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生体再編局

〈アレイシア波動生体研究局/AWBI〉


カナタの父・ガイアスが所長を務める研究機関。

脳波波動や特殊能力理論を研究している。

一部では、“ルシエル因子”を管理しているとも噂されている。



〈ノクス:グレイン生体再編局〉


スコーラオが所属する再生医療研究機関。

“どこまで失われても再現可能か”を目的とした実験を繰り返している。

ノクス:グレイン生体再編局。


そこは、コロニー・リオンド郊外の森を切り開いた隔離区に位置する。


二階建ての広い施設。隣には、関連施設がいくつもある。


「49%拒絶反応確認しました」


スコーラオは、白衣の袖を少しまくると、淡く発光する因子片を慎重にシャーレへ移した。


「特殊能力を発現させる、生体進化の根源因子……」


女助手は、震える声で呟いた。


男の助手は、巨大水槽に浮かぶ切断体へ視線を向ける。


「人為的に作られた因子じゃない。 元々存在した突然変異を、人類側が解析してるだけだ」


「……アレイシア研究局が、これを使って何もしてないとは思えませんね」


スコーラオの瞳から、笑みが消えていた。


「ルシエル因子の微細構造物を確認する」



新人の助手は、顔色が思わしくない。


毎日どこからともなく送られてくる検体。


時には、スコーラオ自身が死にかけた検体を運び込むことさえあった。


休憩時間、食事のために用意された簡易トレーの人工肉を目の当たりにして、吐き気が込み上げる。


「おい、新人大丈夫か?」助手の男が後ろから話しかけた。


「え、あ、はい」


皆、平然と業務を遂行する。


僕は、バイオテクノロジーの発展と、再生医療の行く末に貢献したくて志願した。


「……」


ヴァルディス家の元王子、スコーラオ様がここの創設者……まさかこんなやばい人だったなんて。


「……どうした新人」女の助手がクッキーを持ってきた。


「ここ辞めたら殺されますか?」


「まさか」女は、笑った。



セリューは、王宮直属監査官として研究局へ入った。


「王命による確認です」


白く無機質な通路を、セリューは静かに進む。


「形式上は視察ですが、研究記録は全て確認させていただきます」


助手たちの空気が、わずかに張った。


「やぁ、セリュー。わざわざ来るなんて、王の護衛は大丈夫なの?」


奥から現れたスコーラオが、柔らかく笑う。


「リングを全解除しています。何かあれば、すぐエルナス様の元へ戻れます」


セリューは、腕のリングへ軽く触れた。


「まぁ、そうだよね」


スコーラオは、視線を細める。


「……でも、全解除って身体に負担だろう? あまり無理しないでね」


そう言うと、スコーラオは白衣の裾を揺らしながら施設の奥へ歩き出した。


「ここが実験室だよ。ちゃんと研究してるでしょ?」


薄く笑いながら、顕微鏡へ視線を落とす。


「……」


セリューは、室内を静かに見渡していた。


薬品棚。 培養装置。 そして、奥に並ぶシステムフィールド隔離区画。


セリューが視線を向ける。瞳が一瞬淡く光る。


「強力なフィールドが張られている部屋がいくつかありますね」


「……」


「中を直接確認できますか?」


「……目ざといね。ま、全解除でスキャニングされたらお手上げだよね」


顕微鏡を覗いたまま、スコーラオは小さく笑う。


そして、不意に話題を変えるように顔を上げた。


「ねぇ、リング全解除ってどんな感じなの?」


システムの駆動音が、どこか心音のように響いていた。


「私は十段階外しただけでも、久しぶりすぎてコントロール失いかけたよ……冗談だけど」


セリューの沈黙が続いている。何かを読み取っているかのように。


「……」


スコーラオの笑みが、わずかに薄れる。


「どうかした?」


セリューは、静かに床下へ触れた。


「この地下空間に、多数の“生体反応がある”」


僅かに、施設の空気が止まった。



(第九十六章・了)


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