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神様のギフト、配ってます(ただし返品不可)  作者: 成瀬りん
外伝2章 これからの物語
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アリアちゃんと愉快な仲間たち

 フィオナの誘拐を画策したヴェルガ真教は、全員が近くの街に連行されていった。

 大聖堂と内通していた者もいたため、オルビス教からの事情聴取も行われるのだという。


 一連の問題を解決したアリアたちは、かつてガルドとフィオナが住んでいた――

 森にある丸太小屋を、久し振りに訪れていた。


「うふふ。ここに来るのも、久し振りね」

「はい、本当に。

 空けていたのは1年ほどですが、懐かしく感じます」


 フィオナとガルドが、しみじみと言った。

 倉庫の下に隠していた鍵を取り出し、入り口の扉を開けると……少しだけ、埃っぽい空気が流れてくる。


「あたしも懐かしいですね。

 あのときは本当に、いろいろありましたし――」

「本当ですね! アリア様、大活躍でしたもんね!」


 腕に抱き着いてくるレイラの頭を、アリアはいつものように撫でて返す。


「レイラだって、大活躍だったからね。

 まだ頼りなかった頃だけど……ああもう、こんなに成長しちゃって!」

「えへへへへー♪」


 ふたりのやり取りを見たガルドは、おそるおそるザインに尋ねる。


「おい……?

 あのふたりって、あんなに仲が良かったか……?」

「うん? オルビスを倒したあと、冒険者ギルドで出くわしてからは――あんな調子だな」

「ほう……。一体、何があったんだ?」

「……さぁて、ね」


 ザインはアリアとずっと一緒だったが、レイラのことは特に何も聞いていなかった。

 冒険者ギルドで再会したあと、アリアとレイラがふたりで話をしていて――

 ……抱き着いていったのは、アリアから。


『……レイラって、誰……だったんだろう……?』


 ――アリアが死に瀕して、口にした言葉。

 あのふたりに共通する『前世』というものが存在するのであれば――

 きっとその答えが、共有できたということなのだろう。


「ふむ……。レイラとは辛い別れになっていたからな。

 仲良くできているなら、素晴らしいことだ」


 ガルドはそう言いながら、扉の辺りを少し片付けたあと――

 フィオナに呼ばれて、丸太小屋の中に入っていった。

 

 ザインが庭のテーブルに目を移すと、アリアを中心に、メルヴィナとレイラの3人で話をしている。

 メルヴィナも、オルビスを倒した直後は大変だったが……今では以前のように、明るくなってくれた。

 さらに今回、ずっと心に棘が刺さっていた相手――闇使いのオスクロとも、因縁を清算できたのだ。


 ……そろそろ、過去には囚われずに生きていけるのではないか。

 そう思うと、ザインの肩の荷も少しだけ……軽くなったような気がした。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 ――問題が全て解決して、丸太小屋まで帰ってきた……となれば、夜は宴になるのが当然だ。

