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1ー3

 子供の頃一緒に遊んださっちゃんに再会することができました。


 ……ですが、眠れません。


 このドアの向こう側にワイルド系イケメンの遠藤さんがいると思うと、目が落ち着かなくて眠れません。


 そうです。ワイルド系イケメンの遠藤さんこそがさっちゃんなのでした。


 だからと言って、冷蔵庫に飲み物を取りに行くほどでもないですし。


 はふぅ。


 ここでわたしは禁断の術を使います。


 そう、インターネットです。


 スマホをポチポチいじりながら、『野獣野郎共』について調べ始めました。


 なになに?


 『野獣野郎共』はボーカルでありギタリストの遠藤 佐吉さんを集団としたロックバンド。カリスマ性を秘めた遠藤さんを慕うファンのことは『イケニエ』と呼ばれている、と。


 ……『イケニエ』?


 なんだか不穏な響きです。


 ですがそれゆえ、熱狂的なファンも多く、ファン同士のトラブルも多数見受けられる、と。


 なるほど。カリスマ性があっても、ファン同士のもめ事までは手がまわらないですよね。


 そして、今回のストーカー騒動ですが、と。


 ……まだ書かれていませんね。


 本当のことですのに、不思議です。


 遠藤さんが声を出せないような状況に追い込まれているだなんて、いったいどんなことをされてきたのでしょう?


 幼い頃、さっちゃんはにこにこしていて、とてもかわいらしく、ほんの一歳年下だったのですが、背も低くてとても庇護欲をそそられる方でした。


 そのさっちゃんが、大人になって、遠藤さんになるだなんて。


 大きな手で、手際よく親子丼を作ってくれた遠藤さん。


 とても美味しかったです。


 一人暮らしを始めてから、まともに自炊してこなかったことが悔やまれます。


 実を言うと、親子丼すら作ったことがないのです。ひゃぁ。


 それなのに鶏肉と卵は冷蔵庫にありました。奇跡に近いです。


 目が冴えてしまいました。


 わたしは眠るのをあきらめて、ドアを出ます。


 遠藤さん、もう眠っているのでしょうか?


 抜き足、差し足、忍び足。


 自分が契約しているアパートですのに笑えます。


 と……。


「ひゃっ!?」


 ふいに足首をつかまれて驚きました。


「遠藤さん?」


 遠藤さんは眠っているようですが、手を離してくれません。


「どうしよう?」


 あせってもしょうがありません。


 しかたなく、その場にしゃがみ込みました。


 とても整ったお顔です。ワイルド系ではありますが、わずかながらさっちゃん時代の面影もあります。


 濃い、くっきりした眉毛に長いまつ毛。男らしく整った鼻から唇にかけての自由さ。


 わずかに伸びたおヒゲが庇護欲をそそります。


 なんと、さっちゃんは、男の人だったのです。


     つづく





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