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20 知恵ある者の姿勢

 俺は悩んでいた。

 あれから多くの魔物の要望に応えて、アルクルシリーズは3体も増やした。

 エットに続き、それらはトヴォ、トゥリア、フィーラと名付けた。

 それぞれケンタウロス、2足歩行と4足歩行を頻繁に使い分ける魔物、有翼の魔物のために造られた。

 鎧や服を作るために依頼者の代わりに職人のところへと出向いて作業に協力したり、既に作られた商品に合わせて体のパーツを換装してメルクルシリーズと一緒に宣伝したりしている。


 それはいいのだが、とうとう知恵の塔の魔力供給量の許容限界を超えてしまい、先日は一番忙しくなる昼過ぎ頃に突然ゴーレムたちが一斉に動かなくなってしまった。

 当然魔石掲示板への書き込みが殺到し、ゴーレムたちの復旧を急かされた。

 街にゴーレムたちが馴染んできているのは嬉しいが、ここまで依存されているのは少し不安になる。


 その時はイシュー様が特別に対応してくれた。

 イシュー様が貯蔵していた魔力を多く含む白黒の石をいくつか粉々に砕いて知恵の塔の植物に肥料として与えたことで、その日はなんとかなった。

 しかし、敵がいつ攻めてくるかも分からないこの状況では、そう何度も同じことはしてやれないと言われてしまった。


「なんとかしろソロモン。いつもみたいに上手くできないの? ヨルノンはなんて言ってる?」


「ヨルノンさんにも相談して、知恵の塔が配分する魔力の量を調節してもらっています。今のところ最低限の仕事をゴーレムたちに任せられていますが、これ以上ゴーレムを増やすのは無理です」


「ゴーレムの魔力使用量を調節するだけじゃダメね。他の方法を考えてきて」


 俺が使える魔石板の能力も制限されてしまっている。

 悪魔の肉体の成長に伴って食物から生成できる魔力量は増えたため、魔石板に使える魔力の量は少なくはないが、知恵の塔のバックアップを受けるの難しい状況だ。

 せっかくフラガラックとデッドエンドを授けてもらったのに、本領発揮はしばらくお預けになりそうだ。


 市場に流通している魔力が蓄積された商品などを知恵の塔のために買う方法は控えるようにヨルノンさんにお願いされてしまった。

 根本的な解決にはならないうえ、知恵の塔に十分に供給する分を市場から集めてしまうと、市場を混乱させてしまうおそれがあるからだそうだ。


「それではソロモンさん、魔石掲示板のための魔力は確保しておきますので、魔物たちからアイデアを募って解決法を探ってもらえませんか?」


「ありがとうございます。何とかやってみますよ」


 今までは質問を解決する立場にしかなかったが、今度は俺が質問して問題を解決することになった。


 振り返ってみると、俺は知恵フクロウではあまり質問してこなかった。

 せいぜい俺が間違えた回答をしてしまった時に質問という形式を利用して訂正したり、間違えた回答がベストアンサーに選ばれた時に老婆心でメッセージを送ったりといったことに利用するだけだった。

 まさか知恵フクロウではなくて、知恵の塔から魔物たちに質問をすることになるとは思ってもみなかった。


 質問を解決するために回答している立場から言うのも変なことだが、俺は自分が質問することに関しては自分でもよく分からない抵抗感があった。

 それはおそらく、分からないことがあったらまず検索して調べる、自分で考えてから質問する、と知恵フクロウでは口を酸っぱくして言われる言葉が頭に染みついてしまっていたからだろう。

 気軽に質問を投稿してください、なんて知恵フクロウの運営は謳っているが、回答者の多くはそう考えてはいない。

 質問者にほんの少しでも落ち度があれば、その点をしつこく指摘してくる回答者がいるというのはさほど珍しいことではない。

 そのようなやり取りから本題からそれて喧嘩になってしまっているというのは多々あることだ。

 そういう実情から、俺には気軽に質問するという習慣がなかった。


 回答する側は質問者に対して真摯であるべきだと俺は思っている。

 一見、少し考えれば答えが分かるような疑問にも見落としがちな落とし穴はあるものだし、分からないと素直に告白し助けを求めている声に向き合うのが回答者の義務だとも思っている。

 もちろん質問する側にも非はある。

 自分の頭で考えるのは面倒だ、検索しても分からないから質問しているのであってさっさと答えてくれればいい、といった態度を隠さない者は多い。

 さらに不真面目な質問者は、たいしてユーモアのない釣り質問で多くの人の時間をドブに捨てようと企んでもいる。


 こちらの世界に来てから解決した大きな2つの問題は、どれも他人には相談しにくいものだった。

 鉱石屋の店主の疑問は常識的に考えて誰もがすぐに諦める些末なものだったし、アルクァのように相談できる相手が身近にいない場合もある。

 どうせ自分の時間を他人のために使うなら、こういった本当に困っている人たちの助けになりたいと思うばかりだ。


 つい思考が脱線してしまった。

 俺の悪い癖だ。知恵の塔に実現させたい理想の運用方法は山ほどあるが、それを叶えるためにも魔力源の問題をどうにかしないといけない。

 魔石板から質問を投稿しようと画面を確認すると、質問が投稿されているのに気が付いた。


<森林に普段はいないアンティコアと揉めている 奴らを追い払う方法を教えてくれ>

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