 既に食材や酒は購入済みで、アリアの帽子で持ち込んでいる。

 アリアとメルヴィナは台所に向かい、残りの4人は外でバーベキューの準備を進めていた。


「ガルドさん、火は点けますかー?」

「まだ大丈夫だ。やることがなければ、少し休んでても良いぞ?」

「いえ! アリア様から、準備をするように言われてるので!」

「お、おう……。

 ああ、そうだ。魔力に余裕があったら、こいつに火の魔法を入れてくれないか?」


 ガルドはポケットから、小さな黒い石を取り出した。

 最近ダンジョンから出るようになった『魔石』というもので、魔法を介して簡単な力を付与できるのだ。

 例えば火の魔法を使うと、簡単な防寒グッズになる……という具合だ。


「はい、承知です! ガルドさんも、こういうのを持っているんですね?」

「ああ、いざというときのためにな。大聖堂からの支給品ではあるんだが……」

「冒険者の間でも広まってるんですよ。

 飲み物を冷やすために、氷の魔法が特に人気で~」

「なるほど……。それも良い使い方だな」

「ただ、私は氷の魔法は使えないので……。今回はご要望通り、火の力を入れちゃいますね!」


 手際よく魔法を使うレイラを、ガルドは微笑ましく見つめていた。

 そして、それとは違うことに思いを馳せる。


 ――魔石が見つかったのは、オルビスが倒されたあとだ。

 つまりこれは、それまでオルビスが世界に広めなかった力……ということになる。


 今は些細な使い道しかないようだが、今後は――

 ……アリアが技術を駆使してオルビスを倒したように、誰かが他の使い道を探していくかもしれない。

 少しずつ、世界が変わっていく実感がある。


 それは果たして、良いことなのか、悪いことなのか……。

 ただ、それも結局は人間の選択だ。ひとりふたりではなく、人間全体の選択。

 選択するという行為を、神から取り返した……人間の選択――


「……ガルドさん?

