ない。

 誰が苦しむかも。

 誰が死ぬかも関係ない。


 こいつにとっては、役者が配置され、最後まで話が進めばそれでいい。


「暗殺を成功させたかったわけじゃない」

「では、何を?」

「最後まで見せたかっただけだ」


 流れ込んでくるイメージの奥に、広大な暗闇があった。


 何段にも連なる席。

 そこに何かがいる。


 姿は見えない。

 数もわからない。


 ただ、無数の意識だけがこちらへ向けられている。


 あの拍手は、この未象が鳴らしていたものではない。


「観客がいる」

「観客?」

「ああ。こいつは、何かに見せるために俺たちを殺した」


 白い人型が、わずかに首を傾けた。


 肯定なのか。

 訂正なのか。

 それすらわからない。


 見えているものは、この未象の一部にすぎない。

 その向こうにいる観客が何者なのか。

 なぜ、こんなものを見ているのか。


 何ひとつわからなかった。


 白い人型が長い両腕を広げる。


 空中に8つの黒い硬貨が現れた。

 表面には、閉じた幕のような模様が刻まれている。


 硬貨は1つずつ、役者の前へ落ちた。


 俺の前に1つ。

 ネムハの前に1つ。

 精神を保てなくなった男の前にも1つ。


 残る5つは、石床に横たわる死体の前へ置かれた。


「死体にもお給料が出るんですね」

「働いた分は払うらしい」

「意外と優良雇用主」

「職場環境は最悪だがな」


 俺は自分の前の硬貨を拾った。


 冷たくも、温かくもない。

 金属に見えるが、重さがほとんどなかった。


 ネムハも自分の分を拾い、歯で噛もうとする。


「やめろ」

「チョコレートかもしれないですよ」

「得体の知れないものを口に入れるな」

「さっき超絶さんに、得体の知れないものを口へ入れられましたけど」

「あれは薬だ」

「あたしには得体の知れないものでした」

「結果的に治った」

「じゃあ、これも噛めば何か治るかも」

「まず、その考えを直せ」


 そのとき、白い人型が俺へ腕を伸ばした。


 掌の上には、細長い白い札が載っている。

 何も書かれていない。


 紙に見えるが、折れず、破れない。

 指で弾けば、硬質な音がした。


 受け取る前から嫌な予感がする。

 白い人型は腕を引かなかった。


「受け取らないと帰ってくれなさそうですよ」

「押し売りか」


 仕方なく札をつまむ。


 遠くで、拍手が1度だけ鳴った。

 同時に、意味が流れ込んでくる。


 次の演目。

 開かれる配役表。

 並べられる名前。


 その先頭へ、俺の名が置かれた。


「……優先権だ」

「何のですか?」

「こいつが次に何かを始めた時、優先して出演できる」

「し、主演俳優賞?!」

「返したいんだが」

「あたしを差し置いてーッ!」


 ネムハが札を掴もうとすると、白い札が俺の指から離れた。

 掌へ沈み込むように消える。


「返却も譲渡もできなさそうだな」

「く、何があたしと超絶さんを隔てたのか……才能? それとも努力? それとも、あたしの高すぎる戦闘力……?」


 次に、白い人型は暗殺者たちへ向き直った。


 5つの死体。

 頭を抱えたまま震えている1人。


 長い指が、最初の死体の胸へ突き刺さる。


 肉は裂けない。

 血も出ない。


 白い指は抵抗なく身体の中へ沈み、何かを探るように動いた。


 指が引き抜かれる。

 死体の胸の奥で、一瞬だけ黒い文字のようなものが浮かんだ。


「何をしてるんです?」

「待て」


 白い人型は、2人目の死体にも指を入れた。

 3人目。

 4人目。

 5人目。


 最後に、生き残った暗殺者の胸へ指を沈める。


「ひっ……!」


 男が身体を震わせた。

 傷はつかない。


 だが、何かを感じたらしい。


「やめろ……もう、やめてくれ……」


