表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
89/92

遠い視線

オルデン・コア内部。


広く静まり返ったシステムルームでは、 無数の光が淡く明滅していた。


「スコーラオ・ヴァルディスのリング変動ログ、書き換えを開始します」


淡々としたオペレーターの声。 それは本来、日常業務の一つに過ぎないはずだった。


「……重要事項コード確認。リング制御、不定期に十まで解除」


ひとりの男が、思わず顔を上げる。


周囲の視線が、一斉にその端末へ集まる。


「エルナス王が承認したのか?」


「……承認ログは、エルナス王名義です」


――空気が凍る。


誰もすぐには言葉を返せなかった。


やがて、低い声が漏れる。


「……どういうつもりだ。なぜ今、ヴァルディスの制御を緩める」



「行きたいとこある?エルナス」


「え?」


スコーラオなりに、護衛として正装しているようだった。

セリューは、気が気でならない。


「せっかくだし、カナタちゃんも誘って出かけようよ」


「……」


「いけません、エルナス様。危険過ぎます」


「では、セリューもついてくれば?初日だし」


「駄目だ。セリューは休日を命じた通りだ。

カナタまで連れ出すのは、さすがに危険だよ。スコーラオ殿」エルナスが口を開いた。


「本当に真面目だよねエルナスって。

デートさせてあげようと思ったのにな」


「……」


少し頬が赤くなるエルナスは、咳払いした。


「余計な計らいは結構だよ。スコーラオ」


初めて敬称を外した。



窓辺から、そよ風が入る。

エルナスは、端末を操作しながら書類に目を通していた。

セリューはソファーに寝そべり、片肘をついたまま紅茶を飲んでいた。


誰が見ても護衛しているようには見えない。


「退屈だよ。エルナス」


「……話、無かったことにするか?」


「いいや。冗談だよ」


そう言うと、スコーラオは小さく笑った。


「Defenceレベル十でも確認してみるよ」

腕にはめられたリングは、十段階まで解除されていた。


スコーラオは目を閉じた。


クスっと笑う。「ほんと、信用してないなセリューってば。この結界セリューのと干渉してるじゃん~」


王宮内でセリューの気配を感じとる。


「……三百メートル先か。セリューの気配だね」


「ん? カナタちゃん、凄い防御結界の中にいるんだね。 位置情報まで、ずらされてる」十の制御が外れたスコーラオは、楽しそうだった。


「……あれ?」スコーラオの表情が少し変わる。


エルナスは、一瞬スコーラオを見る。そしてまた書類に戻る。


「……何だろう。この気配。強いね。どこかで会った?いや、雰囲気違うな」


「どうした?スコーラオ殿」エルナスは、手を止めた。


「……視線。遠いな。一キロ先か」


「……すぐ戻ってくださいよ」

エルナスは、止めなかった。


そこは、王宮から離れた広いコテージの屋根。


「あれ……気づかれた?」


屋根の上に降り立ったスコーラオは、目を細めた。



気配は、消えていた。


「……逃げられたか」


――だが確かに、“誰か”はそこにいた。



(第八十九章・了)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