 真面目な顔して、どうしたんですか?」

「あ、ああ。すまない、少しぼーっとしてたな」


 ガルドはレイラから魔石を受け取った。

 冷たかったその塊は、ほんのりと優しい温かさに包まれていた。


 一方、その頃……ザインはフィオナと話していた。


「アリアさんとは、お付き合いしているんですか?」

「ぶふぉっ!?」


 ザインが噴き出すと、少し離れた場所のガルドとレイラが視線を送ってきた。

 何でもないことをジェスチャーで伝えて、改めてフィオナに向き直る。


「……俺とアリアは、そういう関係ではないですよ?」

「ヘタレですね♪」

「ぶふぉっ!?」

「……ああ、失礼しました。

 最近の大聖堂は、言葉の乱れが横行しておりまして」

「は、はぁ……。

 そういうフィオナさんは、大聖堂の方はどうですか?」

「いろいろありますよ? 今回も、そのひとつでしたし……」


 ――確かに今回、フィオナは誘拐されそうになっていた。

 オルビス教の内部にも内通者がいたため、これからは大聖堂だからといって安心はできない――


「……大変そう、ですね」

「まったくですね。ガルドがいるから何とかなっていますが……。

 でも、一生このままではいけないと思っているんです」

「と、言うと?」

「メルヴィナさんも待っているでしょうし、ガルドのことも解放してあげないとな……って♪」

「いやいや。あのふたりは……恋愛関係にはならないような?」


 そう言うザインに、フィオナは冷たく笑う――素振りを見せる。


「そんなことを言って、タイミングを逃しても……知りませんよ?」

「だから、俺とアリアは違いますよ!?」

「はい、はい♪ まぁ、それは置いておいて――

 より良く大聖堂を動かせるのは、やはりオリバーさんだと思うんです。

 主教になるつもりがあるなら、私もお力添えをするのですが……」

「そうなればきっと、アリアも手伝うと思いますよ。

 ああ見えて、すごく恩を感じていますから」

「それなら、もっとちゃんと連絡をすれば良いのに。

 オリバーさん、アリアさんが連絡を寄越さないって……いつもぼやいてますよ?」

「ははは……。

 ちょくちょく、そうは言ってるんですけどね……」


 アリアは引き続き、特務裁定官という立場で外回りを続けているものの……大聖堂への連絡は、できるだけサボっていた。

 ザインから注意しても逃げられるだけなので、ほどほどにせざるを得ないのだが……。


 ……そうこうしていると、台所からアリアとメルヴィナが戻ってきた。


「野菜の準備ができましたよー♪」

「お、そろそろだな。レイラ、火の用意を頼む」

「はい!」


 そんなふたりを見ながら、メルヴィナが少し笑う。


「ふふっ。あのふたり、親子みたいですね」

「うーん、そうか? どちらかというと……犬じゃない?」

「まぁ……レイラさんは、アリアさんの後ろを付いて歩きますからね。

 そう言われると、そうにしか見えなくなる……かも?」


 ザインと話すメルヴィナの元に、アリアがやってくる。

 そしてメルヴィナの持っていたトレーを受け取りながら、生温かい目で――


「あのふたりが親子だっていうなら、こっちのふたりは彼氏彼女かな~?」

「いやです」


 アリアの言葉に、メルヴィナは即答した。


「……おう。

 その気が無くても、このスピード感は俺の心を傷つける……」

「あはは。メルちゃんが好きなのは、ガルドさんだからねー」

「え、やっぱりそうなの!?」

「何でそうなるんですかッ!!」


 メルヴィナは怒りながら、丸太小屋の中に戻っていってしまった。

 しかし、すぐに次の食材を持って出てきた。

 怒っていても仕事をする……メルヴィナは真面目な人間なのだ。


 その後、フィオナから乾杯の音頭があり――

 そのまま全員で、肉を焼き、野菜を焼き、謎の食材を焼いていく。



 ――夜空の下で、宴は続いていった。

 アリアが少し離れたところで酔いを覚ましていると、フィオナがそこへやってきた。


「アリアさんとお話をしたくても、なかなか空かないんですよね♪」

「あ、すいません……!」


 アリアは少し慌てるが、フィオナは優しい微笑みを向ける。

 そしてそのまま、視線は他の4人の元へ――

 ……しばらくすると、フィオナが口を開いた。


「この1年間で、少しずつですが……いろいろと変わっている気がします。

 楽しくもあり、不安もあり……って感じですね」

「そうですね。

 でもそれが、自分たちで選択をしていく……ってことだと思いますよ」

「――オルビスという神は、何で人間から、その選択肢を奪ったのでしょう……?」


 フィオナはこの1年、ずっと気になっていたことを……アリアに聞いてみた。

 アリアなら知っているはず……だからずっと、次に会ったら聞こうとしていたのだ。


「オルビスは、『完全』を求めていましたから。

 だからその対になる『不完全』を、人間の世界に見ていただけですよ」

「……そこに、愛はあったのでしょうか?」


 アリアは少しだけ、考えた。

 機械に感情は無い……それが、アリアの持論ではあった。

 しかし――


「……あのとき、メルちゃんを殺さなかった。

 もしかしたら、オルビスにも……愛は、あったのかもしれませんね」


 ただ、それは別の理由だったのかもしれない。

 今となっては、アリアには分かるはずも無い。


「……ふぅ。私も、神というものを見たかったです。

 その辺り、今から詳しくお話をして頂けますか?」

「あはは、良いですよ。でも――」

「……ちゃんと全員、布団に移動させてから……ですね♪」

「面倒くさいですが、そうしますか……」


 アリアとフィオナは、舟を漕ぐ4人を改めて眺めて――小さく、溜息をついた。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 数日後、6人は大聖堂に向かうことになった。

 フィオナとガルドはそもそもの任務が終わったため、それ以外の4人はオリバーからの依頼が終わったためだ。


「この丸太小屋、落ち着くから好きなんですよね」

「あら、それならお譲りしましょうか?

 アリアさんなら、綺麗に使ってくれそうですし♪」

「いやいや、それは申し訳ないので。

 ――ところで出発の前に、これを試しても良いですか?」


 そう言いながら、アリアは帽子から……手のひらサイズの金属の塊を出してきた。


「これは……何ですか?」

「あたしの古代魔法の知識で作った、『カメラ』という機械です。

 ……平たく言うと、映像保存の魔導具みたいなものですね」

「最近のアリアの趣味なんですよ。

 ちょっと全員で、撮らせてもらえますか?」

「おうおう、ザインくん。説明をありがとね」

「あいよぉ」


 フィオナは少し、何かに引っかかった気がしたが――

 ……一旦それは忘れて、ザインの指示通りに並んでいく。


 アリアを中心に、その左右にはフィオナとメルヴィナ。

 レイラは定位置の、アリアの正面にかがむ形で。

 身長のあるザインとガルドは、一番後ろの列に――


 ――カシャッ


 少し軽い音が聞こえて、撮影は終了になった。


「よかったな、アリア。ずっとこの6人で撮りたいって言ってたもんな」

「うん。現像したら、みんなにあげるからねー」

「楽しみにしてるぞ。

 何といっても、アリアの旅の集大成……みたいなものだし」

「いやいや。集大成には程遠いよ」


 アリアはカメラに目を移してから、ザインの顔を笑顔で見上げる。


「――だって、あたしたちの旅は……まだまだ、終わらないでしょう?」

「ふふっ、そうだな!」



 ――神のいなくなった世界。

 人間たちの世界は、これからも続いていく。


 ただ、誰にも想像ができないからこそ――

 ……その未来は、何よりも価値があるに違いない。

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