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神様のギフト、配ってます(ただし返品不可)  作者: 成瀬りん
第4章 生命の満ちる場所
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四戒司祭(1/2)

 見張りを全て倒したアリアたちは、まずは廃城の周りを調べた。

 もしも他に出入り口があったら、敵を逃がしてしまうかもしれない。

 ……幸いなことに、他の出入り口は全て破壊されており、そこを通るのは難しい状態だった。


「――ガラガラだねぇ」


 廃城の中は広く、何も無い部屋も多かった。

 1階から順番に確認を行い、何も無いこと、誰もいないことを確認していく。

 もしかして、最後まで誰もいないのでは……? もちろん、フィオナもここには……。

 そんなことを考えながら階段を上っていくと、ヴェルガ教の信者たちが――


「あらよっと」

「邪魔だ」


 ……ザインとガルドによって、あっさりと倒された。


「急に出てきたねぇ。

 多分、謁見の間があるっぽい階だから、ここにボスでもいるのかな?」

「そういうものなんですか?」

「こういう場所を根城にする連中は、そういうお約束が好きなんだよ。

 ボスが倉庫にいたら、台無しでしょ?」

「確かに……」


 アリアの説明に、メルヴィナは不思議な納得をした。


「さて、レイラも頑張るよ~。階段が多いけど、もう少し~!」

「は、はい……! はひぃ~……」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 ――廃城の3階。

 恐らく謁見の間だった場所に入ると、一番奥の玉座にひとりの男が座っていた。

 壁や柱の一部は崩れており、手入れはまるで行き届いていない。

 廃れた城に、ただ居座っている――そんな感じだ。


 アリアたちはゆっくりとその男に近付いていく……。

 しかし突然、アリアは男に飛び掛かり、杖を思い切り振り下ろした。


 ――ガアァアアァンッ!!


「ふえー。先制攻撃、失敗……」


 杖の攻撃を防いだのは、男を中心に張られていたバリアだった。

 大聖堂で主教が使っていたものと同じであれば厄介だが、どうやらそれよりも粗悪な魔法のようだ。


「……くくく。舐めた真似をしてくれる」


 男はそう言ったが、ザインもそう思っていた。

 いわゆるお約束を完全に無視、というか……。まるで慎重ではない、というか……。

 そんな中、ガルドが男に言った。


「お前はヴェルガ教の者だろう? フィオナ様をどうした!?」

「ふむ、やはり聖女の連れか。ここに来るまで早かったな。

 お察しの通り、私はヴェルガ教――多元主義派の長の、ダリウスという」

「やはり、多元主義派の仕業か!」

「ああ。先日、我らが敵の原理主義派が壊滅したようなのでね。

 喧しい連中がいなくなったから、我らは行動を起こしたのだよ」

「元々、聖女を狙っていたの?」

「原理主義派の連中は、世界の滅びにしか興味が無いようだったが――価値のあるものは、そこではない。

 真に価値のあるものは、滅びから生まれる再生なのだ……ッ!!」

「だから聖女を攫った……と?

 でも結局、世界を1回は滅ぼすってことだよね? 原理主義派と変わらないじゃない」


 アリアの言葉に、ダリウスは苛立ちながらも笑った。


「――さて。

 わざわざ追ってきたお前たちには悪いが、ここで死んでもらおう」

「バリアがあるとはいえ、この人数差でそういうことを言うの?」


 アリアたちは5人、ダリウスは1人。

 そこには圧倒的な人数差がある。


「くくく。この城には、まだ私の部下がいるのだ。

 多元主義派の幹部――四戒司祭がなッ!!」


 ……『四戒』というからには、部下の人数は4人なのだろう。

 ただ、1対1で戦う必要は無いから――


「こんなところで、私が何故ひとりでいるのか分かるかな?」

「……虚栄心のため?」

「はははっ、違う違う。

 私が四戒司祭の連中に、試練を与えるためだよッ!!」


 アリアたちは、その真意を測り損ねた。


「……アリア様! ここ、嫌な気配が――」

「お前らが立っている場所。そこに転移魔法陣を作っておいたのだ!!

 ――さぁ、四戒司祭の生贄になれッ!!」


 レイラの言葉はダリウスの言葉にかき消され、そのまま床に魔法陣が現れた。

 そして強い輝きと共に――アリアを除く4人は、忽然と姿を消してしまった。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 ――眩しい光が収まると、レイラの前にはひとりの男が現れた。

 ヴェルガ教のローブをまとっているが、杖は……魔法使いのものに見える。


「こ、ここは……? アリア様は……!?」

「……ふむ。こんなおチビちゃんが俺の相手かい」

「え? え?」


 男の言葉に、レイラは混乱が止まらない。


「俺は四戒司祭の、グロームだ。

 ここに来た者をイイカンジで惨殺すると、他の連中より序列が上がる……ってコト」

「ざ、惨殺!? 私を、ですか!?」

「魔法使いなのに、理解が遅いね?

 ――まぁ、とりあえず動かなくさせてもらうよ!!」


 グロームの手に魔法陣が生まれると、次の瞬間、天井から床に向かって稲妻が落ちた。

 ……しかしレイラは、すんでのところで回避する。


「きゃぁ!?」

「……え? 何で避けられるの?」


 稲妻というものは、見てから避ける……なんてことは普通できない。

 落ちる直前の兆候を捉えられれば別かもしれないが、それの隠蔽については、グロームには自信があった。


「な、何でと言われても……何となく?」

「ほう……。それならもう一度、食らいたまえ!!」

「ひゃっ!? きゃー!? うわぁーんっ!!」


 ――ズガンッ! ズガンッ!! ズガンッ!!!!


