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55 海岸清掃

 俺とパラスは海岸に来ていた。

 防衛戦で大量に残されたセレマイア軍の船の残骸や兵士と怪魚の死体などはイシュー様のゴーレムたちによって片付けられていた。

 しかし、それ以前からもセレマイアから流れ着くゴミの多さはたびたびディルエットでも問題となっており、魔物たちが人間を憎み(さげす)む理由の1つとなっていた。

 今日はその海岸清掃の手伝いをしにきたわけだが、それとは別に知恵袋役としての目的もあった。

 流れ着くゴミからセレマイアの生活水準や技術力が推し量れるのではないかと考えたのだ。

 そしてディルエットにない人工物があれば、それは寓意術のための寓意を取り出す武器になる。

 何か珍しいものを発見できれば、戦術に幅を持たせれられるはずだ。


 セレマイアとディルエットの間にはもちろん国交はない。

 セレマイアの入国審査ではまず魔物は通らないので、他国を通してわずかな情報がやり取りされる程度である。

 おそらく情報戦においては、セレマイアはディルエットよりも先を行っているだろう。

 もし本格的にセレマイア内部の情報を入手しようと思えば、俺のような魔物は人間に化けなければならないな。


 正直言うと、ディルエットも厳しく取り締まる必要があるのではないかと思う。

 ただ、イシュー様がそこまで踏み切れないのは、ディルエットが自由な商業取引によって支えられているという点が無視できないからである。

 魔物たちのためにディルエットを拓いたという先代魔王の遺志をどれだけイシュー様が引き継げているか、というのはこの国の誰もが関心を持っていることである。

 そのために人間の侵略から国を守りつつ、魔物たちの行動の自由を保障できるか、イシュー様は苦心していた。


「ソロモンさん~こっち、こっちです~」


 大きな水かきのある手を振ってくる魔物がいる。

 海岸に先に来ていたバテランタンが遠くから声を掛けてきた。

 彼は防衛線の直前にセレマイアに殺された漁師の息子である。

 マーフォークほどではないが、水中に適応して水かきやヒレを持つ彼らがこの辺りを拠点に代々漁をしている。

 バテランタンは漁に使う道具がゴミによって破損しないよう、付近の海中のゴミも定期的に掃除してくれている。

 仕事ぶりもいいと評判だ。

 彼も立派な漁師になることだろう。


「……今日は日差しが強すぎて体が痛いから日陰で休んでる」


「そ、そう。曇ってきてからでいいからなるべく出てきて手伝ってよ」


 体質は仕方がないとして、精神面でパラスにも少しは見習ってほしいものだ。





 一番多いのがセレマイアが使用していた漁網である。

 天然の素材だけでできているなら朽ちてしまい、漂着するまでに残っていることは少ないはずだが、実際には流れ着いてしまっている。

 魔物か怪物の素材を使っているか、はたまた別の技術を発達させているのかは分からないが、これだけ丈夫な漁具が作れるなら収穫も相当なものなのではないか。

 

 正体不明の像と型枠も大量にある。

 これらは祭具の類だろうか。

 しかし、大部分が欠けていて大量に廃棄されているところを見ると、あまり大切には扱われていないみたいだ。

 何か理由があって造っては捨てているのだろうか。

 わざわざ海に流さなくてもいいのにと思う。


 ガラス瓶もまばらに漂着しているが、やけに小さな瓶が多い。

 酒などの飲み物を入れるためのものではないだろう。

 こうしたものに薬か何かを入れるのが一般的なのだろうか。

 中に手紙が入っている瓶を見つけた。

 手紙の内容は、言いがかりのような理由で孤島の監獄に投獄されたので助けてほしい、報酬は隠してある場所で支払う、というものだった。

 窓からどうにかして見たという星の位置が詳細に記されているが、この手紙の内容だけでは脱獄の手助けをしてくる人が現れるとは到底思えない。

 やはりセレマイアでは権力者の都合で犯罪者に仕立て上げられている人が多いらしい。


 そういえば魔石板はディルエット国外に流出していないか心配になってきた。

 向こうに気付かれないように管理しておかないといけないな。

 キアロスクのように悪用してくる可能性も高い。


 どのゴミも酷く汚れているか、破損している部分が多いので不気味に感じる。

 まるで道具が、最後までちゃんと使ってくれなかった恨みを持っているかのようだ。

 そういえば作業を始めて3時間くらいにはなるだろうか。

 バテランタンがこちらに近寄ってきた。


「ソロモンさん、風が強くなってきました。今日はこのへんにしておきましょう。」


 海が本格的に荒れる前に終わっておくか。

 せっかく曇りになってきたというのに、結局パラスは手伝ってくれなかったな。

 そう思ってパラスの方へ目をやると、打ち上げられたウミヘビの死骸をじっと見つめていた。


「パラス、もう引き上げるよ。人間の出したゴミは海岸にだけ残されているわけじゃないぞ。帰ってからたっぷり仕事をしてもらうからね」


 パラスと一緒にゴミを乗せた荷台を押して城へと戻った。

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