私と坊ちゃま
新シリーズです(ㆁωㆁ*)
…金髪碧眼のツンデレって萌ますよね?
「ねぇ…どうしたら坊っちゃまと親しくなれると思う?」
ちょうど休憩時間になったので暇な私は近くで休息をとっていたカルロに相談を持ちかけた。
「…!?」
私の最近の悩みを相談すると、いつもはとても大人しく声を荒げたりすることのないカルロは珍しく声荒げた。
「ソフィ、本気で言っているのか?」
目を大きく見開いてギョッとした顔をしているカルロ。
なんだその一昔前の漫画みたいなオーバーリアクションは…とは思わないし、思えない。
それほどまでに坊ちゃんと仲良くしようとするのは大変なことなのだ。
だが、私は自身を持って…
「えぇ。もちろん!」
と、答えた。
「そうか…ならロイ様の好きな物の話を振るとかはどうだ?」
そんな私を見てカルロは微笑んでから意見を出してくれた。
ムリとは言わずに前向きに意見を出してくれる、カルロのそんな所が好きだ。
だけど…
「それは難しいと思う。だって…坊ちゃま私の話を聞いてくれないんだもん!」
「それもそうだな。」
カルロは心底納得したように頷いた。
「でも、案自体は悪くないわ。カルロありがと!」
ここで、カルロの顔が耳まで真っ赤になってから、また通常の色に戻っていった。
最近のカルロはこういう事がよくある。それも決まって私がカルロに何か言ったり、した時なのだ。
きっと、驚いた時に顔が赤くなるのだろう。
…でも私のお礼そんな驚くことかな?てか、今日の話でかなり驚いていたのに、なんで反応しなかったのか…、まだ謎が多いカルロだ。
そんな、さっきから話題に出ている"坊ちゃま"と言うのは私が仕えているドミニク家の跡継ぎのロイズ・ドミニク様ことで、
将来ヤンデレ化がほぼ決定付けられているお方である。
で、何故私がヤンデレになると分かるかと言うと答えは単純。
私には未来がわかる…というと何でもわかるように聞こえるが
私がわかるのは"坊っちゃま"がこのまま成長するとなる未来だ。
「でも、このままじゃ死亡フラグが…くそっ!このヤンデレめっ!」
思わず小声て坊ちゃに対する苛立ちを呟く。
「ん?何か言ったか??」
「ううん。何でもない。」
「あぁ…そうか…ならいい。」
「ねぇ、…「あのさ、…」」
お互いが何かを言おうとして言葉が被った。
「カルロからどうぞ!」
「いや、ソフィーから言ってくれ。」
別に私のしたかった話は雑談に分類されるものなので、
ここは真面目なトーンで切り出したカルロに話を譲ろうと、するもお互い「どうぞ、どうぞ」の状態が続きー
結果カルロが折れた。
「あのさ、…」
なのに、中々要件を切り出さない。
「…」
そして、ここに来て会話停滞。訪れずれる沈黙。
気まずくなった私は何気なく壁に掛けてある時計を確認する…確認…確認…アレ…休憩時間もう終わりそうじゃない!?
目をゴシゴシと拭いてもう一度確認。何度見てもあと、1分しかない気が…
「…って、ヤバイ!もうそろそろ休憩時間終わる!私仕事に戻るねっ!!」
「ああ、仕事頑張れよ。」
まだ、何か言いたそうだったカルロを後ろに作業場に戻るためダッシュって駆け出した。
「…また、言えなかったな。」
そんな、カルロの小さな呟きは風に流されて私の耳には届かなかっ
*
私はソフィア。中世のヨーロッパ風の"魔法"あり"モンスター"ありの何でもアリな世界でいろいろあって、ドミニク家のメイドをやっています!
