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再会の扉

――王のいる場所へ。


「こんにちは。ユウナギ・カーレンくん」


その声は穏やかだった。 だが、空気まで整えられるような響きがあった。


案内された先に、エルナス王は立っていた。


静かな威圧感。

視線を向けられただけで、空気が張りつめる。


――なのに、美しい。


「こんにちは。エルナス王」


「え、ユウナギ……面識あったのか?」 プラス先生は、声を潜めた。


「……戴冠式以来かな。どうぞ」


そう言うと、椅子にかけるよう手で促した。


膝の上で、指先に力が入る。


「カナタは元気ですか?」


「……君には、隠し通せそうにないね」


「なぜ、タシト隊長の元からこちらへ?」


「タシト少佐の住む居住区が被害を受けた」


「あの、スペースジブリが落下したニュースか……」プラス先生は、顎をさすった。


ユウナギは、 やはりタシトが狙われていたのではないかと感じた。

そうなると、ここにカナタがいる方が安全なのかもしれない。


――分かっていても。


「カナタに、会わせてください」



王宮の奥にある書庫で、カナタは本を選んでいた。


「あの、このケースには鍵がかかっているのですか?」


「はい。王しか触れません」


本棚の横には、 厳重に管理されたショーケースが並んでいる。


年配の執事は、静かに説明した。


黒い背表紙には、 見慣れない古い文字が刻まれていた。


「……リエル・資料?」


「惑星アストレアにも昔、多くのアンドロイドが生活に溶け込んでいました」


「その中の一体が、“リエル”と呼ばれていたそうです」


「へぇ……特別なんですね」


「ええ。現存記録が極端に少ないのです」


執事は、ケース越しに本を見つめた。


「アンドロイドでありながら、慈悲深さを持っていたとも言われています」


「慈悲深さ……」


「基本はひと型ですが、特徴としてウサギの垂れ耳を思わせる頭部だったとか」


「……ウサギ?」


胸が、強く脈打つ。

理由は分からない。

けれど、その単語だけが、 妙に引っかかった。


「はい。卵から生まれた――という記録もあります」


「古い人間が知るのは、この辺りまでです」


「……ウサギのキーホルダー」


気づけば、言葉が漏れていた。


(この本……エルナスに頼めば、読ませてもらえるだろうか)


その時だった。


書庫の扉が、静かに開く。


振り返ったカナタの視線が止まる。


先に入ってきたのは、エルナス王。


その後ろに――


「……ユウナギ?」


息が止まりそうになる。


ユウナギは、 そんなカナタを見つめたまま、 言葉を失っていた。


――美しく着飾ったカナタ。 まるで、物語の中の姫君みたいだった。


「……カナタ」


「ユウナギなの?本当に?」


エルナスは、二人の再会を静かに見守っていた。 プラス先生は、応接間で待機している。


「……会いたかった。ユウナギ」


カナタから出た自然な言葉に、

エルナスは、わずかに目を見開いた。



(第八十四章・了)


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