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神様のギフト、配ってます(ただし返品不可)  作者: 成瀬りん
第4章 生命の満ちる場所
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あまぁ……

 フィオナに招かれて、全員が丸太小屋に入っていく。

 ガルドとふたり暮らしをしているそうだが、それにしては十分な広さがあるようだ。


「素敵なお家ですね!」


 華美な大聖堂にいたせいか、素朴な感じが魅力的に映ったのだろう。

 メルヴィナはあちこちを眺めながら、うきうきとしていた。


「メルちゃん、他人様の愛の巣をそんなに見るものじゃないよ」

「ぶほっ!?」


 アリアの言葉に、ガルドが思い切りむせる。


「……失礼なことを言うな。オレとフィオナ様は、そんな関係ではないぞ?」

「え? フィオナさんって、若奥様って感じですけど~?」


 焦るガルドに、いやらしく煽るアリア。

 ザインはそんな光景を見ながら、アリアの沼に引き込まれていくガルドに同情をしていた。


「聖女ということは隠しているので、近隣の方からも夫婦だって思われているんです。

 ずっとこうなのに、ガルドは全然慣れてくれなくて」


 そう言いながら、フィオナはお茶を淹れた。

 ずっと屋外で話していたので、その温かさが身体に染み入ってくる。


「まったく、フィオナ様は……。勘弁してください」


 ガルドは仕方の無さそうに、フィオナに目を向ける。

 お茶が行き渡り、食卓のテーブルに全員が着くと、改めてフィオナが話し出した。


「改めまして。私が聖女のフィオナです。皆さまは、私に何か用事が?」


 アリアは自己紹介を3人分してから、フィオナの質問に答えていく。


「フィオナさんには、あたしが個人的に用事がありまして。

 あと、ガルドさんの引き抜きに」

「あら。私とガルドの両方に、ですか? アリアさんは欲張りですね♪」


 どこかゆるい……。どこか捉えどころのない……。

 ザインはフィオナに、アリアのような性格を感じていた。


「さっきも言ったが、オレはフィオナ様の元を離れんぞ。

 それに教団と関わるのも、もう嫌なんだ」


 ガルドは、アリアとメルヴィナを見ながら言った。


「あたしがガルドさんを引き抜きたいのは、教団のためじゃなくて、あたしのためなんですよね。

 それと――」

「私も大聖堂を辞めたの。だから、教団とはもう……無関係よ」

「そう……でしたか」


 メルヴィナの言葉を聞いてから、ガルドは静かにお茶を口に運んだ。

 いつもよりゆっくりと……カップを持っている間、いろいろな考えを巡らせているようだった。


「――とにかく、個人的な用事でも、教団と無関係でも……。

 オレはここから、離れるわけにはいかない」


 そんなガルドを見ながら、フィオナは話を変える。


「ガルドのことは少し置いておいて……。私への用事、というのは何でしょう?」

「はい。それは――」


 アリアの言葉に、全員の視線が集まる。


「――その前に、夕食にしませんか? あたし、お腹が空いちゃって!」


 ザインとメルヴィナはずっこけた。


「お前……。遠慮とか無いの?」

「まぁまぁ。フィオナさん、台所を貸してもらえませんか? 料理はあたしが作りますので」

「誰かの手料理が食べられるなんて嬉しいわ。ガルドは料理ができないから」

「おいおい、旦那。今の時代、男でも料理くらい作れないとなァ?」

「フィオナ様に粗末なものは出せんだろう……!」

「急には無理だが、何年もあったらできるんじゃないかなァ~?」


 ザインとガルドのやり取りに、フィオナも嬉しそうだ。


「うふふ。ガルドったらあんなに楽しそうに……」

「楽しくなんてありませんッ!」

「あはは。フィオナさん、それでは一緒にお料理しましょう!」

「はい、よろしくお願いします♪」


 アリアはフィオナと、ザインはガルドと話を続けている。

 メルヴィナは一瞬、どちらに入るか迷ったが……とりあえず、女性陣に混ざることにした。


 台所は綺麗に整えられていて、完璧な状態だった。

 アリアはしきりに感動している。


「急に来たのに、綺麗にしてますね~!」

「そう言われると、お恥ずかしいです~」


 ……ちなみに男爵家の息女であるメルヴィナは、あまり台所に立ったことがなかった。

 大聖堂でも、食事といえば誰かが作って、勝手に出てくるものだったのだ。


「私は……こういうの、苦手でして……」

「メルちゃんの苦手分野、発見~! それじゃ、少しずつ覚えていこうか!」

「は、はいっ!!」

「メルヴィナさんって、貴族の方なのに……素直なんですね?」


 フィオナはメルヴィナに、優しく微笑みかけた。

 メルヴィナはそれを見て、途端に照れてしまう。


「はいはい。それじゃ早速、作っていきますよー」

「はい、完璧に覚えます!」


 その言葉を聞いて、アリアは少しとぼけた顔をした。


