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やりたかないのに陰陽師弐  作者: 辻本 真悟
第三章:臨界点の慟哭
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第十四話:鬼神降臨、慟哭の空に濡れて

書いてて辛すぎた話です。

「ア、ガ……ッ……!」


 悲鳴にすらなっていなかった。藤原の残党たちが、自分たちが呼び覚ました「モノ」の正体に腰を抜かし、無様に這いずり回る。

 シュン兄だった「何か」は、言葉を失っていた。怒鳴ることも、泣くこともない。ただ、機械的に、そして一片の慈悲もなく、視界に入る『ゴミ』を物理的に壊していく。


 生身の人間が、紙細工のように容易く引き裂かれ、廃工場のコンクリートが真っ赤な血のパッチで塗り潰されていく。博雅は吐き気を堪えるように目を背け、道満はあまりの霊圧に膝を震わせることしかできなかった。


 その時、血の匂いが立ち込める工場に、場違いなほど美しい輝きが差し込んだ。

 りお先生がハンドルを握るパールホワイトのシーマだ。後部座席から保憲と有世を降ろし、静かに停車したその白は、この地獄において異様なほど際立っていた。


「……やれやれ。観測者として多くのバグを見てきたが、この僕でさえ、止める気の失せる惨劇だよ、藤原のゴミなど死ねば良いのにとしか思わないね」


 車から降り立った保憲が、銀縁メガネを直し、冷徹な声で呟いた。隣の有世は、タブレットを抱えたまま、目の前の光景に言葉を失って震えている。


「……保憲、お前……」


「安倍くん。……藤原の残党の本当の企みは、君や道満さんの電池化リソースなどではなかった。彼らの真の目的は、最初からこれ……酒井瞬の『完全な酒呑童子化ブート』だったんだよ」


 保憲の言葉に、俺の思考が停止する。

 山本組を破門されかけ、金に困って暴走した最低のクズ――野崎。彼が澪さんを攫い、あんな惨い殺し方をしたのは、すべてが計算された『トリガー』だったというのか。


「野崎はただのピエロや。劣等感にまみれた彼に、あえて澪さんの存在を教え、住所をしらべ拉致させた。……一千年の孤独に耐え、人間を愛そうとした鬼を、一瞬で絶望の深淵へと叩き落とし、そのオーバーロードしたエネルギーを抽出するためにね」


 シュン兄の足元で、最後の一人となった残党が、自らの内臓をぶちまけながら絶命する。

 シュン兄は、もはや澪さんの亡骸すら認識していないのか、真っ赤な瞳で保憲たちを見据えた。


 なぁ、あんたならどう思う?

 愛する人を救うための戦いだったはずが、その愛すらも敵のシステムの一部として利用されていたんだ。


「……クソやな、ホンマに……。保憲、どうすればええんや」


「……決まっているだろう。……完全に壊れてしまう前に、彼を『強制終了シャットダウン』させてやれ。……三代目安倍晴明、君の仕事だよ」

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