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22 読心植物サトリグサ

 獣人たちはサトリグサと呼ばれる植物をかなり危険視しているようだが、その一方でアロマムシはサトリグサの抵抗を気にもかけていないようだった。アロマムシはサトリグサにとって天敵なのだろうか。


「どうする? このまま黙って何もしないでサトリグサを食われるのは癪だが、奴らの毒は危険すぎる」


「クソッ! こんなところまでアンティコアが来るなんて」


「あの、忙しいところ悪いんですけど、アロマムシを捕まえるのに協力してもらえませんか?」


「何? アロマムシなんてどうでもいいから、とりあえずアンティコアを追い払って、サトリグサが生える貴重な場所は守らないといけない。大体あんなもん気持ち悪いもん捕まえてどうすんだ。ペットにでもする気か?」


「アンティコアはアロマムシの体液を集める目的で餌を食べさせるためにここまでやってきているんですよね? そうすると、体を震わせているアロマムシを奪ってやれば、奴らの注意を引くことができると思うんです」


「それはそうだが、どうやってあの警備をくぐり抜けるつもりだ?」


「俺の魔石板のスピードなら十分に奴らを撒けると思います。そうして何匹か引き付けている間に、あなたたちにもアロマムシを捕まえてほしいんです。しんがりは務めますから、どうにかディルエットまで戻ってください」


「確かにあんたの雷撃があれば、奴らを一斉に始末できるかもしれないな」


「これで思い知らせてやって、二度とアスキノフィヨールに近づけないようにしてやる」


「でもなんで私たちまでアロマムシを?」


「それはその……数を減らして奴らを混乱させて時間稼ぎをするためです。異変に気付けば撤退させることもできると()んでいます」


 これは嘘だった。単にアロマムシを街まで持ち帰って繁殖させたいからだ。

 アロマムシがサトリグサ以外で何を食べるか知らないが、当分はこの獣人たちや流通しているサトリグサを可能な限り買い取ってしのげるだろう。それが尽きるまでには、サトリグサを栽培する方法を確立させたい。もしディルエットの中か岩壁の近くに農園を作ることができれば、アンティコアとの衝突も避けられるだろう。

 しかし不思議だ。サトリグサは有用らしいが、自生しているものをわざわざ危険を冒してまで採りにいくのが一般的なのだろうか。近づくなと強く念を押されたので相当危険なのは分かるが、栽培するのも難しいんだろうか。単に獣人たちに育てるだけの準備ができないだけなのかもしれないが、獣人たちに限らずディルエットの魔物たちはサトリグサを育てる気がないように見える。


「このまま黙っていても仕方がない。あんたの作戦に乗るよ。でも逃げ遅れてサトリグサかアンティコアに捕まっても恨むなよ。距離が離れそうだから救助用のロープも巻き付けてはやれない。あんたが捕まったとしても、そのまま俺たちはディルエットに帰るだけだからな」


「それでも構いません。この悪知恵袋のソロモンに任せておいてください!」


 そして、俺は魔石板を操作させてパウィオンたちが書き込んだ質問を回答受け付け中止状態にした。パウィオンとクラレットは先に街に戻り、残った獣人たちはアロマムシを奪い取る準備を整えていつでも樹から降りられる体勢になった。俺は獣人たちから救助用で用意したというロープを借りた。


 1匹のアロマムシが体を小さく震わせ始めた。そして一番近くにいた1匹のアンティコアが武器をしまい、受け皿を取り出した。その瞬間を見逃さずに俺はデッドエンドを構えて突撃する。

 アロマムシから体液を回収する準備をしていたアンティコアの意表を突く。そのアンティコアにデッドエンドを思い切りぶつけ、後ろによろけさせる。

 その物音に気付いた周囲のアンティコア2匹がすぐさま、構えていた槍をこちらに向けて突撃してくる。


「フラガラック!」


 鞘と刀身に分けて2匹の頭部に目掛けて飛ぶようにフラガラックに思念を送って指示する。硬い鞘は1匹の額に命中して思い切り仰け反らせ、もう1匹の方には槍を躱して胸部に突き刺さる。アロマムシの周囲にいた3匹を無力化したので、ロープを使ってアロマムシを魔石板に縛り付ける。


 しかし、最初に体当たりしたアンティコアが起き上がるのが予想以上に早く、槍を構えるまでもなくこちらに向かって投擲しようとしているのが見えた。間に合わないか? いや、ここでアロマムシを縛り付けるまでもない。持ったまま逃げて、余裕ができてから暴れるアロマムシを押さえつければいい。


 槍を飛ばそうとするのが見えたので勢いをつけて後ろへ大きく飛ぶ。だが、あれだけ注意されていたサトリグサのことをすっかり忘れてしまっていた。()退()いた先にいたサトリグサが反射的に伸ばしたであろう蔦に魔石板が引っかかって、俺は地面に倒れこむ。このままだとアンティコアに追いつかれる。魔石板ごと体勢を立て直そうとした時だった。


 サトリグサの茎の先にある蕾のように見える器官が、あっという間に風船のように膨張していく。そして、転生前の世界で俺を轢いた自動車をその大きさ、色合い、中にいた運転手まで忠実に再現してみせた。


 俺はあの時の恐怖が頭の中で蘇り、恐怖でその場に座り込んでしまった。

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