 白い指が抜ける。


 未象がこちらを向く。


 6人の姿が、頭の中へ流れ込んできた。


 配役表に並んだ6つの名。

 その上へ、太い黒線が引かれる。


 次の頁から消える。

 どれだけ役が足りなくても、もう選ばれない。


「ブラックリストのようだな」

「ぷ、大根の烙印……」

「基準がわからんな」


 俺たちも暗殺者たちも、こいつの望む結末を妨げ続けたことに違いはない。

 なぜ暗殺者だけが除外されたのか、その基準はわからない。


 だが、今はこいつの評価基準などどうでもいい。


 こいつは、6人に何かをした。

 おそらく魂魄器官にだ。

 なら、その器官を回収して解析すれば、痕跡を調べられるかもしれない。


 ブラックリストへ載る条件。

 役者として選ばれなくなる仕組み。


 それを再現できれば、この未象に配役されることを防げる可能性がある。


 あるいは、印そのものへ干渉できれば。


「使えるな」

「何がです?」

「こいつらだ」

「悪い顔してますよ、超絶さん」

「いつも通りだ」


 死体が5つ。

 生きた暗殺者が1人。


 持ち帰るべきものが増えた。


 白い人型は、用事を終えたらしい。

 身体を構成していた頁が、端からめくれ始める。


「待て」


 俺は、消えかけた未象を呼び止めた。


「観客は何者だ?」


 返事はない。


 空白の顔がこちらを向く。

 その奥に、一瞬だけ暗い客席が見えた。


 無数の何かが座っている。


 こちらを見ている。


「──ッ!」


 意味不明なイメージが、高速で頭を貫く。

 凄まじい悪寒が走る。

 全身が一瞬で、脂汗にまみれた。


「超絶さん!」

「……問題ない」


 次の瞬間、白い人型は何枚もの紙へほどけた。

 紙は床へ落ちる前に消える。


 壁を覆っていた白い面も閉じ、元の石壁へ戻った。

 紙をめくる音が止まる。


 通路に静寂が戻った。


「帰りました?」

「ああ」

「意外と話のわかる未象でしたね」

「ああ。この場ではな」

「含みのある言い方~」

「たとえば『全人類の抹殺計画』が筋書きに採用されてみろ」

「そのときはあたしに〈賢者の丸薬〉の優先権ください」

「考えておく」


 俺は掌を見る。


 優先権と呼ばれた白い札は見えない。

 だが、身体のどこかに残っている感覚がある。


 足元には8つの報酬。

 5人の死体と、生き残った1人。未象が刻んだブラックリストの痕跡。


 あの未象は何なのか。

 〈観客〉とは何なのか。


 わからないことだらけだ。


 だが、それを解き明かすのは俺の仕事じゃない。


「さて」


 俺は解体用の道具を取り出した。


「仕事の時間だ」


 俺は最初の暗殺者の胸元へ膝をついた。


***


【未象003《劇作家》観察記録】


■ 危険区分

未象/知性型危険存在

監視指定対象:第1種


■ 概要

 既存の計画または進行中の出来事を「演目」として取り込み、関係者を「役者」として配役する知性型未象。


 上演開始時には周囲を覆う暗幕のようなものが現れ、発生源不明の拍手のような音が響く。


 演目には所定の結末が設定されており、そこへ到達できなくなった場合、一部の役者および装備を消失・再配置して上演を繰り返す。再配置されない役者には、記憶、負傷、疲労および物品消費が蓄積する。


 現時点で、演目を停止させる方法は所定の結末へ到達し、「終幕」を迎えること以外に確認されていない。しかし、要求される結末は役者へ提示されず、その内容を上演中の状況から推定しなければならない。


 演目が及ぶ空間的・人的範囲も不明であり、領域からの離脱、役者の排除、拘束、交代または外部からの介入によって上演を中断できる保証はない。要求される結末には、役者の死亡その他の重大な被害が含まれる可能性がある。


