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43 不穏な質問

 知恵の塔システムが本格的に始動してからは、寄せられる質問の数も多くなっていった。

 あまり利用されていなかった頃は、住人たちは大抵のことは自己解決できるために必要とされていないとも思っていた。

 しかし、直接自分の生活に関係がない事柄に関しても気軽に興味本位に質問してみようという住人が増えたようで、魔石板での交流は少しずつ活発になっていった。

 想定していた使われ方よりも雑談や宣伝目的の投稿も多いが、それをきっかけに魔石板を通じた交流が深まるのは知恵の塔にとっては好都合だ。

 ただ、それらの投稿者が制裁を受けないかが心配だ。

 質問になっていない投稿をした者を罰した例はまだないが、未だ不安は残る。


「これなんかちょうどいいだろ」


 魔石板で質問を探していたレイが何かに反応する。


「どれどれ?」


<最近隣の家が飼ってるペットが夜中に吠えだしたので困っている。何かいい案はないか>


 ああ、これはよくあることだな。

 よく躾されているペットでも環境や境遇のせいで遠吠えがやめられないという話は珍しくない。

 ここは専門家に預けるよう隣人に提案するのがいいんじゃないかな。

 

<なら俺が2度と吠えられねえように退治してやるぜ! 寝床を争って野犬と一晩中やりあってた俺なら弱点は知り尽くしてるから任せておけ!>


 っておい! そんなご近所トラブルどころじゃ済まないレベルに発展しそうな提案をする奴がいるか!


「レイ、流石にこれはダメだろ。もうちょっと真剣に回答しろ!」


「何言ってんだよ? 俺は真面目にやってるぜ。回答するのも案外楽しいもんだな」


「こんなのどう考えたって新しい問題が増えるだけに決まってるだろ! 今すぐ回答を取り消すんだ!」


「は? 誰がそんなことするかよ! もしこれでベストアンサーに選ばれてたらどうするんだよ! お、返事が来たみたいだぜ」


<あんたの言ってる通りに捲し立ててやったんだが、お隣さんは耳が遠くて遠吠えしていることに気付いてなかったみたいだ。詳しい奴に原因を聞きに行くみたいだから、もう遠吠えに悩まされることもなさそうだ。ありがとう>


 なんだそりゃ!?

 ほとんどレイの回答してる内容が関係ないじゃないか。


「おー、見てみろよソロモン! 俺は最初からこれを狙ってたんだよ」


「本当かよ……」


 いや、まあ確かにこの質問に限って言えばそうするのが正解だったのかもしれないが。

 気軽に質問するのもいいが、もう少しまともな回答をベストアンサーに選んでほしいものだ。


「ここのやり取りは他の人が見ることだってあるんだから、そういった目も意識して回答しないといけないよ」


「分かってるって。俺の計算された回答でこの街の連中を見返してやるぜ!」


 不安だ……こいつはいつかトラブルに巻き込まれて痛い目に遭うに違いない。


 他の2人も魔石板で質問を検索しているのだろうが、パラスの方は積極的ではない様子だ。

 そういえばパラスは経験があるんじゃなかったのか。


「パラス、調子はどう? 何か足りないものがあるなら遠慮なく言ってくれ」


「……前の仕事をしていた時はアドバイスしてくれるフクロウがいたけど、今はいないから時間がかかる」


 もう少し早く言ってくれよ!

 それに、そんな頼りになる助っ人なら俺だって欲しいよ。

 ゴーレムに与える知性を考えるのだって楽じゃないのに。


「そ、そうだったんだね。まあ頑張ってみて。とりあえず、自分の力だけで回答できることだって大事だからね」


「あと、強い武器も貸してもらえた。ソロモンからも何か貸してほしい」


 前の職場ではどれだけ優遇されていたんだろう。

 レイとバーリャの面倒も見ないといけないから、パラスにだけ俺の持ってる武器を貸すわけにもいかない。

 どうにかグレードアップして自分の武器を知恵の塔から受け取ってもらうしかない。


「ごめんだけど、今はパラスに貸せる武器はないんだ。ちょっと我慢してくれないかな?」


「……はい」


 パラスだけだと知恵活には向いていないのかもしれない。

 寓意術に必要な道具を管理するとか、そういった仕事を任せたほうがいいのかも。


 バーリャはというと、真摯に回答してはいるものの後から回答した内容の細部をコロコロ変えたりしていて頼りなさそうだ。

 もしかしたら質問者にあまり信用されなくなっているのかもしれない。


「バーリャ、回答する前にもう少しよく考えてみて。あと、回答をそんなにコロコロ変えると質問している人を不安にさせちゃうよ」


「ごめんなさい。でも後でこうした方が良かったかも?って思い出したらキリがないんです。気を付けます」


「自分が言おうとしていることを頭の中で整理しないとね」


「分かりました」


 本当に分かっているかどうか不安だが、数をこなして慣れてもらうしかないか。

 何事も経験だ。


 俺も他人にアドバイスするだけじゃなくて、実際に回答してみて手本を見せてやろうか。

 そう思って魔石板を見ると、1つの質問が目に留まった。


<俺は鍛冶屋のサイラスだが、よそ者のエルフに土地を奪われそうになっている。奴を誰か黙らせてくれないか>

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