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19 グレードアップ3⇒4 矛と盾

 知恵の塔へ行くとヨルノンさんとイシュー様が待っていた。


「お待ちしていましたよ、ソロモンさん」


「いつものアレですね。ところで、そろそろ俺もまともに使えそうな武器が欲しいんです。なんとかなりませんか? 通報電はなかなか使いどころが難しくて」


「私に言われても困ってしまいます。こればっかりはグレードアップ後の確認で初めて分かることなのです。まあ楽しみにしておいてください♪」


 ヨルノンさんでも分からないのか。知恵の塔は色々と謎が多い。考える人に似た石像のことも聞きそびれたままだ。おそらくあの像に秘密があるに違いない。グレードアップから目を覚まして覚えていたら聞いてみよう……





 目が覚めた。手元の魔石板にはあまり変わったことがないようだ……と思っていたら、俺はイシュー様に抱きつかれていることに気が付いた。


「ちょっと。何してるんですかイシュー様」


「何って、こうしてイケメンとの抱擁を堪能しているに決まってるじゃない」


 イケメン? 何を言っているんだ? 俺はアルクァに子ども扱いされる威厳のない容姿をしているはずだ。

 ヨルノンさんが鏡を持ってきて俺に見せてきた。見ると、鏡には凛々しい顔立ちだが、あっけにとられた表情をしている悪魔が映っていた。おまけ程度に付いていた短い尻尾も何故か長くなっている。


「前回のグレードアップでソロモンさんの体が成長した時に、イシュー様は少し不満だったようでして」


「そうよ! 仮にも魔王直属の部下なんだからもっと堂々とした雰囲気じゃないと格好悪いじゃない。だから知恵の塔に向かって1日も欠かさずに、私の理想の悪魔の姿を想像してその思念を送り付けていたのよ。もっと感謝しなさい!」


「えぇ……そんなことしてたんですか」


 外見に満足していたと言えば嘘になる。俺の格好のことを気にかけてくれる人がいるというのも嬉しい。しかし、少しだけストーカーに狙われている人の気持ちが分かるような気がした。お人形遊びをしているんじゃないんだから、俺に秘密にしておかないで予告しておいてくれていたら、少しは見た目が大きく変わることについて心の準備ができていたのに。

 まあ今更言ってもイシュー様は聞かないだろうし、結果的に得したんだから気にしないでおくか。それに、見た目の印象が良いというのは今後の知恵活にとっては大きくプラスになるだろう。


「それからアレのことについても話しておきましょう。ソロモンさんが丸一日寝ている間にお望みの機能が追加されましたよ。魔石板を確認してください」


 丸一日って、そんなに俺は寝ていたのか。体にも大きな変化があったからだろうか。これからグレードアップしていく度に長くなっていくんだろうか。今はそんな心配はひとまず置いておこう。

 俺は魔石板を操作して情報を確かめる。


<ソロモン グレード4 ライフ3>


回答者(アンサラーズ)権限(オーソリティ)1・通報電>


<回答者権限2・回答者の剣 ライフ5>


<回答者権限3・質問者の盾 ライフ10>


 新たな回答者権限を取得していた。名前からして武器のようだ。今まで手ごろな武器がなかったから必要でもない苦労をしてきたが、これでようやく他の魔物とも渡り合える。

 まず、回答者の剣から説明を読んでいこう。


<使用者の思念を魔石板が読み取り直接手で触れずに操作可能 移動用魔石板に格納されている>


 足元の魔石板の中にあるそうだが見た目では分からない。とりあえず手探りで思念を送ってみよう。そうして回答者の剣を右手で掴む想像をすると、魔石板から一本の剣が鞘ごと飛び出てきて、俺の右手に収まった。鞘は硬そうな鉱石でできている。このまま振り回せば鈍器として使えそうだ。


「これは、剣を自在に操る魔法ですか。魔物が扱うにしては珍しいですね」


 手に移動させる以外にも動かせるのだろうか。試しにこの部屋の壁に当ててみよう。

 俺は剣を空中にとどめて置き、右手で銃を撃つポーズを作って壁の一角を指さし、剣に飛んでいくようにイメージを送った。そうすると、そこへ向かって剣は矢のように飛んでいき、壁に当たって鈍い音が響いた。


「初めて扱っているにしては使いこなすのが早いですね。魔石板と意識が繋がっているだけはありますね」


 確かに、今までこんなことをしたことが無かったのに、直感だけでこれだけ操縦できていることに自分でも驚いている。


 鞘から引き抜いた刀身は薄くて切れ味が良さそうだ。それにものすごく軽い。鞘にしまった状態と、引き抜いた状態を上手く戦闘中に使い分けていくことが重要になりそうだ。


 一通り剣の操作を試したので魔石板に戻すイメージを送る。魔石板に埋め込まれるようにして収納されるその様子は、タブレット端末のタッチペンのようだ。


 次に、質問者の盾の情報を見る。


<使用者の思念を魔石板が読み取り大きさを調整しながらの展開が可能 敵の攻撃の威力を吸収して緩和する 耐久値がなくなると自動で収納され一定時間使用不可になる>


 盾の見た目の想像がつかないが、先程と同じように自分の前に広がって守ってくれる盾のイメージを送ってみる。すると、足元の魔石板から数十枚の羽根のような部品が付いた石板がスライドしながら飛び出してきた。そして羽の部品が展開されて大きくなり、目の前に浮いている。

 盾の前方にはアーチ状の紋様が刻まれている。これが説明にあった、敵の攻撃を吸収する機構なんだろうか。そして耐久値とは、剣のステータス情報にもあったがこの盾のライフのことだろう。


「その武器私が作ってあげたんだよね」


「イシュー様が俺のために? ありがとうございます!」


「そうよ、せっかくだからいい名前付けておいてね。知恵の塔が勝手につけた回答者の剣と質問者の盾じゃ味気ないから。あ、もうあんまり気にしてないけど、ゴーレムみたいに数字を付けるのはナシね」


「はは……努力します」


 ゴーレムと違って一点物だし、少し真面目に考えてそこそこまともな名前を付けるか。





 無事にグレードアップが完了してから、俺は自分の部屋に戻って名前の候補に挙がりそうな単語を魔石板で検索していた。しっくり来る単語を探しているとすっかり暗くなってしまっていたが、ようやくいい単語に巡り合えた。

 

 回答者の剣には、思念を送って自在に操作できる特徴から、神話の武器になぞらえて快刀(かいとう)フラガラックと名付けた。どんなに複雑で難しい問題が目の前に立ちはだかっても、よく切れる刀で断つように鮮やかに解決していくという思いを込めた。


 そして質問者の盾には、その形状と能力の性質から貭門(しつもん)デッドエンドと名付けた。問題を解決する行動を邪魔する敵の攻撃が、行き詰まりを意味する盾に吸収されて無駄に終わるようにと願いを込めた。


 魔石板が強くなったのは嬉しいが、また知恵の塔の魔力供給に更に負担をかけることになってしまった。明日から知恵の塔の魔力源を確保できる方法がないか模索していかないと。

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