 終幕条件を特定できないまま再演が続けば、再配置されない役者のみが一方的に消耗するため、極めて危険性が高い。


 終幕後には紙製の人型として顕現し、役者への報酬、次回作への優先配役、今後の配役からの除外処置等を行うことがある。


 配役除外処置を受けた者は、本未象への現時点で唯一確認された対抗手段につながる可能性があるため、肉体、魂魄、記憶および未象への反応を最優先で調査すること。


■ 最重要観測事項

・上演開始時に、暗幕のようなものと拍手のような音が発生する

・既存の計画または出来事を筋書きとして利用する

・関係者を本人の意思にかかわらず役者として配役する

・演目ごとに所定の結末が存在するが、終幕条件は役者へ提示されない

・現時点で、演目を停止させる方法は「終幕」以外に確認されていない

・所定の結末へ到達できなくなると、一部の役者と装備が再配置される

・再配置されない役者には記憶、負傷、疲労および物品消費が蓄積する

・再配置された役者は、以前の上演を通常の記憶として想起できない

・上演中に経験した死亡、苦痛、恐怖等は蓄積され、終幕後に復元される場合がある

・演目が及ぶ空間的・人的範囲は不明

・要求される結末には死亡その他の重大な被害が含まれる可能性がある

・終幕時の生死にかかわらず、配役された者へ報酬が付与された

・特定の役者に、次回作への「優先権」が付与された

・一部の役者に、今後の配役から除外する処置が施された

・演目を鑑賞する正体不明の「観客」が存在する可能性が高い

・配役除外処置を受けた者の調査を最優先とする


————————————


第一条:演目の成立

 ・本未象は、人間によって作られた計画、役割および予定された結果を、一つの演目として認識する。

 ・計画だけでなく、既に進行している出来事を途中から演目として取り込む可能性もある。

 ・本未象が筋書きを自ら作成するか、既存のものだけを利用するかは不明。

 ・演目として成立するために必要な具体性、規模、関係者数および期間は不明。

 ・演目の内容が必ず敵対、殺害または戦闘を伴うとは限らない。


第二条:配役

 ・筋書きに関係する人物は、本人の同意なく役者として選定される。

 ・確認例では8名が配役された。

 ・本未象は対象を個人としてではなく、筋書き上の役割として認識している可能性がある。

 ・役者として選定される条件、範囲および距離は不明。

 ・配役後の離脱、代役、役割変更および途中参加の可否は不明。

 ・終幕時に死亡していた役者にも報酬が付与されたが、死亡者を新たに配役できるかは未確認。


第三条:暗幕および音響

 ・上演開始時、周囲を覆う暗幕のようなものが出現した。

 ・暗幕は通常の布ではなく、空間または認識へ作用する現象である可能性がある。

 ・暗幕の出現と同時期に、発生源不明の拍手のような音が確認された。

 ・暗幕および拍手のような音は、本未象による上演開始を示す主要な兆候と考えられる。

 ・終幕後に出現した顕現体からは、頁をめくる音が継続して発生した。

 ・これらの現象がすべての演目で発生するかは不明。


第四条:再演

 ・所定の結末へ到達できなくなった場合、本未象は「失敗」と宣言する。

 ・失敗後、演目の継続に必要と判断された役者および装備が消失し、再び出現する。

 ・確認例では、再配置される役者と再配置されない役者が存在した。

 ・再配置されない役者には、以前の上演における記憶、負傷、疲労および物品消費が残った。

 ・再配置された役者は、各上演を初回の出来事として認識していた。

 ・再配置される対象の選定基準は不明。

 ・再演回数の上限は確認されていない。


第五条:失敗および終幕判定

 ・演目が所定の結末へ到達できなくなった場合、「失敗」が宣言される。

 ・一部の役者が死亡または行動不能となっても、演目を継続できる場合は直ちに失敗と判定されない。

 ・本未象が結末へ到達可能と判断している間は、筋書きから逸脱した状態でも演目が継続する場合がある。

 ・所定の結末へ到達すると「終幕」が宣言され、再演は停止する。

 ・終幕条件は役者へ提示されず、上演開始前の計画、各人の役割、再演時の変化および失敗判定から推定する必要がある。

 ・確認例では、終幕後に役者の状態が変化しても、終幕判定は取り消されなかった。

 ・演目ごとに要求される結末は異なる可能性が高い。

 ・所定の結末には死亡その他の重大な被害が含まれる可能性があるため、その成立を標準的な対処法として採用してはならない。


第六条:作用範囲

 ・演目が及ぶ空間的範囲は確認できていない。

 ・暗幕に覆われた範囲と、演目の作用範囲が一致するかは不明。

 ・演目開始時にその場にいなかった人物が、後から役者または関係者として取り込まれるかは不明。

 ・領域外への離脱、転移、通信および外部からの介入が可能かは未確認。

 ・演目に直接参加していない者、物品および周辺環境が再演の影響を受ける可能性も否定できない。

 ・作用範囲が判明するまでは、周辺一帯を封鎖対象として扱うこと。


第七条:記憶への影響

 ・再配置された役者は、以前の上演を通常の記憶として想起できなかった。

 ・一方、過去の上演で経験した死亡、苦痛、恐怖および消失感覚は、認識できない状態で蓄積していた可能性がある。

 ・終幕後、生存していた役者1名に、過去の上演における死亡経験が一斉に流入した。

 ・対象者は複数回分の死を自身の体験として受け取り、正常な現実認識と意思疎通能力を失った。

