12 商人ゴーレム、メルクル
城へ戻ったが入り口近くには誰もいない。ヨルノンさんとイシュー様はどこにいるんだろう。とりあえず知恵の塔の部屋に向かうとする。
「ソロモンさん、お帰りなさい。あら? 体も魔石板もボロボロみたいですけれど、大丈夫ですか?」
部屋に着くと、ヨルノンさんとイシュー様が1体の変わった見た目のゴーレムを観察していた。頭は笠を被ったように見える形状をしていて、両腕とは別に肩からは副腕が伸びている。副腕は細くて、その指もUFOキャッチャーのアームのように細長い。
「やっと来たかソロモン。知恵の塔が起こした設計図からゴーレムを造ってみたが、こいつには何ができるの?」
その変わったゴーレムは、俺の頭の中にある行商人のイメージがゴーレム風にアレンジされたように見える。商売と関係があるように思えた。
「魔石板から送られてきた情報を整理して、1つの知能として統合したようですね。今日のソロモンさんの知恵活に関係あるのではないでしょうか?」
今日は店主の困りごとを成り行きではあるが解決することができた。砕けた岩が売れている間俺は気絶してしまっていたが、その間にも魔石板は知恵の塔にデータを送り続けていたのだろう。
というか聞き流しそうになったが、悪知恵袋活動を知恵活と勝手に略されてしまった。○○活という呼び方にあまりいいイメージはないが、言いやすいからまあいいか。
「今日は、全然売れていなかった岩を多くの魔物が欲しがるような商品に変えて売ることに成功しました」
「ならきっと、このゴーレムは市場のために活躍してくれる知能を持っているのでしょうね。名前は何というのですか?」
名前か……急に言われると困るな。商売に関係するから、商売人の神様の名前をもじって短くしたものにでもしておこうか。
「メルクルはどうですか?」
「メルクルですか。いいですね」
「ちなみに、4本腕のこいつ以外にも設計図がいくつか送られてきてるんだけど、どうも戦闘には向いてなさそうなのよね。メルクルは市場を任せるゴーレムに付ける名前として、この子にも別に名前を付けてよ」
メルクルは苗字で、名前も考えろってことか。そう簡単にポンポン思いつくものでもないぞ。
「え~、じゃあイチで」
「味気なさすぎ。ニとかサンって付けていく気なの?」
安直すぎたか。格好良く外国語を使っておこうか。
「それじゃあ、アインはどうですか?」
「響きは悪くないと思うけれど……ちなみにどういう意味?」
「ドイツ語で1です」
「結局数字じゃない!」
「まあまあいいじゃないですかイシュー様。この子はメルクル・アインということで」
「ヨルノンがそういうなら、別にいいけど」
ありがとうヨルノンさん。だが面倒なので、これからも新しいゴーレムが出たら適当に外国語の数字を使っていくことにしよう。その方が名付けた順番が分かりやすいというメリットもあるわけだし。
「じゃあメルクル・アイン、これからよろしく頼むぞ。ソロモンと街の皆のことを助けてやってくれ」
「かしこまりました。私は市場の皆様がお望みの品を手に入れるために全力を尽くします」
こうして、俺の仕事がきっかけで生まれたゴーレムが働いてくれるようになった。これからも色んな問題を解決してゴーレムの種類を増やしていかなくては。
そういえば、俺のことを見守っていてくれたゴーレムに名前を付けていなかったな。あいつには、却下されてしまったが呼びやすいイチの名前を与えることにしよう。
◇
ゴーレムの仕事が一段落ついたので、ヨルノンさんにお願いしてライフを回復してもらう。作業が完了したので魔石板を確認する。グレード2、ライフ3と表示されている。
「知恵の塔の評価にはグレードアップの他に、ランクという更に細かい区分があるようです。ソロモンさんはこれまでの知恵活で経験値を溜めたので、そのランクアップの報酬としてライフを回復してもらえるようですね」
「今日は結構頑張ったと思うんですけど、グレードアップはまだできませんか?」
「まだ無理なようです。解決数が足りないようですね」
「そうですか……先は長いですね」
「そうでもないみたいですよ。ソロモンさんの記憶が元になったゴーレムたちが解決した問題もソロモンさんの評価に繋がるようです。つまりたくさんゴーレムを造れば造るほどグレードを上げやすくなるということですね」
それは良かった。知恵フクロウの時はグレードを5まで上げるのに4年もかかったので遠い道のりになりそうだと思っていたが、この調子なら案外早くグレードアップできそうだ。
「それでは明日も頑張ってください。おやすみなさい」
「おやすみなさい、ヨルノンさん」
明日はアインの仕事ぶりを少し見てみることにしよう。市場の仕事のために最適化されたゴーレムであるアインから学べることがあるかもしれない。
それから、ウィキペディアで神様の名前を予習しておこう。これからもたくさんの役に立つゴーレムを造っていくことになるのだから。




