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48 アスファルテと遊んで

 部屋に戻ると口の中からタルパと化した土人形を吐き出して、元の形に戻るよう指示した。

 慌てて作った割にはその役目をしっかりと果たしてくれた。

 どのような素材を使って作られた物か興味はあるが、今は調べる気にはなれない。

 一旦偶意術を解いてタルパを俺の精神の深い所へ収納しておき、後日タルパを宿しなおして調べることにしよう。


 それにしても、全くとんでもない物を食べさせられたものだ。

 おかげで、今日は疲れているうえにきちんとした食事を摂っていないのに、食欲がすっかりなくなってしまった。

 そろそろ寝るか。今日は色々ありすぎた。

 そう思って横になった時だった。


「あ、いたいた! ねえねえ、ソロモン遊んでよ! せっかくお城に帰って来たのに誰も遊んでくれないからつまんない!」


 アスファルテが誰から聞いたのか、俺の部屋にやってきた。

 ようやく休めると思ったのにこれだ。

 

 そういえば彼女が疎開していた場所には他の魔物はおらず、イシュー様が作ったゴーレムしか居なかったと聞いた。

 それも言葉を話せるような複雑な思考ができるゴーレムじゃないだろうから寂しかっただろうな。

 疲れているが、少しくらい付き合ってやってもいいか。

 何か寂しさを紛らわせられるアイデアはないだろうか。

 とりあえず彼女がどんな魔法を使えるか聞いてみよう。


「アスファルテは何ができるの? ほら、イシュー様はゴーレムを造ったり操ったりできるじゃないか」


「私もやってみようとしたんだけどね、石は硬いから上手に動かせなくてね、それで柔らかい泥とか土の形を変えて遊んでるの」


 さしずめ、イシュー様が石の魔王なら、アスファルテは土塊(つちくれ)の魔王(候補)といったところか。

 どれほどの知能と力を持っているか試してやろう。


「じゃあ、俺がこの魔石板にとある魔物の骨を映すから、画像とヒントから生きている姿を想像して土で再現してみて。名付けてリボーンクイズだ!」


「やるやる!」


 俺はこの世界に来てから知っている魔物の数は少ないが、前世で見た動物の数を合わせれば問題の難易度を調節するのは簡単だ。

 だがあまり簡単にしすぎるのも退屈だと思われるかもしれない。

 ディルエットでは見慣れないであろう水の中にいる生き物なら、多少は想像力を働かせる必要があるからいい塩梅になるか。

 しかし、ウィキペディア内の画像から魚類の骨格を探すのは思ったよりも苦労した。

 なんとか「魚類用語」のページで魚の骨を見つけることができた。


「じゃあ小手調べに……これだ! ヒントは水の中にいる生き物」


 俺はマンボウの骨格をアスファルテに見せる。


「馬鹿にしないで、こんなの簡単よ。まずは骨の型を取って、こうして、ここはこうなってて……できた!」


 アスファルテは持っていた小箱を開ける。

 中には土が入っていた。

 その土を魔力で自在に操り、魔石板に表示されている骨格を形作り、あっという間に肉付けを終えてしまった。

 流石に土を操る魔物だけあって、土を想像通りに加工するのはお手の物だ。

 小箱には土しか入っていないように見えたが、硬さや色が異なるところを見ると粘土や泥も混ざって入れられていたようだ。


 完成した土人形は、お腹が少し痩せ気味なところ以外はほとんどマンボウのシルエットを再現できていた。

 簡単すぎたか? もう少し難しくてもいいだろうか。

 少しだけ意地悪してやろう。


「やるな~だったらこれはどうだ? これも水の中にいるけれど、立派な翼を持っているんだよ」


 俺は「ケープペンギン属」のページから何とかペンギンの標本画像を見つけ出し、アスファルテに見せる。


「これで水の中にいるの? うーん……」


 さきほどと同じ手順で骨を作りと肉付けをしていくが、マンボウよりは自信がないようだ。

 完成した再現物は、蛇のように長い首をくねらせ、やたらと大きな翼を持っていて、ペンギンにはないペリカンのように長い足をしていた。


「これは似てないな。正解はこれ!」


「うそー! こんなの分かるわけないし!」


「じゃあ最後はこれ! これも水の中にいる生き物だけど、ペンギンなんかよりもずっと大きい海の魔王だ!」


 シャチの骨格を見せる。

 アスファルテはうーんと唸りながら、ペンギンを再現する時よりも時間を掛けて肉付けしていく。

 やはりシャチの骨格から実物を想像するのも難しかったようだ。

 できたのは巨大な前足を持ったワニのような何かだった。


「これもアスファルテには難しかったかな? 正解はこれ!」


「これ絶対間違ってるー! 口は大きく開いてるはずだし!」


「残念だけど本当だよ。でもアスファルテの作ったのもこれはこれでいいと思うよ」


「そう? そうだよね!」


「アスファルテは本当に土を操作するのが上手なんだね」


「すごいでしょ! 将来はもっとたくさんの土を動かせるようになって、お姉ちゃんと一緒に人間を倒すの!」


 アスファルテはまだ幼くて遊びに夢中になるような年齢だが、イシュー様が置かれている立場はうすうす気づいているようだ。


「そうか……それは頑張らないとね。でも今日は俺も色々あって疲れちゃったから、今日はもう寝ようね」


「うん! ソロモン、また遊んで!」


「ああ、お仕事が終わったらね。それじゃあお休み」


「お休みソロモン!」


 アスファルテは嬉しそうに走って、俺の部屋から出て行った。

 やっと寝られる。

 でもこれはこれで楽しかったな。

 また何か、アスファルテに楽しんでもらえるような遊びを考えておこう。

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