 ・同様の症状が確認された場合、対象者を拘束し、刺激を避けた状態で保護および経過観察すること。

 ・蓄積された経験が終幕以外の条件で復元される可能性も否定できない。


第八条:顕現体

 ・終幕後、複数の白紙を重ねたような人型存在が出現した。

 ・顔面には目、鼻、口がなく、全面が空白だった。

 ・腕および指は異常に長く、物質を損傷させずに肉体または魂魄へ接触した。

 ・身体内部から頁をめくる音が発生していた。

 ・当該存在が本体、分身体、端末または終幕後のみ出現する機構であるかは不明。

 ・確認時には直接的な攻撃行動を行わなかったが、安全性は保証されない。


第九条:意思疎通

 ・本未象は通常の言語による会話を行わない。

 ・「失敗」および「終幕」のみ、役者または周囲の空間を介して音声として伝達する。

 ・顕現体は対象者の額へ接触し、映像、概念および感覚を直接流入させた。

 ・接触者は、配役、演目の目的、報酬および処置の意味を部分的に理解した。

 ・接触時には頭痛、吐き気、悪寒および精神的負荷が発生する。

 ・受信した情報の理解度には、個人差または接触回数による変化がある可能性がある。

 ・本未象が伝える情報が正確かつ完全である保証はない。


第十条:観客

 ・本未象は、完成した演目を何者かに見せるために活動している可能性が高い。

 ・終幕時に確認された拍手のような音は、顕現体とは別の存在によるものと推定される。

 ・意思疎通時には、暗幕の向こうに広がる客席と、そこから演目を見ている複数の意識が示された。

 ・観客の姿、数、所在、性質および本未象との関係は不明。

 ・観客に関する情報を要求した際、接触者へ解釈不能な情報が流入し、強い恐怖反応と身体症状が発生した。

 ・現段階では、観客への呼びかけ、観測、追跡および接触を禁止する。


第十一条:報酬

 ・終幕後、配役された者全員に黒色の硬貨状物体が1個ずつ付与された。

 ・終幕時に死亡していた役者にも、同様の報酬が置かれた。

 ・本未象は、終幕時の生死または役割にかかわらず、演目へ参加した者に報酬を付与する可能性がある。

 ・硬貨の表面には、閉じた暗幕に類似する模様が刻まれている。

 ・材質、機能、価値および使用方法は不明。

 ・飲用、装着、破壊、魔力注入その他の刺激試験は禁止し、封印状態で保管すること。


第十二条:優先権

 ・特定の役者1名に、通常報酬とは別に白色の札状物体が付与された。

 ・伝達された概念に基づき、当該効果を「優先権」と仮称する。

 ・優先権の所持者は、本未象の次回の演目へ優先的に配役される可能性が高い。

 ・札は受領直後に所持者の体内へ吸収され、外見上は消失した。

 ・返却、廃棄、譲渡、解除および摘出方法は不明。

 ・効果の範囲、持続期間および発動条件は不明。

 ・所持者は本未象の再出現を早期に把握するための観察対象とする。


第十三条:配役除外処置

 ・終幕後、本未象は一部の役者の胸部へ指を挿入した。

 ・肉体的な損傷および出血は発生しなかった。

 ・処置後、対象者の名が配役表から抹消され、以後の演目へ選ばれないことを示すイメージが伝達された。

 ・本処置を「配役除外」または「ブラックリスト」と仮称する。

 ・死亡者と生存者の双方へ同一の処置が行われたため、魂魄へ作用した可能性がある。

 ・処置対象の選定基準は不明。

 ・処置が実際に次回以降の配役を防止するかは未確認。

 ・配役除外処置を受けた者について、肉体、魂魄、記憶および本未象への反応を最優先で調査すること。

 ・死亡した対象者から回収された魂魄器官と、生存対象者の魂魄状態を比較し、共通する変化を特定すること。

 ・処置の再現または転用が可能になれば、本未象による配役を回避する手段につながる可能性がある。

 ・処置の再現、転写、解除および改変の可否は未確認。


第十四条:対処方針

 ・暗幕のようなものおよび拍手のような音を確認した場合、本未象による上演が開始された可能性を想定し、直ちに未象対策部門へ報告すること。

 ・上演開始前に存在した計画、進行中だった出来事、関係者、各人の役割および想定されていた結果を速やかに記録すること。

 ・本未象は既存の計画または出来事を筋書きとして利用するため、上演開始前の状況が終幕条件を推定する主要な手掛かりとなる。

 ・現時点で、所定の結末へ到達する以外に演目を停止させる方法は確認されていない。

 ・終幕条件は提示されず、死亡その他の重大な被害を要求される可能性があるため、推測のみで結末を成立させてはならない。

 ・役者の拘束、排除、説得、交代、領域からの離脱または外部からの介入によって上演を停止できるかは不明。

 ・演目の作用範囲が不明であるため、暗幕が確認された場所とその周辺を封鎖し、無関係な者を近づけないこと。

 ・再演が発生した場合、再配置される対象と再配置されない対象を特定し、負傷、疲労、記憶および物品消費の変化を記録すること。

 ・再配置されない役者には損耗が蓄積する可能性が高いため、根拠のない試行を反復してはならない。

 ・顕現体へ不用意に接触せず、意思疎通を試みる場合は、精神防護、拘束要員および記録要員を配置すること。

 ・観客に関する呼びかけ、質問、観測および追跡は禁止する。

 ・黒色硬貨、優先権および配役除外処置は、相互に異なる機能を持つものとして個別に管理すること。

 ・配役除外処置の作用が確認されるまでは、本未象に対する確立した予防・回避手段は存在しないものとして扱うこと。

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