21 アンティコアとアロマムシ
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とても励みになります。いつ言うべきか迷っていましたが、今言うことにします。
アンティコアとはなんだろうか。ディルエットの近くの森には普段いないということだが、魔物の間にも大まかな敵味方の区別があって、ここの住人とアンティコアとやらは協力関係にはないらしい。とりあえず魔石掲示板に急いで行ってみないと。
アンティコアのことは何も知らないが、とにかく情報を集めないことには対策も立てられない。それに俺には魔石板の防御と、不完全な状態ではあるものの武器と盾もある。少し前までとは違い、多少の危険を伴う問題に首を突っ込んでも平気だ。
魔石掲示板の前には2人の小柄な獣人がいて、誰か来ないかそわそわと待っている様子だ。頭は犬か狼のような見た目をしている。
「君たちが質問を書き込んだの?」
「あなたは変た……じゃなくて雷神鬼ソロモン! 父さんたちに質問を書き込むように言われてきたんです!」
変態と言いかけたように聞こえた。あの鍛冶屋のオヤジが変な噂を流しているのか? それともおしゃべりなアルクァにバラされてしまったのか? 今はどっちでもいいか。それどころではない。
「落ち着いて。君たちの名前は?」
「僕はパウィオン」
「私はクラレット」
灰と白の体毛の少年はパウィオン、茶色の体毛に薄い赤い毛が少し混じった少女はクラレットというらしい。
「それで、アンティコアっていうのは何?」
「知らないの? 知ってるから来てくれたんじゃないの?」
「いいよ、喋るより直接見に来てもらおうよ。時間もないし、父さんたちが心配だ。はやくついてきて!」
「じゃあ質問には<アスキノフィヨールまで来て>って付け加えとかないと……よし、行こう!」
2人は4足歩行状態になって急いで駆けていく。俺は魔石板のスピードを上げて必死に追いかけていった。魔石板に乗って移動しながら2人にもう一度アンティコアについて聞いてみる。
「知らないのは悪かったって! でも協力したいっていうのは本当だよ。それで、どんな奴らか教えてくれないか?」
「巨大な気持ち悪い虫を何十匹も連れてくる大きなアリよ!」
「そいつらは、飼ってるアロマムシって奴にサトリグサの葉を全部食わせてしまうんだ!」
「私たちの分なんて残してくれないし、アリのくせに武器も持ってて攻撃してくる! おまけに毒の尻尾で刺されたらすごく痛いって言ってた!」
毒の針を持っていて2本の腕は人間のように道具を使える大きなアリがアンティコアというらしい。そこでまた疑問が増えてしまった。アロマムシとサトリグサも分からない。
興味本位で質問に対応していると思われてしまっただろうか。実際その通りだが、俺も魔力源にできそうな物を見つけないといけない。質問を解決するついでに、何か収穫があればいいのだが。
「それで、何でパウィオンたちはサトリグサを採りに行ったの?」
「ああ、それはね。確かにサトリグサは危険だけど、ちゃんと対策してみんなで採りに行けば全然大丈夫だからよ」
質問を違った意味で聞き取られたようだ。
サトリグサは危険な植物らしい。そしてこの獣人たちは安全な採取の仕方を知っているらしい。
「サトリグサは薬の調合に便利だから、皆いい値段で買ってくれる。子供だけで採りに行くのはダメって言ってるけど、僕とクラレットなら大丈夫だと思うんだよね」
「パウィオンは考えが甘すぎ! 少なくとも大人3人いないと危ないって言われてるの覚えてないの?」
「それで、どんな方法でサトリグサを採ってるの?」
「それは見たらわかるから! でも1人だったらソロモンでも無理かもね」
「大勢で行かないと危ないってことか? だからアンティコアはたくさんアロマムシを連れてるのか」
「それは分からない。父さんも何が何だか分からないって言ってた」
「サトリグサの蔓には絡まってるのに、サトリグサから怪物が出てこないの。アロマムシはその蔓ごと食べてしまって、どんどんサトリグサはなくなっちゃう」
その時だった。何者かが樹の上から大声でこちらに吠えてきた。
「パウィオンとクラレットか! 早く樹に登れ!」
「父さん! ソロモンを連れてきたよ!」
「ソロモン様! 助かった。早くあいつらを何とか追い返す方法を教えてください」
「それは……今から考えます」
「えぇっ、何しに来たんだあんた! とりあえず、あんたはサトリグサに近づくなよ!」
樹の上には4人の獣人がいた。各々武器と鎌を持っており、2人は葉が詰まった袋を提げていて体にロープを巻き付けている。この袋に入っているのがサトリグサの葉のようだ。
視線を獣人たちと同じ方向へやると、4本の足で立っている大きなアリが十数匹いる。ものすごく足の短いケンタウロスのような見た目だ。こいつらがアンティコアか。そしてアンティコアは、1メートルはありそうな大きさのアブラムシの群れを見張るようにしている。この馬鹿でかい虫がアロマムシだろう。アロマムシが体を震わせると、受け皿を持ったアンティコアが近寄っていく。そしてアロマムシから排出される液体をアンティコアが集めて、携帯している革袋の中に入れていく。
俺は、自分が探し求めている物にたどり着いたような予感がしていた。このアロマムシを何匹か奪ってやるのが今回の俺の使命だ。




