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神様のギフト、配ってます(ただし返品不可)  作者: 成瀬りん
外伝2章 これからの物語
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――そして、1年後

 ――アリアたちがオルビスを倒してから、1年が経った。

 世界中で、大きな変化はまだ見られないが――それでもどこか、以前よりも小さな問題は起きているような。


 ……ガルドは滞在先の村の宿屋で、窓の外を見ながら考えていた。

 そんな彼を見て、大聖堂に所属することになった、聖女のフィオナが声を掛ける。


「何か、気になることでもあるの?」

「……いえ。

 気配がおかしい……といいますか、どうにも静かすぎて」


 フィオナも外を見ようとするが、ガルドの太い腕によって阻止された。

 彼らは今、大聖堂の仕事として――

 元々住んでいた森の、近くの村にやって来ているのだ。


 フィオナはガルドに、身体強化の魔法を掛けた。

 ガルドはそれを確認してから、廊下に待機している神職者に声を――

 ……掛けようとしたが、誰もいなかった。

 2階から1階に下りて、宿屋の従業員を探すも……同様に、誰もいなかった。


「誰もいない……? みんな、どうしたのかしら」

「いよいよもって、怪しいですね。

 この宿屋自体、何か仕掛けられているのかもしれません」

「……はぁ。今日はゆっくり休めると思ったのに、残念ね」


 フィオナはそう言うと、ガルドに軽くウィンクをした。


「状況を確認して、もし危険があるようでしたら……移動しましょう」

「ええ。それではガルド、護衛をお願いね」

「承知しました」


 ガルドとフィオナは、荷物をまとめてから宿屋を出ることにした。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 宿屋を出ると、ふたりは既に――30人ほどから包囲されていた。

 もう少し時間が遅ければ、宿屋の中に雪崩れ込まれていたかもしれない。


「お前たちは……何者だ?」


 ガルドの言葉に、首謀者らしき老人が挨拶をする。


「聖女殿、久し振りですな。我はヴェルガ真教、司祭長のオスクロと申す者」

「あ……。四戒司祭の内のひとり……の?」


 ガルドは、老人の名前に聞き覚えがあった。

 かつて、フィオナを誘拐したヴェルガ教――多元主義派の、幹部のひとり。

 レイラが大金星を上げて倒していたはずだが、その残党として生き延びて――

 ……そして新たな信仰を立ち上げた、というところだろうか。


「フィオナ様に近寄るな!

 宿屋に手をまわしたのは……お前たちの仕業か?」

「おう、おう。そうとも。

 今まさに、我らは聖女殿の力が必要なのだ。一緒に来て頂いてもよろしいかな?」

「私はもう、生命を与える異能は持っていませんよ?」

「残念なことではあるが、それは既に調査済みでな。

 しかし今は、『大聖堂の聖女』という肩書きに用事があるのだ」


 オスクロが右腕を上げると、オスクロの配下たちは包囲網を狭め始めた。

 その動きに対して、ガルドは異能――『狂戦士化』を使い、自身の身体を肥大化させる。

 しかしそんなガルドの腕を、突然現れた闇の鞭が絡みついた。


「……ぐぉッ!?」

「ファファファ。お主の勇猛は聞き及んでおるよ。

 ゆえに、我が相手を務めよう。ほれ、手が空いている者は聖女殿を捕まえるが良い」

「「「はっ!」」」


 オスクロの配下が襲ってくるが、ガルドは闇の鞭に掴まれながら――

 ……少しずつ、彼らを殴り倒していく。

 ガルドの攻撃は凄まじく、少しでも掠れば、大きなダメージを与えることができるのだ。


「ふむ、ふむ。お主も欲しいのう。

 しかし、言うことは聞きそうに無い――いや、聖女殿を確保すれば大丈夫か?」

「ほざけ!!」


 しかし、ガルドは闇の鞭によって押さえつけられ、オスクロの配下たちはフィオナの方に向かっていく。

 オスクロの攻撃を何とか捌きながら、ガルドがフィオナの方を見てみると――


「――ぎゃっ!?」


 敵のひとりが、フィオナによって綺麗に投げ飛ばされていた。


「ふふっ。アリアさん直伝の投げ技――ですよ♪」

「フィオナ様、お逃げください!!」

「そうは言うけど……これでは、ね」


 包囲網を突破するにも隙間が無く、戦うにしても敵の数は20人を超える。

 こんな人数、フィオナひとりで倒せるわけがない。


 ――ガルドは自分の右腕を見た。

 闇の鞭が絡まっているが、無理をすればフィオナを守れるかもしれない。

 既に深く食い込んでいる部分があるため、深手は負ってしまうだろうが……フィオナを失うわけにはいかない。

 かつて、右腕を犠牲に困難に立ち向かっていた少女だっていたのだ。

 それなら、自分だって――


「ダメですよー。その傷、危険でーす」


 不意に、上の方から聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 慌てて顔を上げてみると、宿屋の屋根の上に――見覚えのある姿を見つけた。


「アリアさん!?」

「ガルドさん、お久し振りです。

 オリバー様から依頼を受けて、飛んできましたよー」


 アリアは飴玉を出して、それを右手の親指で――オスクロに撃ち放った。


「ぐおっ!?」

「指弾か!? そんなこともできるのか――

 いや、それよりもフィオナ様!?」


 ガルドがフィオナの方を振り向くと、そこではザインが交戦中だった。


「へっへっへっ!

