表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
94/95

ルシエル因子

〈アレイシア波動生体研究局/AWBI〉


カナタの父・ガイアスが所長を務める研究機関。

脳波波動や特殊能力理論を研究している。

一部では、“ルシエル因子”を管理しているとも噂されている。



〈ノクス:グレイン生体再編局〉


スコーラオが所属する再生医療研究機関。

“どこまで失われても再現可能か”を目的とした実験を繰り返している。

王宮の謁見室では、

カナタの左薬指に、先ほどまで無かった指輪がはめられていた。


タシトが去った後も、エルナスはしばらく動かなかった。


カナタを目の前にして、言葉が出てこない。


――私は、何を見たかったのだろうか。


彼女は、タシトの婚約者で。

自分は、ただの友人で、王でしかない。


「エルナス?」


「……あ、ああ。すまない」


エルナスは視線を外し、軽く手を上げた。


「少し、席を外すよ」


そう言って、静かに部屋を出る。


執事が無言で一礼し、カナタを部屋へと送り届けた。


「カナタ様……エルナス様がこれを」


カナタが見たがっていた古い本が手渡された。


「あ、……ありがとうございます」



「凄いね~。えらくセキュリティが張られてる」


アレイシア波動生体研究局――AWBI。


高い壁と監視塔に囲まれた巨大施設を、 スコーラオは離れた木の上から眺めていた。


夜風に揺れる大木の幹へ腰掛け、 気楽そうにクッキーをかじる。


「五年前の“あの少年”の襲撃事件からかな」


目を閉じる。


特殊能力レベル十の解放。

脳の裏側で、空間をなぞるように感じ取っていく。


「……見えない区画が多すぎるなぁ」


スコーラオは眉をひそめた。


“存在そのものを隠している部屋”が、複数ある。

そこだけ、空間が切り取られたように感知できなかった。


「強力な結界まで張ってる。高能力者のものだね」


スコーラオは、手首のリングを通信モードへ切り替えた。


「あー助手。監視カメラ切り替えて。熱源処理もお願い、プラス……能力制御リングへの逆アクセスを遮断できる?」


『……生存率保証できませんよ』


リングから流れてきた助手の声。


「大丈夫だって~」


スコーラオは、リングにキスをする。


『……タイムリミットは8分です』


「短いな……見つけられるかな」



「ルシエル因子……特殊能力を発現させる、生体進化の根源因子。本当にこれで、検体率50%を再生できるんでしょうかね」

男は、モニターの前でセキュリティ網を制御する。


「スコーラオ様がただの不法侵入で終わらなければよいですが」女が口を開く。


光る線で記された立体構造物の前で、男と女の動きは止まらない。


「一分経過……」



スコーラオは、因子保管区画と思われる場所に降り立った。


目を開く。


瞳は薄く光った。


戸棚の中。 ケースの内部。


隠されていた物質が、次々と可視化されていく。


ロックのかかった特殊金属でつくられた筐体を発見した。スコーラオは、中のものを触れずに取り出そうとした。


「フィールドか。……無理だな」


スコーラオは筐体を見つめる。


「入れ物ごと持っていくか……いや、多重フィールド切り離しも無理そうだな」


『三分経過しました』


「……これを張ってるのは誰だ?」スコーラオは小さく呟き、そのまま次の部屋へ向かった。


青白く光る円錐形の水槽がいくつも鎮座している。


「何も入ってないな。……培養液では無さそうだ」

システムに手をかざす。目次が現れた。

全てに目を通す。


「ハイブリッド……?認証」コードに触れる。


「認識出来ません」声が流れる。


「にしても……偉く用心深いな」スコーラオは、扉の前に来た。ここも高能力者の結界が張られている。


『五分経過しました』


静まり返った暗がりの空間が広く奥まで続いている。


「何だこれ」


うっすらひと型が白く浮かび上がる。


白い人影は、 向こうへとゆっくり指差した。


『スコーラオ様、結界が再構築され始めました。急いでください』


「わかってるって~」


まるで、 “そこを見ろ”と言うように影は揺らぐ。


部屋の隅には、脱ぎ捨てるように白衣が一着掛けられていた。


「何?」


スコーラオは、白衣のポケットへ手を入れた。


『八分です』


警報が鳴り出す。


ポケットから取り出したのは、 小さな密閉容器。

中で、淡い光が揺れている。


容器側面には、かすれた管理コードが刻まれていた。


《L.C因子》


「……ルシエル因子……なのか?」


スコーラオは、もう一度だけ白い影を探した。


すでに影は無かった。



(第九十四章・了)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