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ウチの三姉妹が俺の青春へ介入してくるんだが  作者: 桜 寧音
15章 神宮大会とオフシーズン
494/495

1−3−1 神宮大会決勝・新富学館戦

 四回の表、戦闘打者の高宮は東條監督たちが戻ってきたのを見て非常事態は過ぎたと確認。耐久をやめて打ちに行こうとしたが、連続してボールが外れたために四球となっていた。智紀がキャッチボールを初めているのを見て何でだと思いつつも、その相手が鶴見だったために鶴見が守備に就くのは理解した。

 となると外野に鶴見が行くのなら誰がショートをやるのかという話。今の準備を見て、智紀がショートに入るようだと判断する。智紀を投手にする時にはどうするんだと思うものの、采配は監督がするものだ。

 智紀が登板しないようにできるだけ点を奪えば、ピッチャーを代えるだけで済む。シフトを動かさずにピッチャーだけを交代すれば守備面での負担は少なくなる。


 続く薮垣に打ってくれと頼みながらリードをすると、薮垣はナックルに軌道が合わないようで空振りが続く。高速チェンジアップがナックルもどきになっているという情報があるので、指や握力への負担がなく多投してくることは予想できても、こうも続けられるとは想定していなかったのだろう。

 追い込まれてしまったが、ここで縦カーブが低めに外れる。ワンバンするようなボールでキャッチャーの豊田が溢すものの、前に落としたので高宮は走らずに帰塁する。

 ここで門戸はストレートを投げた。変化球が続いたところでのストレートなために薮垣は差し込まれながらも打ち返した。打球はライトの前に飛んで落ちる。ヒットになってノーアウト一・二塁とチャンスになった。


 ここで手堅く行こうと七番ファーストの重松へ送りバントのサインを出す。投手リレーをすることでショートの仲島が抜ける穴を塞ぐために点をたくさん取りたい。

 手堅く行こうとしたが、ピンチでネガティブになった門戸がボールのぐにゃぐにゃ感が増えて、初球のムービングボールにボールが前へ飛ばずファウル。普通の変化球ではなく手元で変化するボールがかえってやりにくかったようで失敗した。

 まだノーアウトということもあって、バントの指示を続行。二球目のストレートは成功して一塁方向にゴロが転がる。丁寧に処理をされて一アウト二・三塁に。帝王としてもチャンスを広げられて、新富学館としてもアウトが増えてイーブン。


 帝王はここから下位打線だ。帝王の下位打線は全国区と呼ばれていることもあり、野呂の打率も悪くない。九番の平こそピッチャーなので打力は普通だが、悪くもない。ここでサインは出さず、犠牲フライでも良いから一点を取りたいところ。

 新富学館としては一息入れるために守備のタイムを取った。相手選手が負傷したりと色々あったので伝令を送った。

 まず内野が集まった段階で帝王のベンチを確認させる。そこには仲島の姿があった。


「ほら、仲島の姿があるだろ?多分そこまで重傷じゃなさそうだ」


「それは良かった。ここはスクイズ警戒か?とにかく一点取ってくる感じがするぞ」


「警戒だけで打者集中でいい。一点くらい取らせてアウトをもらうことが優先な。打って勝ってきたんだから宮下じゃない投手くらい打ち崩せって」


「了解。頼んだぞ、門戸」


 仲島の無事を確認して懸念事項を一つ消して、守備に戻る。門戸の調子が良くても数点取られる試合はあった。そこから逆転して勝ってきたのだから、今回もそうするだけだと確認をした。

 内野は前進守備。外野は定位置くらいだ。犠牲フライはどうしようもないとして、あとは内野ゴロだったらどうにかするというシフト。

 引っ掛けさせたいこともあってボールは変化球、低め中心になった。落ちるボールばかりなので自然と低めにボールが集まる。野呂はナックルもどきを引っ掛けてしまい、外野フライを打とうとアッパースイングにしたのだがサードへのフライになってしまった。


(せめて一点は欲しかったのに!仲島キャプテンはあれをホームランにした……。守備でも攻撃の意味でも、あの人が抜ける穴は大きすぎるぞ……!)


