38 弟子
戦場となった岩壁の補修作業と海岸の清掃作業もほとんど終わり、イシュー様にも休む余裕ができた。
だがそのイシュー様はというと、ようやく仕事がひと段落したばかりだというのに「気晴らしにゴーレムでも作ってやろう」と言い始めた。
作業をするゴーレムに絶え間なく指示を出していて疲れていそうだったから、今すぐでなくてもいいと遠慮したのだが……
「何だ、休め休めという割には設計図を送り付けているじゃない。ホントは造ってほしいなら、素直にそう言いなさいよ」
「いやぁ、なんか悪い気がしまして」
「私は好きでゴーレム造ってるのに。もしかして嫌々造ってると思ってるの?」
「いえ、そういう訳じゃないんです」
「なら今から造るから! もう1ヵ月分はゴーレムを操作したかな。久しぶりにゴーレムを造れて嬉しい。えーと……」
そう言ってイシュー様は石板に表示されている設計図を見ながら、部品となる適当な石を手に取って加工していく。
どうやら無理してゴーレムを造ってくれているのではなく、本心からゴーレムを造りたくて造っているようだ。
「ところでソロモン、弟子を取ってみたらどう?」
「弟子……ですか」
弟子を取ることなど考えたこともなかったが、ゴーレム以外でも仕事を手伝ってくれる者がいれば、調子が悪くなったとしてもある程度のことは任せておける。
一人前の知恵袋役は急には務まらないだろう。
俺もまだまだ力不足だし他人に偉そうに言える立場ではないが……。
今までの自分の経験や知識を伝えて育てるには長い時間が必要だ。始めるならできるだけ早いほうがいいだろう。
思い返せば、質問を受け付けるのが俺だけだと都合が悪いことも多かった。特にアルクァのこととか。
もっと幅広く質問に答えられる体制を整えておかなければいけない。
「分かりましたイシュー様、弟子を取ろうと思います」
「そうか! ソロモンも部下を育てる苦労を知るといいぞ。いい経験になる」
「ところで宛てはあるんですか?」
「うーん、暇そうな奴から誘ってみたらどう? あの黒い羽の魔物とかさ」
黒い羽の魔物……以前街で見かけた少女のことだろうか。
あの時は仕事を始めたばかりで構ってやる余裕はなかった。
コミュニケーションが取れるかどうか不安だが、精一杯やってみよう。
「あとは子供たちも誘ってみようと思います。大人なら自分でもある程度のことは解決できますが、子供のことは子供にしか分からない場合もあるので」
「そうだな。それに無駄に遊ばせているより街に貢献させる方がいいだろう」
不安だとは思ったが、あんなふうに会話をしない人にしか解決できないこともあるだろうから、あまり考えすぎないようにしておこう。
意外になんとかなるかもしれない。
「それなら少し余っている魔石板を貰っていきますね」
「まだあったかな? もし足りなかったり少なかったりしたら私とヨルノンに連絡して。予備の分も用意して置かないとね」
「了解です。それじゃあ行ってきます」




