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41 小心者バーリャ

 城へ戻ると、半人半竜の親子がヨルノンさんと話をしていた。

 ヨルノンさんはどこかへ旅行にでもいくかというほどの大荷物を持っていて、親子の応対をするつもりはなさそうだ。

 そのヨルノンさんが俺を見つけると、駆け寄ってきて小声で話してきた。


「ソロモンさん、ちょうどいいところに来ました。少しこの方達の面倒を見ておいてくれませんか? 私は用事があるので」


「どなたですか? 私は魔王様にお会いしたいのであって、低級の悪魔には用はないのですが」


「こちらはソロモンさん、イシュー様直属の異邦からやってきたアドバイザーです。先の戦でもその機転と勇気で見事に敵を圧倒し、イシュー様の信頼も厚い方なんですよ」


 言っていることは間違っていないが、少し大げさだ。

 俺に押し付けようと話を盛っている。


「あら~そうでしたか! それとは知らずにご無礼を。私はメフィテラと申します。うちの子共々よろしくお願いいたします~。こらバーリアライゼ、隠れてないで魔王様の側近の方にご挨拶なさい」


 イシュー様とつながりがあると分かるや否や、急にへりくだってきた。

 メフィテラと名乗る女性の後ろから、バーリャと呼ばれていた少女が出てきて挨拶してきた。


「バーリアライゼです。バーリャとよく呼ばれます。よろしくお願いします」


「俺はソロモン、よろしくね」


 一通り挨拶を交わしてから、ヨルノンさんに小声で事情を聞く。


「この半竜の魔物は何なんですか? やけにイシュー様に拘っているようですけど」


「実は、イシュー様に取り入ろうとバーリャちゃんのご両親がしつこく城に来るんですよ。こういうのは珍しくないんですが、私もいちいち構っていられないのでソロモンさんに相手をしてもらえないかと思って」


 そういうことなのか。

 イシュー様はこのディルエットの統治者だから、そういうことがあっても不思議ではないというか、ないほうがおかしいのか。


「まあ別に構いませんけど。ちょうど知恵袋の弟子を探していたところなので、俺で良ければ面倒見ておきます」


「本当にありがとうございます。助かりました。もうアスファルテ様をお迎えに上がらないといけませんので、それでは失礼します」


 そう言うと、ヨルノンさんは足早に城から出て行った。


「それで、魔王様はどちらにいらっしゃるのでしょうか?」


 メフィテラが詰め寄ってくる。顔がすごく近い。

 頭からやや前方に向かって生えた2本の曲がった角が、俺の顔に当たらないように少し仰け反っているので姿勢が苦しい。

 イシュー様はおそらくゴーレム製造に没頭しているのだろう。

 馬鹿正直に居場所を教えると部屋まで押しかけるだろうが、そうなるとイシュー様の機嫌を酷く損ねるに違いない。


「いや、今は城にはいませんね。アス…ファルテ様を迎える準備をするとかで出かけるとは言っていた気がしますよ」


 咄嗟に嘘をつく。

 イシュー様の妹だったか。確かディルエットが平和を取り戻したら、疎開している妹を帰らせたいと言っていたっけか。


「それはそれは、入れ違いになってしまいましたか。午前中はここにいると聞いていたのですが」


「まあ、今日のところは帰っていただいて……」


「今から街に探しに行って来ますわ。バーリャ、ここで待っていなさい。後で迎えに来ますから。ソロモン様に失礼のないようにね」


「はい、分かりましたお母さん」


 そうしてメフィテラもバーリャをおいて城を出て行ってしまった。


 バーリャは白いワンピースを着ていて、体の各所にはドラゴンの特徴が見られる。

 翼は綺麗に折りたたまれていて、開く気配はない。

 見た目からすると、広げるとそこそこの大きさがあるように思える。

 尻尾には青いリボンが独特な結び方で付けられている。


 装飾が施された履物は、バーリャが歩くたびにカッカッという音を響かせている。

 親子の身に付けているものから推測すると、半人半竜は魔物の中でも裕福なのだろう。


「バーリャ、知恵活に興味はない?」


「知恵活って何ですか?」


「街で困っている人や魔石板で助けてほしいってメッセージを送っている人のお手伝いをする仕事なんだ。ほら、これを見て」


 手元の魔石板を取り出して、これまでに解決してきた質問の一覧を見せてみる。


「わぁ……すごい。これが魔石板なんですか?」


 知恵活よりも知恵の塔システムそのものへの興味の方が強いようだが、きっかけとしては別に悪くないか。


「もし知恵活をしてくれるなら、この魔石板を1枚バーリャにプレゼントしよう」


「本当に?! 知恵活やってみたいです!」


 それからはメフィテラが迎えに来るまでバーリャに魔石板の使い方を教えた。

 バーリャは興味津々だったものの、このような魔道具には慣れていないのか操作を覚えるのに時間がかかった。

 ビーネにお願いして余っている紙を分けてもらい、メモを取らせながら教えると何とか基本的な操作を覚えさせることができた。

 

「バーリャの他にも2人、知恵活を始めてくれる仲間がいるんだ。また今度知恵活について詳しく教える時に皆には集まってもらうからよろしくね」


「分かりましたソロモンさん。今日はありがとうございました」


 メフィテラにも魔石板と知恵活について説明し、バーリャが知恵活をすることについての許可をもらった。


 これで新しい知恵袋役は3人も増えた。

 イシュー様のためにも彼ら自身のためにも、しっかりと仕事がこなせるように指導しなくては。

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