「今回はあたしの特別料理だから、全体的な流れだけ覚えようかー」

「はい! ……特別料理まで持ってるなんて、アリアさんは料理が得意なんですか?」

「ふふふ。持ってるレシピは1万を超えるからね……!」

「そうなんですかー」

「とっても研究熱心なんですね♪」


 メルヴィナは話を若干流していたが、フィオナはまともに反応していた。

 よくよく考えてみれば、毎日3食、違うものを作り続けても……9年以上かかるのだ。


「それで、今日作るのは何ですか?」

「今日の献立は、アマーだよ!」

「……何ですか、それ?」

「カレーって知ってるでしょ?」

「はい。家庭料理の鉄板ですね」

「アマーは、あれの甘い版だよ」

「……想像が付きません。シチューみたいな感じですか……?」

「そんなこと言ったら、シチューに怒られちゃうよ!」


 いつの間にか、アリアとメルヴィナが中心になって進んでいるので、フィオナは調理器具の準備を始めた。

 フィオナはずっとガルドと暮らしていたため、誰かが話しているのを見るだけで、とても楽しくなってしまうのだ。


「それでは早速~。

 まずは野菜を切って~。玉ねぎを炒めて、肉も炒めて~」

「ふむふむ……」

「ジャガイモとニンジンを入れて~。水を入れて~、柔らかく煮込んで~。アクはちゃんと取ってね!」

「へぇ……。こんなことをするんですね……」

「メルヴィナさん、これはカレーの作り方と同じですよ」

「なるほど……」


 フィオナはメルヴィナの横に立ち、アリアの手順を説明してくれる。


「野菜が柔らかくなったら、火を止めて~。

 特製の調味料をこれでもかと入れて――……はい、完成!」

「えぇ!? そんなに白い粉を大量に入れて、大丈夫なんですか!?」

「……これは私にも、分かりませんね。何しろ、アリアさんの特別料理ですから♪」

「美味しいですよ~★」


 アリアとフィオナの言葉に――

 メルヴィナは、料理ってそんなものなのか……と思ってしまうのだった。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 ザインは台所の近くの柱にもたれ掛かり、ガルドと話をしていた。

 台所では女性陣が楽しそうに会話をしている。

 たまに、アリアが危なそうなことを言ってはいるが――


「あまり、聞き耳を立てるのは良くないと思うぞ?」

「いやぁ……。何を話しているのか、気になるから……」


 ザインの言葉に、ガルドは仕方の無さそうに答える。


「職業柄、というのもあるのだろうが。

 しかし……伝えるべきことは伝えてくれる、仲間なんだろう?」

「……いや、そうとも限らないんだよなぁ」


 特にアリアは、未だに多くの謎を持っている。

 ただ最近は、しっかりと聞けば……少しくらいは、答えてくれているような気もする。


「仲間は信じた方が良い。オレが言うのも、何だがな」


 ガルドの年齢は30代であり、ザインよりもひとまわりも上だ。

 そんなガルドの、確かな忠告――


「まぁ……、そういうもの、なのかもな」

「……ああ、そういうものさ」


 ザインとガルドの話はそこで止まった。

 しばらくすると食卓には料理が配膳されて、夕食が始まる。


「今日はあたしの特別料理、アマーです!」

「……なに、それ」

「シチューのようにも見えるが……何かが違うな」


 ザインとガルドは不思議そうにしながら、ご飯とソースをすくって食べる。


「甘ぇ!! すっごくあめぇ!! ……でも、んまい!!?」

「うむ……、不思議な料理だな。アマー……というのか」

「メルちゃんも、たくさん食べてね。食べるまでが料理だよ!」

「そ、そういうものですか……? では、たくさん頂きます!」

「そうそう、その調子~♪」


 思いも寄らぬ美味しさに、ザインもメルヴィナも、ガルドも次々と食べ進めていった。

 反面、アリアは珍しく小食で、フィオナは味見をしたからと……やはり小食だった。

 何となく不思議に感じながら――甘いものをたくさん食べたせいか、ザインたちは睡魔に襲われていった。


「……ふふふ。みんな、お疲れですねぇ」

「甘いものを食べると、眠くなりますし……ね?」


 フィオナはアリアに、悪戯な笑みを浮かべた。


「あたしの、特別製……ですからね♪」


 アリアも負けじと、悪戯な笑みを浮かべた。

 甘いものを大量に食べると、急激に眠気が襲ってくる……。

 睡眠薬などは盛っていない。単純に、甘さで全員を殴って寝かせ付けたのだ。


「――それでは、本題に入りましょうか?」

「はい、是非とも。あたしからの話は――……あなたの力。異能の譲渡、についてです」

「……何か、誓約は必要ですか?」

「はい。ここから先は、長い話になりますので」


 フィオナはアリアを連れて、2階の自室に案内した。

 他の3人は相変わらず、今も夢の中……だった。

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