 旦那は大人しく、怪我の治療でもしてな!」

「おぉ、ザインまで……。すまん!」


 しかし、フィオナはザインの後ろで守られている。

 怪我の治療をするとは言っても――

 ……そう思った矢先、アリアがどこからともなく、薬瓶を出してきた。


「ガルドさんには昔、治癒薬を承諾する前に使われたことがありますからね。

 ふふふ、あのときのお返しです。いきますよー」

「いや、あのときは――ぐおおおおぉっ!!!!?」


 アリアは治癒薬を、どばっと掛けた。

 痛みは一気にくるが、治りが一番早い方法でもある。

 そんなふたりを前に、オスクロは額を押さえながら、よろよろと立ち上がった。


「すまない、アリアさん。

 オレとあいつでは相性が悪いらしい。手伝ってもらえないか?」

「良いですよ――と言いたいところですが、あたしはパスですね。

 まぁまぁ、あたしたちは向こうの手伝いをしていましょう」

「え? いや、そうするとあいつはどうするんだ……?」


 ガルドが混乱する中、オスクロとの間に割って入ったのは――メルヴィナだった。


「ここは私に任せて」

「お嬢さん!?」


 メルヴィナは真っすぐにオスクロを見据えた。

 そしてオスクロもまた、メルヴィナを見据えていた。


「ほう……久しいな、光使い。

 どうだね、あれから何か学べたかな?」

「ええ。あれから色々なことがあったわ。

 ……たくさんのことを、見てきた」

「くくくっ。ならばその成長、見させてもらおうッ!!」


 オスクロは地面の広範囲に、禍々しい闇の領域を広げた。

 そして地面から無数の闇のツタを生み出し、メルヴィナに向けて撃ち放つ――

 ……が、メルヴィナは彼女の異能でそれらを打ち消す。

 さらに、オスクロがその光を、彼の闇で打ち消していく。


「おう、おう!

 以前より、ずいぶんマシになったのう!!」


 オスクロは歳に似合わないステップを踏み、メルヴィナとの距離を詰めていく。

 そしてそのまま、野獣のような――闇の巨大な爪を作り出し、メルヴィナの足元から斬撃を繰り出した。

 メルヴィナは一歩だけ下がり、斬撃を避けた直後――オスクロとの距離を詰めて、彼の腹に膝蹴りを入れる。


「――ぐほっ!?」

「なんと! お嬢さん、あんな体術まで……!?」

「あのお爺さんに会ったら、絶対に膝蹴りをやり返す……って言って、聞かなかったんですよ。

 だから、あの技だけ教えておいたんですけど――」

「な、なるほど……。あれはアリアさんの仕込みか……」

「ガルドさんの可愛いメルちゃんに、変なことを教えてゴメンなさいね♪」

「いや……。一緒に旅に出た時点で……こうなるとは、まぁ」


 そんな話をしていると、フィオナがふたりの元にやってきた。

 オスクロの配下は全員が倒されていて、ザインが紐で縛ってまわっている。

 よくよく見ると、もうひとり――レイラも、紐で縛るのを手伝っていた。


「……おお、レイラまでいるのか?」

「あら、ガルドは見ていなかったの?

 レイラさん、相手の攻撃を素早く避けて……頭に一発ずつ、綺麗に攻撃を入れていたわよ?」

「あはは。最近は回避型魔法使いとして――

 冒険者ギルドでも、有名になってきましたからね」

「それも、アリアさんの仕込みか……」

「いえいえ。本人の努力ですよー」


 3人が話す中、メルヴィナとオスクロの戦いは続いていた。

 地面には闇の領域が広がっているため、簡単には近寄れないが――

 ……それ以前に、誰も近付こうとはしていなかった。


 メルヴィナの迫力――本気で再会を待ち望んでいた。

 そんな気持ちが、ひしひしと伝わってくる。


「――強くなったな。しかし、それは戦いの技術だけか?

 我は未だ、闇の世界を求めておる。お主はその光の向け先を……見つけることは出来たのか?」

「私は――」


 オスクロの問いに、メルヴィナは少しだけ距離を取った。


「――光も闇も。正義も悪も関係ない。

 自分の信じるものを照らして、それを道標として示すだけ」

「ファファファ!!

 それが答えか!? 大義などないのう!?」


 オスクロが大きく吠えた。

 しかしメルヴィナは、ゆっくりと人差し指を――オスクロの左腕に向ける。


「大義があれば良いってものじゃない。他人を巻き込めば良いってものじゃない。

 私は、少しだけのしあわせがあれば――それだけで良いのよ」

「ふん……。

 お主のような小娘には、その程度が精々――」


 その言葉の途中、オスクロの左腕に突然、光の剣が突き立った。

 そして続けて、右腕にも撃ち込まれる。


「――ぐおぉッ!?」


 オスクロの周りにあった闇の力が、全て消えていく……。

 メルヴィナの光の異能が、オスクロの闇を消し去ったのだ。


「……アリアさん。これは……?」

「メルちゃんの異能、『光の饗宴』――

 ……頑張りましたからね。次の段階に進んで、強くなったんですよ」


 アリアはガルドにそう言ってから、メルヴィナの元に歩いていった。

 オスクロが動けない中、メルヴィナは……ぼろぼろに泣いてしまっている。


「アリアさん、私……、私……っ」

「うん、よくやったね。それじゃ――……これ」


 アリアはメルヴィナを撫でながら、そっと優しく……1本の杖を手渡した。


「え? ……これは?」

「――気絶させるまでが、戦いでしょ?」


 にっこりと微笑むアリアの言葉に、いち早く反応したのはオスクロだった。


「ちょ……待て、待つんだッ!! 気絶はさせんでいい! このまま、我の負けでいいからッ!!

 昔のような、稚拙な攻撃はするんじゃないッ!!」

「……だってさ? どうする?」

「どうしましょう……?」

「ぜ、全部話すから!! もう何も企まんからッ!!

 老人は労わるもんじゃぞ!?」


 オスクロの言葉に、メルヴィナは――

 ……アリアのノリを参考に、とりあえず杖を素振りしていた。

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