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39 堕天使パラス

 魔石板は何枚くらい用意すればいいだろうか。

 初日でそんなに多くの魔物をスカウトできるとは思わないので、3枚もあれば十分だろう。


 知恵の塔の管理室に置いてある予備の魔石板を点検する。

 使えそうなものは5,6枚あるが、画面の表示がおかしい物や一部が欠けたりして使いにくいものもある。

 まあ壊れかけているとしても、乱暴に扱う者のことを想定すれば無駄にはならないだろう。

 腕白なゴブリンやリザードマンの子供達に渡せばどうなるかは明白だ。


 俺の使っている手元の魔石板の予備の分も勘定に入れるとして、どれだけの数が必要かは弟子志望の魔物の人数で決めるとしようか。


 まずはイシュー様の言う「黒い翼の魔物」を探すことにする。

 以前は街でふらふらと歩いているところに偶然出くわしたようなので、そのうち会えるだろう。





 とりあえず魔石掲示板へ向かう。

 そこでたむろしている魔物なら、知恵袋に興味を持ってくれる可能性が高い。


 しかし、期待に反して魔石掲示板は既に魔物たちの興味を失ってしまっていた。

 言葉を書き込める機能で遊べるだけではさすがに飽きられてしまうか。


 当てが外れたので黒い翼の魔物から探すことにする。

 いったい彼女は普段は何をしているんだろうか。

 あの様子だとろくに仕事もしていないさそうだし、どうやって生活しているのか不思議だ。


 メルクルたちに彼女を知らないか聞いてみよう。

 本来は彼らの仕事ではないから、また人探しのゴーレムを新たに造っておくことも考えておこう。


「黒いボロボロの翼で、フードを被った魔物を探している。心当たりはあるか?」


「他に特徴はございますか? 男性ですか、女性ですか?」


「女性だ」


「髪の色は黒ですか?」


「いや、髪は白くて長い。フードの中から出ているくらいには長い」


「ディルエットのどのあたりによくいますか? 市場にはよく来られるのでしょうか?」


「それは良く分からない。だがこの街にいるのは確かだ」


「少々お待ちください……いえ、そのような特徴の方は存じ上げておりません。少なくとも市場の方にはあまり来られない方のようです」


「そうか。ありがとう」


<新たなゴーレムの設計図を知恵の塔に送信しました>


 今のやり取りから新たなゴーレムが開発されたようだ。

 これからもより魔物たちの交流が盛んになっていくだろうから、人探しに適したゴーレムは是非とも用意しておきたい。


 市場とは別のところを探してみよう。

 検討を付けるために前に会った時の状況を思い出してみる。


 早朝だったが、建物の陰であまり陽の光が当たらない場所だったか。

 まだあの時は城の中のこともよく知らなくて、魔石板の操作もあまり上手くはなかったな。

 そんな時に元気がなさそうな彼女を見て、何か力になれればと声をかけたんだった。


 直接探しに行ってもいいが、どうせなら寓意術の練習に利用させてもらう。

 人気のないところにいそうなら、影を頼りにしよう。

 影に簡易なタルパを憑依させて、壁の近くの様子を知覚できるような寓意術を考える。

 壁に耳あり、障子に目ありとは言うけれど、流石にこの世界に障子はないか。

 タルパとアレゴリーを組み合わせて、まとめた呪術を禺意術と仮に名付ける。


「壁に耳あり、亀裂に目あり。捜し求める禺意術(ぐういじゅつ)、発動」


 影という響きから黒いトカゲの姿を何体か連想してタルパとして形作る。

 そして城の影に手を触れてトカゲのイメージを流し込む。

 すると、影からするっと黒いトカゲが現れて、そのまま壁を這って俺から離れていった。

 壁を自由に這っている様子はトカゲというよりヤモリだ。

 壁虎(ヤモリ)のタルパが壁を這った跡から、影でできた耳や目が周囲の様子を伺い情報を収集する。


 直接俺の意識に情報を集めると脳内が混乱することが予想されるので、魔石板に簡易な地図を描いてそこに集められた情報を保存していき逐次に確認していく。

 するとそれらしきフードを被った魔物が地面に座っているのが見えた。


「見つけたぞ。行くか」





 久しぶりに会ったその黒い翼の魔物に声をかける。


「よっ、久しぶり! 元気……そうでもなさそうだけど」


「……誰?」


「結構前に会ったとことがあると思うんだけど、覚えてない?」


「……全然」


 まああまり深く話をしなかったので印象には残っていないか。

 いや、そもそも俺の外見が変わり過ぎていてるから気付かないのか。

 あれからグレードアップ報酬でかなり見た目は変わっている。

 この子とあった時との共通点は魔石板を持っていることくらいか。

 あの時は名乗ってもいなかったから覚えていなくても仕方がない。


「いや、覚えてなくても別にいいんだ。俺の名前はソロモン、君の名前は?」


「私の名前は…………パラス」


「パラスか、よろしくな」


「何か用?」


「実は、俺は今この街で住人の疑問を解決する知恵活っていう仕事をしてるんだ。それも知らない?」


「……少し聞いたことがある」


「それで一緒に仕事をしてくる人を探しているんだけど、パラスもどうかな?」


「……うーん」


「無理にとは言わないけれど、一緒に仕事をしてくれると俺もすごい助かるんだ」


「前に似たようなことしていたことがある」


「え、本当に? だったらぜひ来てほしい。きっと君ならみんなの役に立てるよ!」


「……少しだけなら。もう今の私はあんまり働けないから」


 病気か何かで働けないのだろうか。

 それよりも似たような仕事をしていたというのが気になる。


「少し気になったことがあるんだけど、君が前にしてたっていう知恵活に似た仕事について話を聞かせてくれないか? 参考にしたいんだ」


「……今は話したくない」


「そ、そうか。また話したくなった時でいいから教えてくれると助かる」


「……うん」


「今後の活躍を期待して、君には役知恵袋の称号を与えよう!」


 パラスは引っ込み思案な性格だが、知恵袋役として一緒に行動していれば心を開いてくれるだろうか。

 経験があるなら、弟子とはいわず即戦力になるかもしれない。


 パラスに魔石板を渡して使い方をあらかた説明すると、すんなりと理解してしまった。

 会話は不得意でもこのような道具を使うのは得意なのだろうか。

 魔法は使えないそうだが、魔道具を使いこなせる能力とは関係ないということなのか。


 パラスとはそこで別れ、俺は他の候補を探すためにまた街の中へ出かけて行った。

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