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貧乏男爵家の次女に転生した私は魔法の天才と一族から期待を寄せられていますが、その才能は、いつになったら開花するのでしょうか? ~略称(貧そい)~  作者: アカホシマルオ
アリソン九歳編

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開花その116 清算 前編

 


 プリスカとセルカが目覚めたのは、メタルゲート号を停泊しているシロちゃんの入江へ戻ってからだった。


 海の上で動揺して、下手に暴れられても困る。二人が落ち着くまでは、ここで休んでいるつもりであった。


 ただ、地下の入江は涼しいが湿っていて暗い。あの闇の中で起きた忌まわしき出来事を思い出すので一度船を収納して洞窟を登り、出口のある岩棚へと船を置いた。

 すっかり明るくなったのだが、今度は暑過ぎる。周囲の床と洞窟を広げて、ルアンナに結界を張ってもらった。


 私の予想通り、大陸に蓋をしていた空気の結界が消えた大地には、大きな気候変動が始まりつつあった。

 第一に、常に風が強い。第二に、時折雨雲がかかり大雨が降る。

 このままいけば、この巨大な枯れ谷にも継続した水の流れが戻るのも遠い話ではないだろう。



 全てがきれいに片付いたように思うが、代償も払った。

 二人の従者が人外の物に転じてしまったのは、巻き込んだ私の責任以外の何物でもない。セルカの兄であるシオネには、真っ先に説明と謝罪に行かねばなるまい。


 プリスカの方はどうなのだろう。我々の事情を知らない家族には、言えないよなぁ。あいつの家族については、私も今どこにいるのか知らないし。本人の言う通りであれば、数年前に家を出て以来、もう二度と帰るつもりは無いのだろう。



 それと、私が魔法収納へ大量に保管していた食料や道具や魔法の素などは、プリセルの二人を助ける際に、きれいさっぱり捨ててしまった。エドの巾着の中身を元に戻すと、一切何も残っていなかった。


 でもこれはこれで、清々しい気分だ。

 終活が終わり、いつでも穏やかに最期の時を迎えられそうである。いや、縁起でもない。

 特別重要な物はエドの巾着に入っているし、残る食料だけでも当分は食うのに困らないだろう。



 思ったよりもプリセルの二人が元気一杯なので、そろそろ帰路に就くことにする。だが急激な気候変動による強風のせいか波が高く、海は荒れていた。


「おい。無理をしないで私の影の中にいてもいいんだぞ」

「まさか。生まれ変わった私には、船酔いごとき恐るるに足りず!」

 出航の前に一応プリスカへは言っておいたのだが、妙な全能感に浸っている阿呆の耳には届かなかったようだ。


「先生、もう我慢しないでくださいよ」

「無念。姫様、私には無理でしたぁ」

「辺りを汚す前に、早く引っ込んでしまえ」


 出航して十分と経たないうちに、プリスカの具合が悪くなり音を上げた。大陸沿岸を埋め尽くしていた魔物たちも今はおとなしいので、戦力的には問題ない。

 プリスカの姿が、船底の闇に消える。


 正直これはちょっと、羨ましい。私だって、この身を自分の収納へ隠してしまいたいような気持になる時がある。

 そのうち何か、方法を考えてみよう。



「どうだ。セルカは自分の体に、何か変化を感じるか?」

 私には、外見上は以前と変わったような部分は無いと思うが。


「そうですね。やはり私の胸はもう少し大きかったような……」

「それはもういい」


 しかしきっと、肉体的にも何か違和感があるのだろう。極端に言えば、何も食わなくても私の魔力だけで生きていけるようになっているのだから。


 それに半精霊と化したことにより、恐らく魔法の能力は大幅に強化されている。それも、単純な魔力アップとかの問題ではない。使う魔法の質自体が微妙に変化しているので、きっと今後の試行錯誤が色々と必要だ。

