第8楽章 音楽の天使が現われて
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大手動画サイト。
電子ピアノ置いてみた動画で、大人気の配信者。
自称・ピアノの妖精。
天使の着ぐるみのピアピア。
今回は、音タノ駅前で、動画を撮影中。
音タノ駅前。
「オレの彼女のカナデちゃん。ピアノが大好きで、小学生の頃から頑張っているんだ」
「ちょ…」
マイクくんに肩を抱かれる形で、前に出るカナデ。
「可愛い彼女ピア」
「自慢の彼女なんだ」
「うらやましいピア」
「弾く歌は、『楽園のうた』。これ一択なんだ」
「皆んなが知ってる名曲ピア」
「それを、頑張って、楽しく弾く女の娘」
電子の妖精ピアピアと対等に接するマイクくん。
カナデは、電子ピアノの前に、立たされる。
「これ、オレも一緒に歌うからね」
「了解ピア」
スマホスタンドにまわり込んだピアピア。
録画チェックOK。
「レッツ・ミュージックなんだピア」
第8楽章 音楽の天使が現われて
小学生の頃。
「悪口言われた。もう、嫌よ。うう。うう」
泣き出すカナデ。
「誰だよ。悪口なんて言ったヤツ」
マイクくんは、カナデの頭をなでてあげる。
「アタシ、ピアノが全然、上達しないの」
「今で十分だよ。すごく上手だよ」
「全然だもん」
「ピアノを好きなだけで偉いよ。オレ、歌のことあんまり好きじゃない」
「何で?歌、上手なのに」
「練習してばっかりで、つまらないんだよ。もっと上手になれって言われるし」
「上手なのに、もっと上があるの?」
「上は、人間じゃないよ。化け物がやってるんだ」
化け物。同じ人間じゃない。
怪物が、音楽の上位を独占している。
何、それ。
怪物なんかに、生身の人間が勝てるワケない。
「この世の大人は、全員、天使ならいいのに」
天使。
天使なら、優しいってこと?
現在。
音タノ駅前。電子ピアノの前に立っている。
「レッツ ゴー レッツ ゴー」
マイクくんが歌う。ちょっとズレた。
でも、マイクくんが合わせてくれる。
「パラ ダイ ス」
電子ピアノの音も綺麗。
ゆっくり、間違えないで弾く。
一生懸命なの。下手なの。でも、すごく楽しい。
「誰も 信じて いない」
マイクくんが両手を広げる。
カナデも笑顔になる。
「神様 は いる」
ピアノを弾く手が震える。
緊張と高揚感。
「レッツ ゴー レッツ ゴー」
あと、もう少し。
最後まで、綺麗に音を弾く。
「パラ ダイ ス」
終わり。
余韻が残る。
パチパチパチパチパチ…。
拍手と歓声が上がる。
「すごく、わかりやすかった〜」
「感動」
皆んなが、小学生の頃に習う『楽園のうた』。
懐かしさと優しい気持ちに、満たされた。
カナデとマイクくんは、ただ達成感を感じていた。




