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13 グレードアップ2⇒3 回答者権限取得

 翌日は起きるのが遅かった。大怪我をしたわけではないが、かなり体力を消耗していたからだろうか。あと1時間ほどで正午になるというところで目が覚めた。

 朝食をとってからアインを探す。しかし、知恵の塔にも研究室にも城中のどこの部屋にもアインがいない。先に市場へ出かけてしまったのだろうか。アインだけで大丈夫だろうか。そう思っているとヨルノンさんが挨拶してきた。


「おはようございます、ソロモンさん。メルクル・アインをお探しですか?そのことでしたら、朝から市場へ出かけて仕事を始めているようですよ」


「ありがとうございます。俺ももう市場へ行きます」


 護衛ゴーレムのイチを連れて市場へ行く。市場へ着くとアインの前に列ができていて5人ほど並んでいた。アインはどうやら市場で商品を探している魔物の相談に乗っているようだ。


「3時ごろまでにもう一度市場へ立ち寄るが、それまでに薬草を何本か探しておいてくれないか? できるだけ出費は押さえたいがあまりにも質が悪いと困るから、どの店にどれだけ置いてあるか後で教えてくれ」


「かしこまりました、お調べしておきます。その時間帯でしたらあの掲示板のあたりで待機しておきますのでお声がけください。次の方どうぞ」


「値下げ交渉をしたいのだけれど、私が直接話すといつも怒られてしまうの。代わりにどの条件でいくらまで下げられるか聞いておいてくれないかしら?これとこれなんだけれども……」


 忙しい魔物の代わりに商品を探す作業や、会話が苦手な魔物の代わりに店舗への交渉作業を請け負っているようだ。これまで市場を上手く活用できなかった魔物が商品を気軽に買えるようになると、ますます活気に溢れるだろう。

 しかし、アインだけでは仕事量が多すぎて手が回っていないように見える。俺も手伝おうと思った時だった。城から別のゴーレムが2体市場へと向かってくるのが見えたので、そちらに向かう。


「もしかして市場での仕事を任されたゴーレムか?」


「その通りです。先ほど私どもの製造が完了いたしました。イシュー様より、ソロモン様から名前を授かるように指示されております。私共に名前をお与えください」


 2体のうち、大きな荷車を軽々と牽引(けんいん)しながらやってきた大柄なゴーレムがそう答えた。隣には、たくさんの引き出しがある大きな箱を背負ったゴーレムがいる。


「なら荷車を引いているお前はメルクル・ツヴァイだ。そして箱を背負っているお前はメルクル・ドライだ。アインと一緒に、市場で困っている魔物を見かけたら助けてやってくれ」


「承知しました」


 ツヴァイは大きな商品の運搬や店舗の設営、ドライは小さな商品の管理や小さい貴重品や金銭の管理の仕事を引き受けていた。知恵の塔は役割分担を見越したうえで設計図を書いたのだろう。


 その日の夕方、グレードアップの条件が満たされたという魔石板の通知を受けたので知恵の塔へ向かう。メルクルたちが働いてくれたおかげだろう。


 知恵の塔の間にはヨルノンさんが待っていた。


「お待ちしておりました。さっそくグレードアップに取り掛かりましょう」


 そうヨルノンさんが言うと急に眠くなってきた。


「いいですよ、そのまま眠りについてください。グレードアップしている間は寝ている必要がありますから……」


 目が覚めた。自分の体を確認してみると、もう一回り体が大きくなったようだ。周囲の景色と比べて推測するに、俺を追い回してきたゴブリンの子供と同じくらいの背丈はあるのではないか。


「気がつきましたか。グレードアップ成功ですね♪ 魔石板を確認してください、ソロモンさんが魔法を使えるようになっているようですよ」


 足元の魔石板が俺の体の成長に合わせて大きくなっている。手元の魔石板も本のように開いて使うこともできるように少し大きくなっていた。魔石板に表示される情報を確認する。グレード3、ライフ3の他に、回答者(アンサラーズ)権限(オーソリティ)通報電(つうほうでん)という項目が新しく追加されているのが見えた。


「通報電……これが、俺が新しく使える魔法……?」


<対象に電撃攻撃を仕掛けて痺れさせます そのうえで知恵の塔が危険だと判断した場合に雷撃による制裁を実行します>


「ソロモンさんは黙ってたみたいですけど、昨日はオークを雷撃に巻き込んで撃退しましたね? 今日は知恵の塔を解析して私も知りました。どうやら街の皆さんはソロモンさんの魔法だと勘違いして、雷神鬼ソロモンなんてあだ名が広まっているみたいですよ」


 そうだったのか。思い返せば店主が勘違いしてたような気がするな。


「運よく死ななかったから良かったものの……もうあんな無茶はやめてくださいね?」


「すみません。あの時はあれしか思いつかなくて……」


「まあ噂とあだ名のせいで、これからは簡単に喧嘩を売られないとは思いますけれど、逃げるという選択肢も覚えておいてくださいね」


「分かりました。死なない程度に頑張ります」


 俺は部屋に戻って新しい魔石板の性能をもう一度確かめる。今まで通りウィキペディアも問題なく読める。パソコンのモニターをデュアルディスプレイに変えた時のような嬉しさを思い出した。


 市場のことは当分メルクルたちに任せるとして、俺はまだまだ他の分野でもゴーレムを活躍させられる余地がないか、自分の体験を通じて調査する必要があるな。

 明日に備えて今日はもう寝よう。いつ来るかも分からないセレマイアの兵士と怪魚の群れに対する策を講じておかなくては……


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