2ー2
仕事を終えると、スーパーに寄って、遠藤さんから頼まれた買い物をします。
食材から調味料に至るまで、商品名なんかもしっかり書かれているので、迷う心配もありません。
だけど、遠藤さん。まさかの料理が趣味だとは知りませんでした。
今朝の朝ごはんもしっかりおいしいお味噌汁とだし巻き卵でした。
わたしはなにもできず、完敗です。
遠藤さんの昔のカノジョさんは、なにがきっかけで別れることになったのでしょう?
はっ、いけません。詮索なんて野暮なことはしてはなりません。
しっかりと自分に釘を打っているところで、遠藤さんからメールが届きました。
『荷物重くない? 一人で平気?』
……なんという気遣い。尊いっ。
わたしはすぐに返信を書きます。
『大丈夫です。これから帰ります』
メールを送ってから、急に恥ずかしさに襲われます。
まるで新婚さんみたいじゃないですか。
しかも、買い物の支払いは遠藤さんから渡されたお金です。
もうこれは主婦の領域ではありませんかっ。
ですが、いけません。勘違いをしたら、遠藤しんに迷惑がかかります。
遠藤さんはそんなつもりでわたしと同居しているわけではないのです。
しつこいストーカー被害のあげく、しかたなく遠縁であるわたしをたよって来てくれたのです。
そこを間違えてはなりません。
そんなわけで遠藤さんです。
エコバッグに買い物を収納すると、店内に黒装束の男の人が現れました。
野球帽に半袖のTシャツ、ジーパンといった男の人は、わたしを見つけるとうん、とひとつ頷きました。
「あの、ひょっとして?」
わたしの問いかけに、サングラスをずらした男の人が遠藤さんだとすぐにわかりました。
そして、とてもスマートなしぐさで荷物を持ってくれました。
なんと、ストーカー被害にあいながら、わたしを気遣ってくれるのです。
「わざわざありがとうございます」
うむ、といった感じで遠藤さんは頷きます。
それから、人通りのまばらな場所まで来ると、私にメモ帳を見せてくれました。
【洗濯はすませておいた。嫌だったら、ごめん】
「嫌だなんて、そんなっ。なにからなにまでありがとうございますっ!!」
恐縮至極です。
遠藤さん、なんてお優しいのでしょう。
ここまでくると、仏の境地に感じます。
かつて、ここまで殿方に大切にされたことのなかったわたしは、感激して瞳が潤んでしまいます。
「本当に、ありがとうございます」
そんなわたしに、遠藤さんは頭を優しくぽんぽんしてくれました。
うれしくて、また涙がこぼれてしまいました。
つづく




