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10 庭石の話

 ヨルノンさんにゴーレムの設定をしてもらう。俺の情報が登録されている間、自動的に俺のことを守ってくれるらしい。ヨルノンさんに確認したところ、魔物の子供なら簡単に蹴散らす程度の力はあるらしい。これなら悪知恵袋活動に専念することができる。その前に部屋に戻って支度しなおそう。


 部屋に戻るまでの間、魔石板の機能を使って簡単な地図を作っておいた。それから城を出るまでに地図に間違いがないことを確認して、ゴーレムと一緒に街へ出なおした。


 城から出ると、早朝追いかけてきた子供たちが待ち構えていたが、ゴーレムを見ると舌打ちをしてどこかへ行ってしまった。さすがにゴーレムには勝てないことを知っているらしい。

 掲示板の前をもう一度確認するが、今度は誰もいない。みんな知恵の塔には無関心なのだろうか。俺が知恵の塔が役に立つことを積極的に広めていかなければ。


 市場にはまばらに魔物が歩いている。そんなに気を付けて移動していなくても他の魔物とぶつかることはないくらいに道は空いていた。


 ふと、大きな岩を置いている店に目が留まった。その店には他にも鉱石類が陳列されていたが、どうやら今は客がいないようだ。店主らしき魔物も暇そうにあぐらをかいている。話をすれば何かいい情報が手に入るかもしれない。


「どうも、調子はどうですか?」


「なんだ? 冷やかしか?」


「いや、そういう訳ではなくてですね。今困っている人を探して手助けをするという魔王様公認の仕事をしているんですよ。何かお困りではありませんか?」


「ああそうなの? 最近魔王様が秘書と一緒に街中に変な石板を置いたり、城に馬鹿でかい塔を建ててたりして変だと思っていたが、それと関係あるのか? 魔王様って海から来るザリガニの化け物を追い返すためのゴーレムばっかり作ってるんじゃないんだな」


「ザリガニの化け物……って何ですか?」


「知らないのか? お前さんはこの街に来たばっかりなのか」


 海から来るザリガニというのは、ヨルノンさんが話していたセレマイアの海軍のことだろうか。


「秘書様はそのザリガニのことを怪魚エヴィデンスって呼んでるけどな。大きくて力が強いハサミを持っていて、柔らかい岩だと挟んでいともたやすく砕いてしまう。頑丈な殻で身を守っているから、魔王様が使う石を操る魔法でも簡単には殺せない。その上、特殊なヒレも持っていて、人間の女の兵士を背中に乗せて水上を高速で移動もする」


「へ、へぇ~。それは怖いですね」


「そいつらの撃退のために、街に来ている腕に自信のある魔物を傭兵として雇ったり、大量に造っておいたゴーレムを防衛に使役したりしているんだ。前回は結構押されていたみたいだが、なんとか持ちこたえて岩壁が少し削られた程度で済んだみたいだ。ただ、次は厳しいかもな。攻め落とされたら俺も他の魔王様のところへ引っ越ししなきゃならねえからどうにかしてほしいぜ」


 事態は結構深刻らしい。俺もゴーレムの知能を高めてイシュー様の力にならないと。


「それで壁の補修に岩が必要だっていうんで鉱山からわざわざ切り出して持ってきたっていうのによ。便乗して普段は岩なんか売ってねえ奴らも集めてきやがったから余りが出ちまったんだ。せっかく持ってきたから店先に置いてはいるんだが、なかなか買い手がつかねえ。なにかいい考えはないか?」


 それでこんな岩を置いているのか。


「そうですね……大きいままだと売れにくいなら、小さく分けてみたらどうですか?」


「小さい石なんてこの辺りじゃどこにでも転がってるよ。そんなもの誰が買うんだよ。棚に置いてる鉱石とは違うんだ。それにこの岩は頑丈だが、きれいな形には割れないんだよな」


 加工しにくい大岩なんてどうしようもないじゃないか……と思ったが、ある金持ちが庭園に置く石を買った話を思い出した。


「じゃあこういうのはどうです? あえて滅茶苦茶高い値段を付けておくんです」


「何言ってんだよ。そんなの誰も買わないだろ」


「いいえ、逆ですよ。高いからこそ買う人がいるんです」


「どういうことだ?」


「安いものは価値がないって思いますよね? それじゃ逆に、すごく高い値段が付いていたらどう思います?」


「値段が高いから価値があるにきまってるだろ……?」


「そうなんですよ。もしお金を持っていて石の知識を持っていなかったら、すごく高い岩を見たらどう思うと思いますか?」


「なんか価値がありそうな岩と勘違いするってことか」


「その通りです。そこで岩について聞かれたら上手く話を作って売り込めばいいんです」


「そんな都合よく金持ちが通りかかるか? まあ全然売れないよりはマシか。というかお前さん、貧相な見た目の割には結構やり方が悪どいね」


「お褒めに預かり光栄です。悪知恵袋のソロモンをどうぞご贔屓に」


「じゃあ一応試してみるぜ。また何かあったらよろしくな」


「それではまた」


 さっそく質問を1つ解決することができた。本当に売れるとは思っていないが、店主もあれ以上にいい考えがなさそうだから別にいいだろう。しかし魔石板には特に変化は見られない。まだ問題が解決していないからだろうか。知恵の塔システムが正常に作動しているかどうか不安だ。

 そういえば魔石掲示板は使えるのだろうか。もし使えるなら、超高級な岩の宣伝をしておくと誰か引っかかってくれる可能性が高くなりそうだ。


 魔石掲示板の前に着く。質問を受け付けている状態のようだ。宣伝するのは本来の使い方ではないので、質問を装って岩の広告を出しておく。もし知恵フクロウで業者がこんなことをすれば垢BANされてしまう恐れもあるが、知恵の塔システムの場合はどうか分からない。実験も兼ねて書き込んでおこう。


一仕事終えると、どっと疲れが出てきた。まだ昼前だというのに疲れてしまったのは、この体にまだ慣れていないからだろうか。昼寝をして街を見てから、夕方にもう一度あの店に顔を出してみよう。もしかしたらあの岩が今日中に売れてしまっているかもしれない。


 この時はまだ楽観的に考えていて、後で大変な目に遭うとは全く思っていなかった。

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