第4楽章 楽譜が無くても
小学生の頃。
「楽譜って、どうやって見るの?」
「貸してよ」
マイクくんは、ひっくり返したり、遠目で見たりする。
「わからないや」
「ピアノのドレミは、どうやってわかるの?」
「うーん」
たくさんの横線に記号。
全然、読めない。わからない。
カナデとマイクくん。二人で悩む。困ってしまう。
音楽の先生に聞いてくる。
「ドレミは、わかったかも。書いてあげるね」
筆箱から、えんぴつを取り出して、一文字ずつ書いてくれるマイクくん。優しいな。
「このドレミの通りに弾けばいいと思うよ」
「うん」
この楽譜は、カナデの宝物となった。
高橋家。
カナデの家。家族と三人暮らし。
宝物の楽譜がなくなっていた。どこかに落としただろうか。見当たらない。
古い楽譜。『楽園のうた』が載った楽譜。
小学生の頃のものだ。
たまに、ドレミを確認するのに使う。
どこに置いただろう。
第4楽章 楽譜が無くても
音タノ市立オンプ高等学校。
「え。楽譜を失くしちゃったの?」
マイクくんに、相談した。
黙って、うなづく。
「じゃあ、新しい楽譜にドレミを書いてあげる」
「新しい楽譜って、難しいのばかりで弾けないわ」
「そっか。レベル高いヤツか」
ミュパンとか、ムーツァルトとか、絶対弾けない。
「初心者コースでいいと思うな。弾けなくていいと思う」
有名な世界の音楽家は、初心者に優しくない。
簡単なのもあるとは言うが、簡単の水準が違う。
「カナデちゃん。得意なの『楽園のうた』だもんね」
「そ、そう…」
それくらいしか、まともに弾けない。
その音楽が好きなだけで、ピアノを続けているくらいの思い入れのある歌だ。
簡単だから、じゃなくて。
音楽にはじめて、感動を受けた歌。
大好きな歌。
毎日、弾いても飽きない歌。
こういうところも、音楽が上達しない原因なのかもしれない。好きなのに、何が悪いのか。
どうせ、皆んなに陰口叩かれてるんだ。
才能ゼロって。
お前なんて、音楽やる資格ないとか言われてるんだ。
「ネガティブモードのカナデちゃん」
目つきが暗くなったカナデに、理解のあるマイクくん。
「ねえ。『楽園のうた』が載っている楽譜探してみようよ」
近くのママハ楽器店に楽譜を探しに行こうと言う。
楽器店にも、楽譜は売っている。
「何よ。一緒に行ってくれるの?」
「行くよ」
「あら、そう」
ネガティブモードのカナデ。うつむく。
小学生の頃なら、もっと楽器店に行くのをワクワク、ドキドキできたのに。
なんか、悪口とか陰口とか、考えるし、言われるし。つまらないな。
もっと、楽しくピアノをやりたい。