 グロームは何度も稲妻を落とすものの、全て避けられてしまう。


「当たらない、だと……!? 何故だ! 何故だぁーッ!?」

「何となくですううううぅッ!!!!」


 涙目になりながら避け続けるレイラだったが、ふと、グロームの動きが単調なような……気がしてきた。

 何度もよけながら、何となく隙があるようなところで、レイラは杖の先に魔法陣を作り出す。


「――うわーんっ!!」


 刹那、グロームに向けて、レイラの魔法……炎の攻撃が飛び出した。

 それは初歩的な魔法ではあったが、それにしては炎が広範囲に及ぶ。

 グロームは炎の中心は簡単に避けたものの、避けた先にも炎が生み出されており、さらに避けた先でも……同じ状態だった。


「熱ッ!? こんな初歩魔法、もっとしっかり収束させろよッ!!」


 グロームは隙だらけになっていた。

 信じられないような回避力を持ちながら、魔法の腕はまるで初心者――

 ……強者ばかりを相手にしていたグロームにとって、予測不能の相手だった。


「つ、次は頑張りますッ!! 私の魔法は、アリア様のためーっ!!!!」

「え? う、うわぁ――ッ!!!?」


 グロームの腹に押し込まれた杖の先で、巨大な火の弾が生まれる。

 ゼロ距離であれば、さすがに避けることはできない――

 ……奇跡的に、レイラの勝利が確定した。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 ――眩しい光が収まると、ザインの前にはひとりの女が現れた。

 ヴェルガ教のローブをまとっているが、その手には短剣を持っている。


「……転移させられたか。早くアリアのところに戻らないとな」

「あら、つれないわね。アタシ――ネブラさんを前にして、他のオンナの話をするの?」

「オンナ……? ……ああ。まぁ、アイツは女だったな」


 ネブラの言葉に、ザインは少し悩んでしまった。

 女性……という以前に、アリアはアリアだった。


「そんなことじゃ、モテないわよ? でもそんな悩み、もう持たないでイイからね!!

 ――アンタは、ここで死ぬんだからッ!!」


 そう言うや、ネブラは凄まじいスピードでザインに斬り掛かってきた。

 しかしザインは、それを何とか回避する。


「うおぉ……!? これは、本物っぽい強さ……!」

「残念ながら、本物よ!!

 アンタを殺して、アタシはダリウスの愛を勝ち取るのッ!!」


 ネブラの攻撃は絶えない。しかし、何とか避けることはできている……。

 ……アリアにガルド。身近には、強い人間がいる。

 ずっと一緒にいるからこそ、自分の強さも証明しなければ――


「――でぇいッ!!」

「ぐぁッ!?」


 凄まじい連撃の中、ザインの頭突きが成功した。

 ネブラは強く打った顔を押さえながら、ザインとの距離を空けていく。

 ……そんな彼らの間には、先ほどまでネブラが持っていた短剣が落ちている。


「武器を落とすなんざ、三流だぜ!!」


 ザインはその短剣を拾い、ネブラに斬り掛かる。

 ネブラは必死にその刃を避ける――が、ザインは違和感を覚えた。


 ……異様なまでに、今の攻撃を恐れた? もしかして――

 ザインが刃に鼻を近付けると、記憶にある知識が蘇ってきた。

 これは……猛毒だ。


「――アンタ、頭もいいのね。それに胆力もある……。

 いいわ、アタシも本気を出してあげるッ!!」


 ……結構です!! ザインはそう思ったが、それを顔に出すことはできない。

 油断をすれば、本当に死んでしまう……そんな瀬戸際だった。


「もしかして……何か、異能でもお持ちで……?」

「正解よ。アタシの異能――『蜃気楼の鏡』ッ!!」


 その言葉と共に、ネブラの周囲には……ネブラが何人も現れた。

 全てが存在しているようで、作り物である雰囲気はまるで無い――


「げぇ……ッ!?」

「ふふふ、アンタにアタシが見つけられるかしら?」

「いやいや、これは正直――」


 ……レイラが戦うべき相手では?

 あいつなら直感だけで正解が分かるだろうし……ザインはそんなことを思ってしまった。

 しかしそうはいっても、今はどうすることも出来ない。


 ザインは頭を高速で回転させて考えた。

 異能を持たない自分が、異能を持つ相手にどう勝つのか――

 ――異能は凄いもの。異能は人智を越えたもの。異能は万能なもの。


 ……本当にそうか?

 今までアリアと一緒にいて、一緒に見てきた異能。

 それは全て、万能だったか?

 例えば今、自分は足を止めているのに、向こうからは攻撃してこない――

 ……もしかして、できない?


「――そこだッ!!」


 ザインは猛毒が塗られた短剣を投げた。

 部屋の隅にある木箱に向かって――


 ズガッ!!


 ――短剣が木箱を突き抜ける音がした後、そこから……血が溢れてきた。

 ザインの周りのネブラは姿を消していき、そして木箱の影からは――本物のネブラが姿を現した。


「……どうして、分かった……?」

「近寄りたくない相手なら、短剣を投げて仕留めようとするだろ?

 一番安全に投げるなら……お前が今いる、そこだ」

「ふふふ……。アンタぁ、いいオトコだねぇ……」


 そう言い残すと、ネブラはその場に倒れた。

 猛毒の塗られた短剣が刺さったのだ。きっとこのまま、死んでしまうのだろう。


「悪いな。彼女探しは、今はしないことにしてるんだ」


 自分を殺そうとした人間を、助ける義理は無い。

 ネブラを一瞥すると、ザインは元の場所――謁見の場を求めて、走り出した。

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