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88 泡と弩砲のハーモニー

「バリスタ用意できました!」


「泡の魔法、いつでも使えます」


「よし、着弾と同時に泡の魔法を唱えるんだ!」


 人魚が矢を発射する。

 勢いよく飛び出た矢はゾンビたちの包囲を突破し一気に船底まで近づく。


「今だ!」


 3人の人魚が一斉に杖に魔力を込める。

 バリスタの矢が着弾した箇所から大爆発が起きたかのように泡が大量発生する。

 泡が完全に消えてしまうと、(やじり)が船底を大きく抉っているのがはっきりと見えた。


「いけるぞ!」


「やれ! セレマイアの奴らに人魚の恐ろしさを思い知らせてやれ!」


 だが船は前進を続けている。

 フォルミーカは一歩も引く気は無いようだ。


「あれぇ、おかしいなぁ? 流石に劣化してきたかなぁ? まあいいけどねぇ。腐った肉じゃなくて骨を寄せ集めて直しちゃおうっと」


 フォルミーカがそう言った途端、大量の人骨が海中に投下されてきた。

 そして先ほどバリスタが抉った箇所に集まって穴を塞ぎ補修してしまった。


「そんな……せっかく壊したのに」


「いいや、君たちの発想はすごく良かった。時代を先取りしすぎだ! 俺のとっておきも加えさせてくれ!」


「とっておきって、まだ何か秘策があるのか?」


「ある。貪欲に知識を取り込んで際限なく発展させるとっておきの魔法だ」


 バリスタの近くまで移動してアレゴリーを引き出すのに適当な物を探す。

 両手に大量の矢を握ってアレゴリー魔力を取り出す。


「破壊と災厄の力の象徴、矢の寓意術」


 そして取り出したアレゴリー魔力を移すためにバリスタに両手をかざす。


「これは……五行の魔法とはまた違った気配を感じる」


「もう撃っていいのか?」


「ああ、着弾と同時に別の寓意術も使う。あの骨で補修された部分を狙えるか?」


「はっ! 人魚の腕を舐めるなよ!」


 そう言って放たれた矢は補修された部分にまっすぐに向かっていく。


「崩壊と儚さの象徴、泡の寓意術」


 人魚が発生させた泡から崩壊の寓意を取り出し続ける。

 泡が船体の底部分に当たって破裂しては魔法で復活する。

 魔法で作られた泡はゾンビに触れているから消えているわけではない。

 泡が崩壊した瞬間に放たれる衝撃波がゾンビの船を効率よく破壊していく。

 バリスタの矢は大量の泡と共に船底を貫通し、死体でできた船に大きな穴を空けた。

 バランスを失った船は大きく揺れる。


「な、なんでたかがバリスタ程度で風穴が? こんなのアリ?! 意味が分からない!」


「フォルミーカ、ここで負けたって恥じることはないぜ。この時代の技術レベルで魚雷に耐えられる船なんて無いだろうからな! 名付けてバブルパルスアローだ!」


 予想外の反撃に戸惑ったのか、制御を取り戻した船がゆっくりと後退していく。


「で、でもバリスタさえ届かなきゃ意味ないよねぇ! 所詮は人魚、何をしても中途半端な種族! 薬の材料のために根こそぎ狩りつくしてあげるからぁ!」


 その時不思議なことが起こった。

 バリスタが置かれている岩棚も船に追いつくように移動し始めたのだ。


「カウカウラ様の力だ!」


「さっきよりも近い距離で撃てるぞ」


「逃げられると思うな。今度はお前が追われる番だ!」


 カウカウラの呪詛のこもった声が魔石板越しに聞こえてきた。

 どうやら魔石板を通して戦況を見ていたカウカウラが、フォルミーカを逃がすまいとマングローブの根を伸ばしてバリスタを地盤ごと動かしているようだ。

 次々に船に向かって矢が撃ち込まれていく。

 船はバラバラに破壊しつくされ、業魔力の反応も小さくなった。


「こ、この先生きのこるには……」


 崩壊した死体の船を放棄して、フォルミーカは小舟に乗り込んだ。


「てっ、撤退ぃ。みんなセレマイアに戻るよ!」


 ゾンビの腕が何本もオールのように連なった小舟で逃げていった。

 意外に速度は出るようだ。

 的が小さいうえに素早い動きで矢を避けていくので、人魚たちは深追いするのをやめた。

 放置された死体は魚の群れが食べて跡形もなく消えてしまった。

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