 そんな不安が的中したのか、次の打者の平はスライスカーブにバットが空を切る。チャンスに無得点だったので帝王としては余計に守備に気合を入れなければならず、新富学館はここで流れを掴みたかった。

 守備に向かう前に仲島がベンチから少しだけ出てきて、智紀と鶴見の両肩に手を回して抱え込んだ。


「悪い、負担をかける。鶴見はいつも通りな。智紀、三遊間は全部三間に任せろ。二遊間を抜かれないようにしておけ。ケースごとの守備位置だけ気を付けて、カバー先だけ間違えないようにな」


「ああ。何とかやってみるよ」


「俺はいつも通りやるだけだからさ。智紀はショートなんて試合では初めてだろ?大丈夫か?」


「やるしかないな。監督にも考えがあるんだろ」


 その考えとは、控えのショートを守れる郡をちゃんとショートとして育成していなかったことだ。ショートは仲島が圧倒的に上手かったためにちゃんとした後継がいなかった。打者として優秀な選手が多いこともあり、帝王に来る選手はポジションがかなり偏る。

 レギュラーになるために他のポジションにコンバートすることも多く、ショート専属とサード専属が今だとほとんどいない。キャッチャーは専門職なので元から少なかったが、サードは三間が一年からずっと守っているポジションだったために避けられたものの、長年やってきた選手も多いために候補は何人か残っていた。強打者は内野だとサードかファーストに固まりがちだからだ。


 だがショートは守備の要であり、いくら打てても守備がしっかりしていないと起用できない。一応控えの郡もシートノックでショートを守っているものの、どちらかというと人数的な問題でショートを守っているだけで、郡は内野全般が守れる器用貧乏なタイプだ。

 この神宮の決勝でいきなり任せられる練度があるかと言われたら微妙で、だったらU-18でも評価されていた智紀を使ってみようと思っただけだ。

 内野用のグローブは持っていなかったので、キャッチボールの時から仲島のグローブを借りていた。外野用のグローブでショートをやるわけにもいかなかったので、ダグアウトで借りたのだ。


 そのグローブを見せつけて、借りるぞと伝えると彼は強く頷いた。二人は仲島に押されて、守備に向かう。高宮がランナーだったために防具をつけて準備をしているために、ベンチから阿部が出てきて守備の交代を主審に告げた。それが放送で流れて仲島の交代がわかるが、本人はベンチの前に出て声を出している。

 その姿を見て安堵の声が漏れる。それと同時にショートに入った智紀の様子に家族でさえも驚いていた。

 福圓梨沙子が隣に座っていた喜沙に尋ねる。


「智紀君ってショート守ったことあるんですか?」


「練習ではやったことがあるはずだけど、公式戦は初めてじゃないかしら……?野手として出る時はレフトかライトだったもの」


 美沙は持ってきていたカメラで電光掲示板に表示される智紀の守備位置が6になっているところを撮影して、守備練習をしている様子もカメラに収めた。

 偵察に来ていたチームも新富学館も、データにない智紀のショートの姿を見て困惑していた。

 そもそも帝王で仲島以外のショートなんて警戒もしていなかったので、アクシデントとはいえ智紀がショートに入ることなんて誰も想定していない。


 帝王の守備事情は中々に悲惨だ。レギュラーが整っているために、二番手がいない。そんな状況が露呈しながら、四回の裏が始まろうとしていた。

 智紀としても慣れないポジションだったので、ファーストの重松に難しいボールを要求。バッテリーが投球練習をしている間にずっと智紀だけが守備練習をさせてもらい、それで捕球と一塁への送球を繰り返していた。

 そうして動いている様子を見て、三間が声をかける。


「おう、良さそうやん。行けるな?智紀」


「やるしかないだろ。多分相手もこっちを穴だと思って狙ってくるぞ。三塁線を開けすぎないようにな」


「わかっとる。三遊間は積極的に声を出していくで」


 三間と智紀がそう話し、キャッチャーから二塁への送球もなく準備が終わる。

 未知のショート智紀が爆誕しつつ、試合が再開する。その注目度は下手したら投手の時の智紀よりも注目されていた。

 ベンチではそれしかすることがないからと、仲島が声を出していた。


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