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親子丼を食べ終えると、遠藤さんは洗い物まで手伝ってくれました。
けど、おかしいなぁ。初めて会ったはずなのに、そんな気がまったくありません。
それどころかとても心が落ち着くのです。
「はぁ。洗い物まで手伝ってくださって、ありがとうございます」
わたしがお礼を言うと、遠藤さんは首を左右に振ります。
そしてノートに昔遊んだことがあるのを覚えている? と書きました。
「遊んだこと? ありましたっけ?」
【俺がまだ子供で、自分の名前をサキとしか言えなかった頃のことなんだけど】
ノートを読んでいるうちに、だんだん思い出してきました。
「サキちゃん? もしかして、さっちゃん!?」
【そう。母親の趣味で女装させられていたから、女だと間違われていたと思うんだけど】
「あああの、さっちゃん? めっちゃかわいかった、あのさっちゃん!?」
遠藤さんはこくこくと頷きます。
なんと、あのさっちゃんが遠藤さんだなんてっ。
人生ってわからないものだなぁ。
【そんなわけで、実花にかくまってもらいたいんだけど、いい?】
「かくまうって?」
【ストーカーが決着つけて、声が出せるまで、ゆっくり休みたいんだよ。お互いのプライバシーは守るし、おばさんは実花に彼氏は居ないようだと聞いたんだけど、もし嫌なら他をあたるけど】
それはたしかに気まずいけど。あの頃のさっちゃんと遠藤さんの姿が重なる。
わたしより一つ年上の遠藤さんが、とても小さく感じた。
……と、いうより実花って。いきなり呼び捨てされると照れちゃう。
「ん〜、わかりました。遠藤さんは芸能人ですけど、困っているのならお互い様。この部屋でよければ、住んじゃってください。あ、でもベッドが一つしかないな」
【ソファ借りて寝てもいいなら】
「でも、ソファだと寝苦しくないですか? たしかお母さん用にお布団あるんですけど、それでよければ使います?」
【うん。ありがとう】
なんだか斬新な共同生活になりそうです。
【なんならさっちゃん呼びでもいいぞ?】
そんなふうにさらっとノートに書き付ける遠藤さんのことをほんの少しだけわかったような気がして、笑顔を返すのが精一杯でした。
つづく