そして、転生者です。なんと、私は《秘密の恋 〜キミを縛るchain
あい
〜》略して《キミ縛》
という、タイトルのヤンデレ乙女ゲームに転生してしまったのだ。
《キミ縛》ストーリーも良いしグラフィックも最高。声優も有名な人を起用しており、大ヒット間違いなしと謳われていたのだが、あまり売れなかった。
何故なら…どのルートを選んでも、最後は主人公が死ぬか、攻略キャラが死ぬが、周りが死ぬか。の誰か死ぬという驚きのラストだったからだ。
だからあまり売れはしなかったが一部のゲーマーの中では神ゲーとして崇められていたらしい。
もちろん自他共に認める無類の乙女ゲーム好きな当時、高校せいだった私はプレイし、夢の全部のルートを達成!、する前に死んでしまったのだ。
死因は多分、交通事故。青信号なのに突っ込んでくるトラックに気付かなかった小さい子供を突き飛ばした所までは記憶があるのでその後撥ねられて即死したのだと思われる。
で、そんな乙女ゲームに転生したことに気づく前、私はこの世界の普通の家庭で育った。
隣の家に住んでいたカルロは、昔からの付き合いで幼馴染である。
そして、いろいろあってドミニク家メイドとして働くことに事になったのだ。
カルロは私が働くと決まった日に、ふらりと何処かへ出掛けて帰って来た時には護衛として働く事が決定していた。
本人に聞いてみたが「ソフィを一人で働かせるのは危険だから。」としか言わなかった。
やっぱり…、カルロは謎である。
そんなこんなで、日々の生活を送っていた私が、ここが乙女ゲームの世界だとわかったのは
屋敷に務める事になり坊ちゃま初めてあった時だった。
*
私の目の前にいる坊ちゃまは誰が見ても美少年といえるその整った顔立ちだった。
蜂蜜を連想させるような綺麗なブロンドの髪。
何より印象的なのはそのサファイアのような輝きを持った瞳。その瞳は純粋無垢でこの世の穢を知らないように思える。
メイドとして働くことになった日。
私は坊ちゃまに挨拶する為にメイド長に連れられ部屋を訪れていた。
そんな、初対面のはずの坊ちゃまの顔を見た時から初めてあった気がしなかった。
(そう…まるで昔から見ていたような…)
坊っちゃまの顔を凝視していると、隣にいたメイド長に脇腹をツンツンされて、はっとトリップしていた意識を戻した。
だが、顔を凝視することを止めたのにまだメイド長は脇腹のツンツンを止めてくれない。
(そっ…そうだ!挨拶!!まだ、挨拶をしてなかった…)
そこで、本来の目的。挨拶を思い出した私。
「こんにちは、坊ちゃま。これからお世話になるソフィアです。よろしくお願い致します。」
ペコリと頭を下げると坊ちゃんまは、その純粋無垢な瞳をこちらに向け、鈴の音を転がすような声で…
「ふんっ!僕への挨拶も忘れるだなんてお前は能無しだな。いつまで仕事を続けられるか楽しみだ!」
ー毒を吐いた。
「えっ?」この坊ちゃまから、そんな言葉が出るなんて1mm想像もしていなかった私はその、毒舌に対して怒るでも傷つくでもなく、ただ呆然としていることしかできない。
「(今の…坊ちゃまが言ったの?それとも聞き間違いかな…きっと私、疲れてるんだよね…)」
脳内で今の言葉を聞き間違いとして処理していると、また坊ちゃまはイラだったように口を開いた。
「なんだ。その、まぬけな顔は」
すると、隣にいた メイド長が一歩前に出て
「坊ちゃん。その様な言葉遣いは直すようにと前々から…」
坊ちゃまの毒舌に対してお説教をし始めた。
メイド長のお説教は時間が掛かりそうな雰囲気なので、手持ち無沙汰になった私は現実を受け止めていた。
ダメだ。坊ちゃまが毒舌なのは紛れもない事実らしい。
こんなに美形なのに…天は万物を与えず…か。
おいたわしや…
「(でも、あの顔に、毒舌。どっかで見た気がするんだよね…)」
そして、この瞬間私の脳内に電撃のようなビリビリとした感覚が走り全て思い出した。
この顔、
この声
そして…この毒舌。
あのヤンデレ青年"ロイズ・ドミニク"ではないかと。
こうなれば全て納得がいく。初対面じゃない気がしたのも。
私は画面越しに彼を見ていたのだから当たり前だ。
頭がスッキリした私の意識はそこでBLACK OUT した。
どうやら多すぎる前世の記憶の情報量に私の頭が耐え切れなかったらしい。
そのままバタッと倒れて高熱をだしたのだったー
*
翌日、目覚めた私は前世の記憶を含めてすべて思い出していた。
また、少し遅れて私がこれから働く職場にヤンデレ青年がいるということを理解した。
ロイズ・ドミニク。
《キミ縛》に出てくる攻略キャラで、その美形な優しげな顔とは一転して毒舌というギャップに私を含めたファンは悶えた。それはもう、悶死にしそうなくらい悶えた。
主人公に対して毒を吐くくせに嫌われたくなくて…結果暴走してヤンデレ化してしまう所も、ファンのツボを大きく刺激した。
しかもどのルートを選んでもカルロは、屋敷に火をつけ、使用人と供に焼身自殺。使用人を全員殺して自分も自殺。使用人…と大抵使用人を巻き込むことが多いのだ。
死ぬのなら一人で勝手にやって欲しいものである。
そんなヤンデレが職場にいたらあなたはどう思う?
きっと、いつ自分が巻き込まれて死ぬのかと気が気でないだろう。
だから、私はいろいろと考えてひとつの結論を導き出したのだった。
それは「初めからヤンデレ化させなければいいのでは」という事だ。
私の記憶が確かなら ロイがヤンデレ化してしまう一端を担うのが姉の死。
唯一心を開いていた姉が亡くなり大事な人が居なくなるという事が怖くなってしまったロイは異常なまでに主人公に執着していくのだ。
ならば、その心を開ける対象を増やしておけば良いのではないかと。
もちろん、ロイの姉である…ハンナは病弱な娘で体調が良くならないと会えないので会ってはいないが、できることはしようと思う。
方針は決まった。後は行動に移していくだけだ。
今はとりあえず…初日から倒れて迷惑を掛けたことをメイド長に誤りに行くことが先決だと思いました。はい。
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