 パンダのような非行に走らぬよう、慎重に監視しておかねばな。



「すごいですね。海の魔物が滅多に襲って来ません」

 大陸から離れれば、帰りの航海は穏やかであった。


 私の収納に入っていた武器類が全て消え、プリスカとセルカが持っていた武具も、魔法鞄ごと全て消失している。

「この新しい剣も調子いいですね」

 セルカが数少ない魔物の襲撃を撃退して、剣を納めた。


「姫様が前の剣に追加してくれた防御機能ですが……」

「ああ、そんな事もあったな」

 実際、ほとんど機能していなかったのだけど。


「いえ、今度の剣では、とても役に立っています」

「へっ?」

「何でしょうね。姫様の魔法との親和性が高まったというか。こうして魔物と戦っていても、剣の魔力障壁が守ってくれます」

「へぇ。そうなんだ」


「そう言えば、姫様も最近一々服が白くなったりしませんよね」

「ああ、それね」

 生まれて初めて魔力の全開放をした効果なのか、最近私の魔法は妙に安定している。


「まぁ、私も少しは進歩してるってことだ」

「へぇ」

 あ、こいつ全く信じていないな。



 私がその場の勢いで作った様々な物の多くは欠陥品で、大抵は失敗している。

 今回作った無敵の盾だって味方の剣をへし折っただけで、結局役には立たなかったし。まぁ、今はそのほとんどが闇に葬られ、証拠は隠滅した。


「ところで、帰ったらすぐにシオネのところへ行って、お前の体がこんなことになった件を謝罪しようと思うのだが」

「ええええっ、それは黙っておいてくださいよぅ」


「いいのか?」

「はい。却って心配を掛けますから」

 まぁそうなるか。フランシスの出産もあるし、余計な心配をかける必要はないかな。


「プリスカはどうなんだ?」

「私には、報告すべき家族がおりませんので」

 影に潜んだまま、プリスカが落ち着いて答えた。本人がそう言うのなら、それで良いのだろう。今はそっとしておきたい。

 下手に出てきて、新しい剣の切れ味を試したいなどと騒がれるよりも、ずいぶんマシだ。



「それに私もセルカも、今は少し安心しております」

「どういうことだ?」


「姫様の関係者の中で、我らだけが短命な種族であることに心を痛めておりました」

「セルカもか?」


「もちろんです。コマさんやネリンさんは今後も永く姫様にお仕えできるのに、私たちだけが除け者のようで」

 確かにフランシス離脱後、私の屋敷を頻繁に出入りしているのは、長命なエルフやドワーフと、魔物や精霊が中心である。


「しかし今のところ、ネリンは私の従者ではないぞ」

「いえいえ。ネリンさんも普段はあれですけど、実はエルフの王族である姫様を影から支えようと、色々と考えているようですよ」

 うーん。私には、そういう風には見えなかったなぁ。


「そりゃぁ、姫様の人を見る目は、でっかい節穴ですからねぁ」

「いや、ルアンナにそんな事を言われてもなぁ……」


 今ではプリセルの二人も念話の会に入会して、普通にルアンナと会話している。ただ幸いなことに、ルアンナのように私の心の深い部分まで覗き込んだりはしない。いや出来ない、と言っておこう。



「帰ったら、エドのところへも行かないとなぁ」

「どうしてですか?」


「あんたたち二人も、エドのおかげでこうしていられるんだよ。エドの巾着袋に入っていた薬が無ければ、あのまま彫像にされていただろう。ひょっとすると、そのまま押し切られて、私もダメだったかもしれない」

 これは本音だ。


「ホントに紙一重だったのですね」

「ああ。次はもっと上手くやるよ」

「次は勘弁してください」

「いや、安心しろって」


「ええっと、では何か別の薬で元に戻るとか、ありそうですか?」

 セルカはまだ諦めていないのか。


「知らん」

「ということは、可能性はあると?」

「元に戻っても、今より胸は大きくならんぞ」

 正直に言えば、元に戻る方法など無い。既に元の体自体が残っていないのだし。


「セルカはまだウッドゲート領へは行ったことが無いよな」

「はい。姫様の故郷ですね」

「そうだ。エドの所へ行くのなら、私の実家でのんびりしよう」

「いいのですか?」

「ああ。お前たちに休暇をやるとすぐに迷宮へ行って、何やら新しいトラブルを抱えて戻って来そうだからな」

「いやいや。姫様と一緒の方が、遥かに大変なんですけど……」



 二人には便宜的に半精霊と説明しておいたが、本当にそう呼んでいいのか怪しい。

 二人の肉体と精神が一時的に精霊化し、その間にその精霊が祝福されて私の使い魔と化している。これが原材料と調理法及び、完成した一皿だ。あ、二皿か。


 結果的には、そのうちの精神(魂と呼んでも良い)だけが元の人間由来成分で、残りの部分は魔法薬により一度スピリチュアルな力にまで解体された未知の成分だ。


 本来ならその状態を五分ほどしか維持できずに元の人間に戻るところを、私の祝福という名の呪いにより全体が一つに混濁したまま再構成されて、今の使い魔となった。これが、今私が呼んでいる、便宜的半精霊の実態だ。


 つまり、元の人間に戻れるのならば五分後に戻っていた筈なので、今更それは無理でしょ、の状態なのだ。

 煮込んだスープを元の複数の素材に戻せ、と言っているようなものだ。



 私の魔法収納には生きた人間は入れられないが、つまり生きていなければ入るということだ。精神の方は、使い魔となれば私の影に入れられるだろう。

 あの時は咄嗟にそう考えたのだけど、事はそう上手くいかなかった。


 肉体もまた、精霊化薬により精霊と化して消滅していたのだ。仕方なく、それをまとめて祝福し、使い魔とした。


 デンデンムシの時は、祝福を与えることにより種族全体が半精霊化した。あれはそういう特殊な集団生活を営む種だったから、そうなった。しかし人間は違う。


 この二人に祝福を与えた時には、一時的にだが、完全に精霊化していたのだ。それがどういう意味なのか。私にもよく説明できないので、適当にお茶を濁している。ごめんね。



 これ以上二人に何か言われたら、神の領域に近付いたとか言っておくか。でも私のしもべだけど。


 どちらかと言えば、黒犬の母から生まれクロヒョウの精霊を父に持つドゥンクのような本物の半精霊とは違い、二人はパンダやシロちゃんたち魔獣に近い存在に感じている。


 魔獣とは、強大な力と知性を併せ持つ上位の魔物である。過去にはそのうちの更に力のある者が邪神などと呼ばれたりしていたらしい。まぁ、魔王の異名を持つ私の敵ではないけどね。


 プリセルの場合、まだまだその域には達していないが、この先どうなるのかは分からない。でもこんなこと、怖くてうっかり口に出せないよぅ。



 後編へ続く




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