44 エルフについて
サイラス……どこかで聞いたことがあると思ったら、アルクァのために特注で鎧を作ってくれたオヤジか。
優れた技術を持つ鍛冶屋ではあるが、臆病でむっつりスケベなところがある少し変わった奴だ。
そんなオヤジが本名を使って投稿するなんて、よほど差し迫った問題でもあるのだろうか。
<エルフといえば、魔力を自在に扱えるから魔物の味方だと言い、人間に顔立ちが似ている者が多いから人間の味方だともいうコウモリ野郎だ。お前らはそんな奴が信用できると思うか? そいつは、俺が昔から住んでる土地にいちゃもん付けて出て行けって言ってきやがる。今からこのエルフにディルエットの厳しさを身に染みて分からせてやろう。武器を持って集まって来てくれ>
かなり過激な内容だ。
俺にはあのオヤジがここまで強気に出ているのが不思議に感じるが、土地を奪われそうになると必死になれるものなんだろうか。
「あ、この質問良いじゃねえか! おい、ソロモン。俺の短剣返してくれよ。俺も殴り込みに行くぜ!」
一番知られたくない奴に見つけられてしまった。
「返すわけないだろ。今のお前の仕事は暴力で問題を解決することじゃないからな」
「なんだよ融通効かねえな。いいじゃねえか、人助けもできて怪しい奴もディルエットから追い出せて、一石二鳥じゃん」
「まずは注意して質問を見る癖を付けないと。何か分かることはないか?」
俺は自分にも言い聞かせるように3人に注意した。
何かは具体的に言えないが、この投稿には引っかかる点がある気がするのだ。
「……エルフは悪い人ばかりじゃないし、人間に嫌われている場合もある。エルフについて調べないと何も分からない」
パラスはそう言ってエルフを擁護した。
言われてみれば、全員が全員エルフを嫌いなわけはないか。
魔物にも嫌っている奴はいて、サイラスは今回のトラブルとは別で元々エルフを嫌っていたから過剰に反応している可能性もある。
「そうだね。ちゃんとエルフの言い分も聞かないと公平じゃない」
「これ投稿されてから結構時間経ってるから、もうオーガの連中が武器を持って集まってるはずだ。早く行かねえと終わっちまってるかもな」
サイラスはオーガ達と密な関係にあるから、呼びかけに応えて集まるとしたら当然オーガ達だろう。
エルフが襲われていないか心配だ。
「ああ、早く現場に行って、話し合いでどうにかならないか交渉してみよう」
「よし、じゃあ短剣を返してくれ」
「それは無理。前にも言ったけど、グレードアップしたら返してやるよ」
レイはチッと舌打ちする。
まあレイなら何だかんだ言って積極的にグレードアップのために活動してくれるだろう。
「バーリャもおいで。パラスはどうする?」
「……私はここに残る。魔石板で結果がどうなるかだけ確認する」
そう言うと思った。
まあ3人も行く必要はないし、体の弱いパラスも乱闘が起きそうな場所にわざわざ行きたくないだろう。
「じゃあ行こうか。バーリャ、俺の魔石板に乗って。俺とレイは走ってついていくから」
「おいズリぃぞ! バーリャだけ楽しやがって」
「お前は足速いから乗る必要ないだろ。それに楽するんじゃなくて、魔石板に乗るコツを掴んでもらうためでもあるんだから」
バーリャは不器用なところもあるからレイよりも先に慣れてほしい。
「こ、これが魔石板に乗る感覚なんですね」
「今は俺が制御してるからあんまり不安定にはならないと思うけど、本当は自分で操作しないといけないからね。あとは酔わないように気を付けて」
「分かりました! 頑張ります」
そうして、パラスを残して俺たち3人は鍛冶屋サイラスの元へと向かった。




