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49 バーリャの悩み

 まだまだ回答者たちの訓練は続く。

 レイの回答の質は波があるが、良いことを言う時は確かに役立っている感じがする。

 快刀乱麻を断つというように、絡まった糸を(ほど)くのではなく刃物でスパッと切るように問題解決に向かうようなアドバイスをするのだ。

 ただ、悪いほうへと傾いてしまった時は余計な問題を増やしてしまっているのだが。

 ついさっきもそれが原因で質問者とトラブルになったようだ。


「お前よくも俺のことをだましてくれたな! ガス抜きの意味をオナラの出やすいものを食べてひたすら出すことなんて嘘つきやがって!」


「ちょっと冗談言っただけじゃねえか。屁こいても仕事の疲れなんて取れるわけねえだろ。ガス抜きはストレスを発散することな。これでいいか?」


「いいわけあるか! 変なあだ名は付けられるし、おかげで近所の笑いものだ! ちゃんと土下座で謝れ!」


「こんなジョークも通じないから無駄に仕事で疲れんだよ。俺のせいにするなよな」


 まだ喧嘩を続けていたのか……まあレイのことだから自分で何とかするだろう。

 それに新しい力も手に入れているのだから理不尽な目に遭うこともそうそうあるまい。


 それよりも今俺が心配しているのはバーリャのことだった。

 母親の教育方針のおかげか魔物にしては読書量は多いようで、たくさんの知識を持っている。

 異世界に疎い俺もバーリャの知識に何度か世話になった。

 が、バーリャは知識の使い方があまり上手くはない。

 体を実際に動かさずにいきなりイメージ通りの動きをするのは難しいように、知識もまた実際に使ってみないとドンピシャに役立つ場面で引き出せないのだ。

 悪く言うとバーリャは前世にいる喋りたがりのオタクのようだ。

 自分が話したいことから全て話してしまう癖もある。

 そのために求められていない回答をしてしまっている様子が多く見受けられた。


「どうしてうまくいかないんだろう」


 バーリャも自分の良くないところには気づき始めたようだが、まだ欠点を克服するアイデアを思いつくまでには至っていない。

 少しずつ努力はしているようだが、


「質問している人の立場になってみて。そうすればその人が本当に聞きたいことが自然と分かるんじゃないかな」


「想像してみたんですけれど、そうしたら余計にどう答えたらいいか分からなくなってしまって……」


「それはどういうこと?」


「もしも自分がこう言えば、ああいう風に言いいかえされてしまうって思うとちょっと怖くて」


「怖いことなんてあるかよ。パパっと普通に答えて、質問してるくせして偉そうに言い返してきたら反論すればいいじゃん」


 喧嘩から戻ってきたレイが口を挟んできた。


「お前の場合はもう少し人の気持ちを考えた方がいいけどな」


「ウッセー。俺には俺のやり方があんだよ」


「ともかく、バーリャにはバーリャ自身が上手く回答できるようなやり方を見つけてもらわないとね。それには回答あるのみだよ」


「はい……分かりました」


 バーリャはシュンとしてしまった。

 落ち込みやすい子だが、根は真面目だから根気よく続けてほしいものだ。


「ちょっとよろしいですか?」


 バーリャの母親、メフィテラが声を掛けてきた。


「メフィテラさん、どうしました?」


「あの子のことで少しお話したいことがあります。こちらに来てください」


 険しい顔で物陰に呼び出してくる。

 バーリャがうまく回答できていないのが心配なのだろうか。

 メフィテラは知恵活のことをあまり良く思っていなかったように見えたが、やはり親としては子供のやりたいことを応援したいという気持ちもあるのだろうか。


「それで、用というのはなんでしょうか」


「バーリャには知恵袋役をやめてもらいます」

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