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取り引き成立

「……以前も話した通りです」


エルナスの声音は冷たい。


「そうだろうと思ってさ、取り引きしにきたよ」


「取り引き?」エルナスは、怪訝そうにスコーラオを見た。


カナタとユウナギは、二人のやり取りを黙って見守っていた。


「ここからは大人の話」


スコーラオは、人差し指を口に当ててウィンクした。



ユウナギは、カナタと分かれプラス先生の元に帰ってきた。


「どうだった?カナタに会えたか?」


「はい。プラス先生ありがとうございます。彼女は変わりありませんでした……」


カナタとエルナスの距離感が、妙に胸に引っかかった。


焦りにも似た感情を抱えたまま、ユウナギは王宮を振り返る。


まさか、スコーラオが王宮よりだったとは。

ユウナギは、帰る車の中でタシトの立ち位置の危うさを考えていた。


タシト隊長は、本当は何からカナタを守ろうとしていたのだろう――。


――もし、王宮からカナタを守りたかったのだとしたら、スコーラオから?

それとも、エルナスのカナタへの好意的な何かを察知してエルナスから?


何のために?


タシト隊長は、カナタの一体何なのだろうか……



「セリューもひとりでは休暇も取れないだろうから、私がいつでもエルナスを護衛してあげるよ」


それが、スコーラオの提示した取り引きだった。


「……信用できるわけないでしょう」

セリューが思わず口を挟む。


「なんで?私はエルナスに死なれては困る。王位が回ってきたら困るからねぇ」


「……」エルナスは、黙って聞いている。


「こう言っちゃ何なんだけど、君より強いからねぇ。 リングを全て外したら……」


「それが危険だと言っているのですよ」セリューは、緊張した表情。


「だから、なんで? 私がエルナスに危害を加えるメリットなんてないじゃーん」


「先のことは誰にもわからない……。セリューの言葉だろ?」エルナスがようやく口を開く。


どちらにも取れるエルナスの言葉。


「私は、まるでお守りされてる子供だな」


エルナスは苦笑混じりにそう言うと、窓辺まで歩いた。


「全てリングを解除するつもりはない。

十までならその取り引きを考えても良い。

ただし、研究のための制御解除は、護衛を交代した日数分だけだ」


「エルナス様!」セリューは、思わず声を張り上げた。


「……たまには休め、セリュー」


「取り引き成立」


スコーラオは、エルナスへ渡したクッキーを一枚つまみ、口へ放り込んだ。


「へぇ、こんな味だったんだあ」



(第八十七章・了)


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