それぞれの一歩
木々が生い茂る高架下。
人気のない整備区域に、 移動研究車両が停車していた。
表面には企業ロゴすらない。
後部ハッチが静かに開く。
「スコーラオ様、危なかったですね」
冷や汗をふく助手。
「そうだな。もう無理だと思ったよ、正直」
そして、あの白い影を思い浮かべた。
スコーラオは、真顔になる。
女助手は、珍しそうにスコーラオを見た。
「リングが全て解放されていれば、こんな回りくどいことはしなくて済むんだけどね」スコーラオは、二人の助手に微笑みかけた。
◇
「ねぇ、本当に行くの?」
「だって、カナタが学校来なくなってから、もう3週間もたつじゃない」
「諸事情によりしばらく休学なんでしょ?言えないんだって」ミルルがあわてふためく。
ミラは、ミルルを引っ張って歩いていた。
「ごめんね。ひとりだと、ちょっと勇気出なくて」
ミラは、小さく息を吸った。
「……一度、ちゃんとタシト隊長と話してみたかったの」
「カナタ、今どうしてるのかなって」
「あー、だからってなんで私なの!? 私、緊張すると変なこと言っちゃうよー」
プラス先生相手なら、いつも積極的に質問するミルルも、今回ばかりは様子が違った。
相手が、タシト隊長だからだ。
渡り廊下の向こうから、訓練施設に向かうタシトを見つけたミラ。
急いで駆け寄る。
タシトは、すぐに気付いて立ち止まり、振り向く。そして、二人の到着を待った。
「……タシト隊長」
「なんだ?」
伏し目がちにミラたちを見る。
ミルルは、ミラの後ろに隠れている。
「あの、差し出がましくてすみません。カナタは、元気でしょうか?」ミラも幾分緊張している様子だった。
「話はそれだけか」
「え?」
重い空気が流れる。
「……それだけって」
「なら、元気だ。
授業が始まる、早く戦闘スーツに着替えてこい」
沈黙。
「私……カナタさんがいても、タシト隊長のことずっと応援してます!」ミルルは、そう言うと手で口を押さえた。
タシトは、ミルルを一瞥すると去っていった。
「あー!やっぱりワケわかんないこと言っちゃったよー」ミルルは、頭を抱えていた。
「ごめん、ミルル。でもありがとう」
◇
ユウナギの手の中で、 四つに分かれたシャインスフィアが青く静かに光る。
「……できた」
「すげー……」「まじかよ」 背後で、生徒たちがざわめいた。
汗が、頬を伝う。
だが次の瞬間、一つの光が不安定に揺れ隣とくっついた。
「……あれ」
プラス先生が笑う。
「惜しいな、ユウナギ」
ユウナギは、小さく息を吐いた。
それでも――以前より、遥かに前へ進んでいる。
(第九十五章・了)




